コペンハーゲンのドン・カルロ(2)

ここんとこオペラ日記を書いてない。最近何してるかっつーと、以前聴いたコペンハーゲンのドン・カルロに偉いハマってリピートしてました。なんだろう、これ。はじめてDKT音源に触れたリングのときにも同じこと書いたけど、なんだか、音楽が「前へ!前へ!」って言ってるんですよ。なにか他の音源からは感じられない勢いがある。それに12月のDKT詣でで自分の方が学習しちゃったのか、以前よりももっと色んなものがキャッチ出来るようになって、すごく面白くなった。

これ、すごいなあ。シェンヴァントさんとKglカペルがショル爺みたいな本能に訴えるようなサウンドを繰り出してる。これすごい。それに、とにかく、歌唱がすごい。私はイタリア語は全く分からないのに、それで一年以上前に対訳読んだっきりの経験なのに、何言ってるかはっきり分かるんですよ。そんなの当たり前だと思いますか?でも(今の)私がそういう風に感じる音源ってすごく限定されてるんです。他の音源より、歌手がすごく理解して表現してるように感じる。これは聴き込みと慣れの問題なんですかね?私がDKTを聴き込み過ぎて、ここの音源だけ細かくキャッチ出来るようになったからこう思うのであって、他のでも聴き込めば同じような効果があるのか、ということが最近の疑問だったりします。DKT並みの熱心さで聴き込める音源て他に知らないし、結局は自分の主観を抜け出せないから、確認不可能なんだけど。

なんだろなあ、聴いてると、ニヤニヤで、ワクワクで、ドキドキで、ゾクゾクで、ムズムズなんですよ。正直DKTの歌手って、たぶんアリアの抜粋で聴き比べとかされたら全然ピックアップされないポジションなんだろうし、この公演も、自前アンサンブルにゲスト一人というDKTではよくある形態で*1、自前アンサンブルの人は例のごとくなんでも歌う人達で全然ヴェルディ専門とかじゃないし、声の適性や技術で言えばただの寄せ集め集団なんだろうけど、でも、そういうことじゃないんですよ!

なんだろうこの感じ、何言ってるか手に取るようにはっきり分かって*2、ワクワクでニヤニヤで、どんどん先に行きたくなる感じ、これってなんだろう。相性なのかな。

いつもホルテンホルテン言っててすんませんが、なんで演出関係ない音だけ聴いててそんなことを考えるんだって感じですが、彼の演出した公演は、この歌手が特別に理解してる感じがあるから、すごく好きなんですよ。あんな風に音楽にポジティブな影響を与える人はいない。さすがDKTアイドル*3だけのことはある。

この音源、みんな面白いんだけど、今回は特にエボリのRandi Steneさんにハマってます。このblog的にはコペハンママでお馴染みですが、私は彼女のロールの中としてはこのエボリの方がずっといいと思う。ライブで声を聴けたからよく味わえるようになったというのもあるかもだけど、ちょい高音のパッセージで出る透明感のある音がいいです。エボリってこれまでさっぱり分からない人物だったけど、はじめてパーソナルなとこに触れた感じがする。クールな透明感のある声で、端麗辛口のエボリですねえ。男装すると似合いそうな感じ。ルルのケルヴィッツ伯爵令嬢を観たからじゃありませんが、ご本人が、元々異性装の似合いそうな方です。しかしデンマークの人は中年以降はみなよく太るが、たまに太らない人がいると男女ともに異性装の似合いそうな感じになってしまうのは、なんなんだろう、あれは。いや、オペラシンガーだけの話です。

今回はこれまでとは違うところが気に入ってて、2幕の人違いの場なんて、これまでさっぱり分からなかったけど今回は面白くて仕方無いです。そこの三重唱で、そんなに極端ではないけどカルロとロドリーゴの声が大きくてエボリは声量では前に出て来ないんだけど、その、ずっと出て来るわけじゃないところで間欠的に控えめに聴こえる声が、とても綺麗に決まっていて、ほおおーって思います。こういうのは前は分からなかったなあ。端麗辛口のままでやる呪わしき美貌とかもいいよ。「らしくない」んだろうけど、この方が私にとってはパーソナルな感じがするんです。

そうそう、これ、大審問官と修道士を同じ人が歌ってて、ということは2人同時に出てくるラストはどうするんだって感じですが、そのまま一人で歌ってるんだけど、これ、どんなオチだったんだろう。ああ知りたいっ。DKTにも過去の公演の映像が見れるライブラリ制度があればいいのに。

Verdi: Don Carlos direkte fra Det Kgl. Teater, Operaen. Kong Filip II: Stephen Milling. Elisabeth: Irene Theorin. Don Carlos: Nikolai Schukoff. Posa: Johan Reuter John Lundgren or Tommi Hakala(substitute). Eboli: Randi Stene. Grev Lerma: Ernst Dalsgard. Tebaldo: Ellen Kristiansen. En munk: Sten Byriel. Stemmen: Cecilia Hjortsberg. Det Kgl Operakor. Det Kgl. Kapel. Dirigent: Michael Sch�wandt. (3 hrs., 40 min.)

LIVE BROADCAST ON DR P2 Copenhagen, DENMARK, 8 dec 2007

*1:そのゲスト一人も人気歌手じゃなくてロールデビューしたばかりの若手起用というのが、とことんDKTらしい。

*2:それって言葉の問題じゃなくて表現の問題で、だって実は日本語で歌われたってこうはならないのを知ってますから。

*3:DKTの中の人にとってのアイドル。