オルフェオ@トゥルコワン市立劇場

モンテヴェルディのオペラを映像付きで観たのははじめてなら、この時代のオペラを通してちゃんと観たのもはじめてで、様式が新鮮でした。なかなか面白かったけど、愛聴盤(末尾で紹介)の演奏が念頭にあって、どうもライブ感に欠けるというか、かなり大人しめに思ってしまいました。たぶん、そっちのディスクが異色過ぎるせいだと思うんですけどね。

美術や振り付けなどの世界観はいいですねえ。ダンサーに「不具者のダンス」をする人がいるのですが、ずっと注目してて、最後に出てこないかなと思って待ち構えていたのですが、結局分からなかった。あ、ちなみに私は映画フリークスなどを熱中して観たという青春時代を送った人間でございまして。

いろいろ目新しい発見があって、バスがすごい低い!いきなり不連続に低い!これは、このジャンルはそういうものなんですかね。前半は割とゆるゆる観てて、後半、プロセルピーナとプルトーネが出てきたところで引き込まれました。この二人はいいですねえ。文脈的にこういうシーンて、どっちかというと早く終わらないかなと思ってしまいがちなのですが、今回は全然気が逸れなかった。歌手は、ずっと出ずっぱりのオルフェオが、かなりいいんですけど、私的にはちとワンパターンに感じる部分があって、でも相対的には立派なんだろうなあと思うんですけども。装飾過多になるところはしんどくて、渡し守カロンテに会うところなどのストレートなところは良かった。このディスク全体で唯一知ってる名前だった肺のない兄ちゃんことジャルスキー氏ですが、やっぱりすごいんですが、意外とこの世界に馴染んでいるというか、はじめて触れたときのような「すごい!!!なにもかもが圧倒的!!なんだこれ人間か?!(誉めてます)」感は、こういう舞台の中だと無いような気がします。でも全体の水準としてはすごく高いと思うので、お薦めできるディスクです。

演出ですが、全体に悪くないんですが、最後は分かりにくいかな。なんか見覚えのある顔が扮装を変えて出てきて、出てきたのはダンサーじゃなくて女声歌手陣?エウディリーチェもいる?あれ?でもあっちは例のダンサーじゃ?とか思って観てると急に終わっちゃった。オルフェオバッカスの巫女に八つ裂きにされるというこの物語オリジナルの結末を模したということですが、この結末はその後に変更されて音楽は違うものを描いてるから、なんか分かりにくいですよね。

あ、そうそう、オルフェオが後ろを振り返ってしまうまでは、もうちょっと引っ張って欲しいです。これは演奏じゃなくて作品に対して。このシーンは日本人としてはイザナミのコンセプトによる演出を一度見てみたいものだけど、というか誰でも思いつくだろうから既に誰かやってる気がしますが、どなたかご存知ないですか。

あとなんだろなあ、基本的にフランスの歌手達で固めていて、舞台との距離感など、こじんまり感が心地よい公演だと思いました。わたしはこういうの好き。DVDで寄って撮ってた映像を観てても劇場のスケール感ってなんか伝わりますよね。


モンテヴェルディ:『オルフェオ』全曲
コヴィー・ヴァン・レンズブルク(Tオルフェオ
シリル・ジェルスタンアベール(Sエウリディーチェ)
フィリップ・ジャルスキ(CT希望)
ベルナール・ドレトル(Bsプルトーネ)
デルフィーヌ・ジロ(プロセルピーナ)
ルノー・ドレーク(カロンテ)
フィリップ・ラビエ(アポロ)
ラ・グランド・エキュリ・エ・ラ・シャンブル・デュ・ロワ(王室大厩舎・王宮付楽団)
ジャン=クロード・マルゴワール(指揮)
2004年10月トゥルコワン市立劇場(フランス)


さて、上で紹介した愛聴盤です。衝撃のライブ体験で購入して以来お気に入りの一枚として、ずっと手元にあります。Jazzyなモンテヴェルディ。これ今は、車にオペラファン以外の人を乗せたときにかける一枚としてずっと活躍しておりまして、とても評判がいいです。クラシックの録音なのに電子音楽みたいな方向性で音質がいいし*1、これ歌ってるの男の人なんだよ、って言うとすごいウケるし。食いつきが良くて、車内の温度が数度変わります。あのマイブームのときにジャルスキ氏*2のCD数枚買ったけど、ずっとかけてるのはこればっかかなあ。

*1:うちんちの車は「音楽は腰で聴く!」を合言葉に爆音が出るのを売りにしておりまして、はじめて乗る人は爆音の洗礼を受けるのであります。この用途に向く録音/向かない録音というのがあって、いわゆるクラシックの録音はものすごく効果的とは言いかねるわけです。

*2:うちのPCは一発目に「JAL好き」と変換しやがる。