初聴きレポ/ボアセン再び

新年おめでとうございます。本年もよろしくお願いします。今年も相変わらずデンマークオペラブームが続いています。思い返せば、昨年のお正月用にと購入したコペンハーゲン・リングが全てのはじまりでありました。あれから丁度一年です。

さて本年の初聴きは、実は昨晩の大晦日の延長でびわ湖の鑑賞後につい聴きたくなったコペハン・ジークフリートの3幕であったりしたのですが、録画鑑賞とはいえ(録画鑑賞だからこそ?)オペラ全幕を休憩無しで観た後にさらに別のオペラに手を出す自分のオペラ食欲(日常の体力とは別腹)には全く呆れるばかりです。

晦日の続きではなく、一夜明けての初聴きはこんなディスクでありました。

http://cdn.naxos.com/SharedFiles/images/cds/8112004.gif

  • BORRESEN: Kongelige Gaest (Den) (The Royal Guest)
    Conductor(s):Hye-Knudsen, Johan
    Orchestra(s):Copenhagen Royal Theatre Orchestra
    Artist(s):Hoeberg, Albert; Larsen, Dorothy; Nielsen, Ellen; Schoubye, Monna; Wiedemann, Poul
    Label: Naxos Historical

これ、実は最終日にDKTのボックスオフィスで買ってきたお土産でして、今回コペンで自分用に購入したものといえば日本円で200円程度のDKTロゴ入キーホルダーだけだったので、いくらなんでもそれはなあ・・・・と思っていたところに見かけたので速攻GETしました。この記述からお分かりの通り、starboardは滞在中一度も買い物に行っておりません。滞在中の生活物資を仕入れにスーパーには行きましたが、大体どこに行ってもそんなもんです。帰宅便に乗る前に空港の本屋にて、現金を全部放出してその地の自動車雑誌を買うのが恒例となっております。デンマークで売ってるのはドイツやイギリスの雑誌ばかりだったけどね・・・・

話は戻って初聴きディスクの話。このblogで度々言及してきたThe Royal Guestです。これ、先行録音があったんですね。しかも1949年のDKT公演のライブ録音です。このオペラの初演は1919年で、作曲家ボアセン存命中の公演です。ちなみにボアセンといえば、声楽曲は私の知る限り紹介済のオペラがあるきりでメジャーレーベルからは出てないんですが、コペン滞在中に画策して、デンマークの超マイナーレーベルから出てるボアセンのピアノ伴奏の歌曲集を仕入れてきたので*1、そのうちレポしたいと思います。

さて付属のブックレットによると、この1949年の録音が残ってる経緯がすごくて、デンマークの最初のテープレコーダー*2にアクセス出来たHegermann-Lindencrone*3が、DKTの200周年記念に録音を開始したコレクションのひとつがこの録音だそうで、コレクションは1992年にDKT自身によって買い取られ、これまでに4つの録音がディスクリリースされているそうです。

そんな昔の録音なので、音は全然はっきりしていなくて均一でもなく、テープの質に由来するのであろうムラなのか演奏の拙さなのか判別できないポイントすら多々あるのですが、いろいろ発見がありました。まず大きいのは、声とオケのバランスが、声が非常に大きいこと。録音している場所がそうなのかもしれませんが*4、それにしてもオケの音とのバランスということでは、現代の演奏と比較して声がめちゃくちゃ大きい。いつもは「立って聴こえる」などと間接的な表現をとる私でありますが、これは明らかに歌手の声が大きいと言うべきでしょう。そこでハタと思い出したのは、この日のコメント欄で話題になった昔の演奏と今の演奏の違いです。ただし、このときは楽器の進化やピッチに関する慣習による不可避な要素として、かつてはオケが小さくピッチが低かったことを念頭に置いていましたが、今回演奏を聴いて、それだけではなく、演奏スタイルとして相当控えめにしていたのではないかと思うに至りました。

次に演奏の内容ですが、オケはやっぱ雑いというか緻密ではないです。でもそれが魅力がないかというと別問題でありまして、演奏スタイルの違いなども含めて1940年代の劇場の雰囲気を味わう面白さ込みで、聴く値打ちは充分あると思います。

さて歌手が結構面白くて、まずゲストが思いっきり変なゲストそのものです。私の愛聴盤はパヴァテルさんでありまして、この人、ものすごーーーく器用でうまいのですが、あの変なゲストにしては洗練され過ぎている面が無きにしもあらず。一方こちらの歴史的録音はラフで「いかにも」変人です。

ホイヤー役が、なんというか、後期のエルミングみたいです。素っ頓狂で、ちょっと投げやりで、うーん、やはり後期エルミングとしか表現しようがない。エルミングのアレは伝統的なスタイルだったのですね。ちなみに舞台写真を見るに、ホイヤーは片眼鏡でヤギヒゲつけて、見た目は神経質な医者っぽいです。

エイミーが一番違和感がないかなあ。しかし、思ってたよりもご年配カップルの話だったのですね。って、1948年と現代では人間の年齢の感覚も全然違うしさあ。1946年連載開始のサザエさんに出てくるアナゴさんだって27歳なのよ。

*1:しかし、君の執念はこわいよ。

*2:ちなみに磁気テープの録音メディアの発明は1938年 by wikipedia:録音

*3:これ全部苗字。

*4:というのは、音の動きから歌手の動きが生々しく分かるくらいなので、今日よくあるような舞台上方の吊りマイクではなく、舞台上の歌手の足元あたりで集音している印象です。