80年代もやっぱり演劇的

90年前後にDRとDKTのオペラ放送強化月間があったという話は既にしましたが、これのおかげで80年代後半あたりのいくつかのプロダクションを見ることが出来て、DKTはこの時点で既に演劇的だったんだなーと思いました。画面観てて、あんまし「これはオペラだからそういう様式だから」みたいな違和感もないし、歌唱スタイルも全体にナチュラルというか、オペラ慣れしていない人が「こういうのはちょっと」「ストップ!止めて止めて!」みたいな感覚を起こさせるものが希薄なんですね。分かります?オケは聴くけどオペラはちょっと・・・みたいな前歴のある人なら分かるんじゃないかと思うんですけど。

演技も全員達者です。ごく普通に俳優レベルです。これはオペラだから・・・(俳優のような演技を求めるのは違う)って感覚はないです。なんかこの、普通にTV観てて後番組でこれがはじまったらそのまま観てしまいそう感すごいですね。発想の転換とか慣れみたいなもんが要らない。教養の要らないオペラです。

舞台中継じゃなくてTV用の撮影だからそう見えるってのはあるかもしれません。舞台じゃなくてオペラ映画だったらこんなもんだよって意見もあるかもしれません。でもなんか見てて、映画みたいな誰かの意図で作り込んでそうやってる観はないんです。さらっと撮ってる。いつも舞台でやってることを、今日はカメラが近くまで寄って撮った、そんだけ、ってさらっと感なんですよ。これもうちょっと後の時代だったら撮影技術が進歩してるから舞台中継になるんでしょうね。この時代だから、観客を入れた舞台で同時に撮影することが困難だから*1、撮影のための舞台をやって撮ったんでしょうね*2

この雰囲気は、映像が無くても、デンマークオペラの録音聴いてるだけで想像が付きます。きっとずっと前からこんな風だったんでしょうね。それにしても私はオペラ観て「オペラっぽくない」が褒め言葉になるとでも思っているのでしょうか。一体何が言いたいんでしょう。コペハンリングの源泉を感じたというのはあります。もひとつ、これ1986年というと、13歳のホルテンが観てたんですね。彼は(今はオペラを観る習慣がない人にとっての)オペラをこういう存在にしたいんだろうなあ。

*1:or そうやって撮影してもいかにも舞台中継って距離感でイマイチだから

*2:そういえば昔はオペラのテレビプロダクションって一杯あったと聞いたことありますが、そういうことなんでしょうね。