Danish Tenor 聴き比べ

デンマーク音楽入門企画です。

先日コメント欄でsoraさんに教えてもらった Mathias Hedegaard(マティアス・ヘーゼゴー*1)を調べてみた。この人は、アナセンとマイケル・クリステンセン*2を足して、かなりアナセン寄りにした感じかなあ。私の第一印象は相当クリステンセン寄りだったんだけど、それは私がアナセンを聴き込んでしまってて些細な違いを増幅して感じ取ってしまうからで、客観的に言えば相当アナセン寄りと言えるだろう。特に歌唱スタイルは、アナセンのリリック時代*3にかなり近い芸風を持っている。かすかに震えるような声も似ている。

で、この人は、このアルバムがよい。デンマーク音楽入門としてもこのディスクはオススメ。内容は、ニールセン、ランゲ=ミュラー、ヴァイゼ等のデンマークの作曲家による耳馴染みのよい歌曲を集めたもの。これ聴いて興味が出たら、それぞれの作曲家のオペラに進むといいと思う。個人的にはヴァイゼ(のオペラ)が好きなのだが、最初に聴いて入りやすいのはランゲ=ミュラーかなあ*4。ランゲ=ミュラーは本当にポップス感覚で聴ける。あとは大御所ニールセンだけど、実はニールセンはKY*5なので、日本人には一枚目としては薦めない。


で、面白いから、このアルバムの中からピックアップして聴き比べ企画をやってみようと思う。3人とも同じ曲を歌ってる音源はないのだが、2人ずつなら結構被ってる。

まずはランゲ=ミュラーのセレナーデ2連発。
昔むかしのセレナーデ。Der var engang, Op. 25, "Serenade"

ヘーゼゴー Download
クリステンセン Download

ルネッサンスのセレナーデ。Renaissance, Op. 59, "Serenade"

ヘーゼゴー Download
クリステンセン Download

ヴァイゼの Sovedrikken(眠り薬)から "Skonjomfru, luk dit vindue op"(窓を開けて)

ヘーゼゴー Download
クリステンセン Download

アナセンはこういう音源がオフィシャルでは全然無い。声と芸風はこれ以上ないくらい向いていたと思うのに何故無いのだろう。そもそも若いときの録音て全然無いんだよね。DRのテレビ放送音源があるだけだ。無いんじゃなくて廃盤で情報残ってないだけかなあ。だったらこれから再発音源が出て来ないかなあ。まあそういうわけで比較出来るのはこの音源のみ。マスカレードからリアンダーとレオノーラのディエットです。
Maskarade, "Ulignelige pige"

ヘーゼゴー Download
アナセン http://www.youtube.com/watch?v=3sZTnPX2SjM

あの鈴が鳴るようなリアンダーは反則だよなあ。ヘーゼゴー音源は音質落としてあるので、ちゃんとしたのが欲しい人は是非買ってちょうだい*6。クリステンセン音源は本人のサイトのサンプル音源にリンクしてます。

こうやってキャリアの長い人と比べちゃうと全く瑕疵がないわけじゃないけど、でも単独で聴いたらまず不満はないだろうし、ものすごくインパクトあるし、実際デンマークのみならずスカンジナヴィアを代表する若手テノールだそうだ。まだ29歳だかで、上のアルバムの時点はさらにその3年前。将来が楽しみです。

似てると思ったクリステンセンだけど、こうやって並べちゃうと、この人は伸びやか路線で、ソフトにソフトに終始する他2名とは芸風が違いますね。ただ今回挙げた3人は現役の中では飛び抜けて似てると思います。アナセンとマティアス君は、ひょっとして師匠が共通or師弟関係にあるんじゃないかと思うくらい似てますね。

第一印象の時点で私がアナセン寄りじゃないと思ったのは、私にとってアナセンはあの「外し」こそがアナセンなのであって、マティアス君のは優等生的というか予想通りに進行するので違うと思ったのだった。アナセンは別にキャリアが進んでこういうことをやりはじめたわけじゃなく、最初から「外し」があったんですよ。だって彼の高校時代のロックバンド*7音源なんてものがあるんですが*8、そこでも堂々この「外し」があるんですよ。でもこれ、みなさん何言ってるか分かります?色々聴き込み過ぎ&思い入れ過ぎてしまって、もはや自分の思い入れの産物か客観的にあるものか、区別が付かなくなって困る今日この頃です。ここで言う外しってのは、高められて行く途中でふっと抜かれるみたいな感覚のことです。


マティアス君情報ですが、こんなんもやってるみたいです。モンテヴェルディオルフェオの野外オペラ?ヴァルデマール城ってありますから、野外オペラですね。一瞬映画撮影かと思ってしまった。身長は普通に高そうですね。
http://www.annebarslev.dk/html/lorfeo.html

DKTへは昨シーズンの「放蕩者の成り行き*9」に出演。今シーズンは無いみたい。後は、コンサート活動かなあ。しかし、やっぱりこういう芸風の人はバロックとか歌曲とかをやるもんですよね。あの人はなんだったんだろう。

*1:カタカナ表記はNaxos libraryによる。

*2:脳内愛称は「すだれハゲ」。

*3:ちなみにstarboardは個人的に、ヘルデンテノールとして活躍中の今現在だってリリック時代だと秘かに思っているが、あまりにも突拍子がないので思っておくだけにしておこう。

*4:どうでもいいが、この人の名前を聞くとブルグミュラーを思い出してしまうのは私だけではない筈。

*5: (c) wagnerianchanさん

*6:とアリバイ的に書いておきます。

*7:60年代だからロックと言ってよいのか微妙。でも若者文化的な文脈で言うところのロックではある。

*8:このストーカーめ!>自分

*9:クリステンセンがタイトルロール!私はこれ聴きたくてたまらなかったのだけど。