京都会館再整備の道は?@週刊うたごえ新聞

週刊うたごえ新聞 2012年9月17日号 ミュージック・トゥデイ欄

 京都市の代表的なコンサートホールのひとつ「京都会館」の改築計画が、どうもうまくいっていない。施工主である京都市の独走が目立ち、建設的提案をしている市民グループとの話し合いが出来ていない状態で、この件について、去る1月16日号の本欄でとりあげた時点から、ますます悪い方向に向かっているようだ。

 市民側(京都会館再整備をじっくり考える会)は、とりあえず改築着工を延期することを求めているが、市側は聞く耳を持たず、9月着工の予定を変えていない。

 主要な争点のひとつに、前川國男設計の現建築の文化財的な意義と、平安神宮風致地区のなかでの景観保全があるが、これらも話し合い不可能なテーマではない。去る8月26日、市民側主催のシンポジウムが開かれ、百人を超す参加者があり、関心の高さを示した。

 話がこじれている原因のひとつに、市側が突然持ち出した「国内最大級のオペラハウスにしたい」がある。メトロポリタンやスカラ座といった海外トップクラスのオペラハウスの来日公演が受け入れられる規模のものというわけだ。このサイズの舞台となると、天井の高さ、ひいては建築物の高さなどが、現在より、はるかに高くなり、風致地区の高さ制限を超えて、巨大なビルの出現となる。

 ホールの「巨大志向」は、実は日本のホールの共通願望で、中身の充実とは別のもの。大きさで勝負をするという無駄な競争から、そろそろ卒業すべきではないか。

 そこで私が、敢えて提案したいのは、室内オペラ専用のオペラハウスである。オペラの元祖ともいうべきモンティヴェルディなどのルネッサンスバロックオペラ。そしてモーツァルト。さらには、バルトークやベルク、メノッティなどの近・現代オペラ、そして「夕鶴」をはじめとする日本オペラの数々。さすがは京都のオペラハウスと称賛されるような「ユニークさ」をこそ、売りものにすべきではないか。

日下部吉彦(音楽評論家)

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