寝耳に水のDKT財政危機

まさに寝耳に水の出来事。いきなり目に飛び込んで来たのが、「Operaenを返却するくらいなら旧劇場を放棄しろ」という記事。なにごとかと飛び起きましたよ!

機械翻訳を通しながら読んでいるのであやふやなところが多いのだが、あやふやながら理解したところによるとこんな感じ。

  • まず背景として、DKTは劇場を3つ持っているのだが、うち一番新しいOperaenはデンマークの海運会社 Maersk Mckinney-Møller から寄贈され、2005/2006シーズンから稼動している*1
  • この寄贈の話を受けたときにDKTは最初断った。新劇場の建物の維持管理と税金を払うための追加の費用が、DKTの年間予算に匹敵する額だったためである。ところが(DKTのマネジメントも吃驚したことに)当時の首相が予算の増加を承認し、146ミリオンクローネ、22億円に相当する予算を配分したことで、新劇場は建設された。この額がそのまま新劇場の維持管理費用と劇場が増えたことで増加した公演分の費用と見て良さそうである。
  • 一方でDKTはデンマーク中の劇場に配分される国家予算の40%に相当する配分を受けており、その後の経済危機で予算を削減された。なんだか日本の大学における国費配分の東大みたいな存在である。DKTに配分する枠が大きすぎるという論争は昨春にもあったのを私も覚えている。何度かに渡って削られたのかもしれない。
  • ちなみに新劇場の維持管理費用でDKTの年間予算の46%に相当するとのこと。DKTのマネジメントは財政圧迫のために来シーズンの年間公演数を100減らす計画を立てているらしい。年間100と聞くとものすごいが、今シーズンは3つの劇場を使って年間約600行っている公演数を約500にする計画とのこと*2
  • DKTとしては、新劇場を持つことによって、持つ前よりも公演そのものにかけられる費用が減ってしまうというパラドキシカルな事態になってしまっている。そこで、そんなんだったら寄贈元の会社に返却してしまえという意見が出た。
  • ちなみに最初に私が見た記事は、ビリエルさんが「Operaenを返却するくらいなら旧劇場を放棄しろ」とコメントしたという内容でした。しかし18世紀中旬から続く旧劇場を閉鎖するのはそれはそれで大変そうだ。しかし旧劇場をなんとかしないといけないのは時間の問題で、改修等の費用も捻出しなきゃいけないなら、益々この赤字体制は続けていられないし、そもそも旧劇場の維持管理費が新劇場のそれと引き合うのかどうかはかなり疑問である。やはり大きさも構造も、暖房費も雪かき費も違うだろうし。
  • さて本題に戻って、返却案は文化大臣が断ったらしい。誰もそんなことは望まないだろうし、ここまで蓄積されたものがあるということで、省内に特設ワーキングチームを作って遁走して目下の策を検討中とのこと。
  • そういうわけで、またもや税金から予算を配分するのか、折角作りあげたものを放棄するのかという局面に立っているらしい。
  • はてさてどうなることか。大口寄付は出来ないけどチケット代の値上げは当然甘受します。そんだけのことをやってると思うし、あんなに物価高いのにチケット代安いし。S席で1万6千円くらいだから。立見席が2千円くらいで、着席だと5千円弱からという価格設定。ただ、こういうのってチケット収入の占める割合が小さくて、倍にしても全然改善しないと思うのだよね。オペラは一部の層だけのものだから税金を費やすことはないという意見が毎度出て、足を運びやすくするために価格維持してるんだろうし、チケット代上げたら、益々一部の層だけのものだという批判に耐えられなくなるだろう。どうしたらいいか。京都に出稼ぎに来ますか?(←それがオチか*3

*1:ちなみにコペハンリングはこの新しいオペラハウスの杮落とし公演として企画されたもの。

*2:しかしオペラは金がかかるので、実質オペラの削減が大きいのかもしれない。

*3:とりあえずバレエなら知名度あるし、あながち実現から遠いわけでもない気がする。わたしもバレエ公演なら(=声楽でなくオケなら)止めないよ。でもバレエも客席は階高で稼ぐものだと思うが。