グレの歌@ヤンソンス&バイエルン放送響

バイエルン放送交響楽団60周年の記念演奏会の模様を収めたDVDだそうです。

予約注文してた分が本日届いていて、3回リピートしてしまいました。これは、後半のソリストがいいですね。藤村さんがカンペキ!導入部では、いつものごとく勝手なZ軸判断が出てきて「なんだか私とはズレてる・・・・つーか私はこの指揮者の意図した音を聴けていないのだろうなあ」なんて思いつつ距離を持って聴いてたんですが、藤村さんの山鳩が出てきたところから調子が出てきて、熱気が入って、正直音そのものは感心するかというとそういうわけでもないのですが、なにかその熱気にあてられて、最後はそんなんどうでも良くなってました。いつも聴いてるサロネンの盤は前半が好きで後半は前半ほどではないのですが、この盤は後半の道化と農夫がいいから(ここがピンと来ないと全体がピンと来ないんですが)、逆パターンでした。DVDで画像付きで見ると、なにか理解が深まるというのもあると思いました。いつもの盤を聴くときにも影響がありそうです。

有名作品だから要らないかと思いますが、作品紹介は、wikipedia:グレの歌の記述が実にコンパクトにまとまってます。

ソリストについて。2回目ですが、山鳩の藤村さんがカンペキ!声も歌唱スタイルも、人でないものの表現としても!今まで聴いたこの人の録音の中では一番な気がします。これはいいものを聴かせてもらいました。カンペキなんで逆に書くことがないよ。

次に、道化のヘルヴィヒ・ペコラーロ。この人は職人的に安定した歌唱で、声もいいし、クリアでブライトだし、一瞬たりとも嫌な発声が混じらないし、道化としてのスタイルもちゃんとしてるし、愛嬌もあるし、文句の付けどころのない立派な歌唱でした。こんないい人を何処に隠してたのかと思いましたよ*1

農夫・語りのミヒャエル・ヴォッレ。この人も安定した嫌みのない歌唱で良かったです。ただちょっとキャラが道化に寄り過ぎだったかも。続けて出てくる役だけに。

そんななか、ちょい惜しかったのがトーヴのデボラ・ヴォイトかなーと。最初の第一声はホールに広がるような綺麗な輝ける音を出しておおっと思ったのですが、そういう音は全体の1割も無く、それ以外の音とのギャップが気になってしまいました。本日は表現面でも歌唱の細やかさという面でも芸達者な人が揃っていましたから、その点でも分が悪かったかな。ただ、一瞬でもああいう音が聴ければそれこそが良いという聴衆もいるだろうなーとも思いました。

ヴァルデマーのアナセンですが、実は私は彼の年齢相当の役柄って、特に映像付ではあまり見たことがないので*2、かなり新鮮に思いながら鑑賞しました。この日は急な代役だったそうで、他所のリハーサルと公演の合間を縫って一日だけ参加という状況ながら、他の人より楽譜に目を落としてることが多いかなくらいで、危なげなく歌いきったと思います。高音や声量を大きくしなければならないシーンでstrainな感じがするのはこの人の常です。言葉の意味を歌に載せるのは相変わらずうまいと思います。アナセンならではの独特の熱もこの作品にはピッタシです。導入の"Nun daempft die Daemm'rung"の持っていき方なんかも地味ながらしみじみいいと思いました。んーでも、このドライ味の入った声とstrainな感じは、例えばペコラーロの全然そういうところのないたっぷりした明るい声と、楽々と音を出すのを聴いた後では、気になる人はなるだろうなー*3なんてことを考えました。これがアレなんですよね、しばし紹介文なんかで最初に「彼は誰それのような本物の立派な声は持っていないが」と書き出されてしまう所以なんですよね。

あ、ちなみに今回は見た目がマシ*4でした(笑)。あのオニギリに足を付けたみたいな体が椅子にちょこんと載っているところをたっぷり観察出来たのは収穫でありました*5

ところでこの音源は合唱の録り方がなにか成功してない感じがする。オケの録り方はそんなに違和感がないのだが、何故だろう。それはともかくグレの歌の映像って他にあるのかどうか知らんけど、今まで音だけで聴いてて、はじめて映像見て発見があった。後半に、合唱が、一瞬だけ「わあっ」と言って終わる部分があるのだが、これ映像で見てるとめちゃくちゃ変ね。この映像では合唱が立ち上がって「わあっ」とだけ言ってまた座るんだもん。思わずここだけ切り出してYouTubeにUPしたろかと考えてしまうくらい変ね。その後歌うんだからそのまま立たせておきゃいいじゃんとちょっと思った。

*1:単にお前が知らないだけだ。

*2:でも年齢相当といいつつ、ヴァルデマーって40代くらいじゃないの、と突っ込んでみたり。それにしたっていつものロールよりずっと近い。

*3:そして、なんであの人が主役なの?って言い出したりする。

*4:マシというのは良いということではなく最悪の状態を免れているという意味である。その辺の若い人の感覚で読まないように。

*5:どうでもいいが、座っているときに斜め上向いたり横向いたりして指揮者とかそのときに歌ってる人を見ているのだが、あれはなかなか見慣れない光景だった。斜め上を見上げてるところは、先生を見上げる一番前の席の小学生みたいだ。舞台上の人って、みんななんとなく視線を落としてて他の人見たりしてないもんね。ということを再確認した。