日本イコモス国内委員会の見解と、京都市の回答/同じ手口が2度通用するか

本当なら何故こういうものが出る経緯になったのかということも合わせて説明したいのですが、そこには爆弾も含まれているのですが、まだオープンにしちゃいけないので、こういうものが出たという結果だけ紹介します。

京都市長宛:京都会館再整備計画への見解と委員会設置のお知らせ-「日本イコモス国内委員会」

2012年9月10日
京都市長 門川大作

日本イコモス国内委員会 委員長 西村幸夫


京都会館再整備計画に関する見解

 イコモス(国際記念物遺跡会議, ICOMOS)国際学術委員会ISC20C(20th Century Heritage,委員長Sheridan Burke)による京都会館再整備計画に関する意見書が送付されました。そのなかで、20世紀の日本における最も重要な建築家のひとりである前川國男の代表作品の一つとして京都会館文化財としての重要性を位置付けたうえで、現在、京都市が再整備計画に示す建て替えは、文化財としての価値に対して「取り返しのつかない害を及ぼし、美と調和を破壊する」として危機遺産警告を発令する可能性が示唆されました。また、この件に関しイコモス(国際記念物会議, ICOMOS)日本国内委員会には各方面から様々な御意見、情報が寄せられました。この状況を受けイコモス国内委員会として、国際学術委員会ISC20C委員から経緯を聴収するとともに京都市による京都会館再整備計画を省察し、以下のことを確認しました。

(1) 京都会館は現在、国内法において文化財としての登録・指定がされていないものの、20世紀の日本を代表すある建築作品のひとつであり、ある一定の文化財としての価値を有していること。

(2) 京都会館は第一ホールを中心としてさまざまな機能上の問題が竣工当初から指摘されてきており、また、経年変化によりさまざまな物理的性状の問題も有していること。

(3) 京都市は上記(1)および(2)の双方の問題の解決するために、慎重に検討を重ねてきたこと。

しかしながら、

(4) 京都会館再整備基本設計において、20世紀建築のリビング・ヘリテージ(使われる建物としての継承)としての機能変化を含む改修などの変化に対して、継承すべき価値の判読が困難で、かつその資産のインテグリティ(完全性)の確保が合理的に示されていないこと。

(5) 京都会館再整備基本設計における資産のインテグリティ(完全性)が保たれているかの検証と、その確保のための新たな要求性能の再検討がなされていないこと。

(6) 「京都会館の建物価値継承に係わる検討委員会」提言の示す「近代建築を保存・継承する新たな道筋をつけること」に対する説明が不十分であること。

京都市は、(1)および(2)の点を止揚して、新たな京都会館のあり方を提案するのであれば、上記の(4)〜(6)の疑問点に対処し、かつ、その解決策が京都会館の最小限の改変案であることを合理的に示すべきであると考えます。
京都市が行う上記の作業を注視し、必要に応じて協働して検討するために、イコモス国内委員会拡大理事会(9月8日)において、国内委員会内に第14小委員会「リビング・ヘリテージとしての20世紀建築の保存・継承に関する課題検討(京都会館再整備計画に関する検討)」(主査:苅谷勇雅)を設置することとしました。また、その検討結果を国際学術委員会ISC20Cに報告する予定です。
http://www.japan-icomos.org/pdf/kyotokaikan_comment120910.pdf
http://www.jca.apc.org/jikkuri/docs/120912_ICOMOSJAPAN_kenkai.pdf

京都市からの回答

日本イコモス国内委員会から市長あて
京都会館再整備計画に関する見解」に対するコメント

京都会館再整備について,これまで本市が京都会館の建物価値を認めて慎重に検討を重ねてきたことには評価いただいている。その一方で,再整備に関して,なお丁寧に説明すべき点があるとの御指摘をいただいたと理解している。
○ 本日,いただいた御指摘については誠実に対応し,建物本体の本格的な解体に取り掛かるまで,仮囲いや建物内部の付属設備などの撤去を行っている期間である約1箇月を目途に,日本イコモスの御協力をいただきながら,再整備基本設計の取りまとめに至る経過の説明等に,精力的に取り組んでまいりたい。
京都市としては,英知を集めて再整備に取り組んできており,その内容については,必ず御理解をいただけると確信している。

http://www.jca.apc.org/jikkuri/docs/120912_ICOMOSJAPAN_komento.pdf

意訳:説明するだけで、見直す気は毛頭無い。一通り説明したら、ご理解頂いたものとして切り上げる。

建物価値継承委員会でやったのと同じ手口が、果たして二度通用するのでしょうか。