ラ・ボエーム@春秋座

本日は台風が来ているにも関わらず予定がいっぱいでして、って普通の社会人には普通の一日なんでしょうが普段引き篭もりやってる自分としては珍しいことで、まず久しぶりに会う友人と一緒に京都国際会館に行ってランチがてら情報交換、ついで同じ会場でやっている建設映像祭なるイベントに参加して国際会議場の大スクリーンに映し出されるウルトラセブンを堪能しつつ*1来場者の間で怪しげな活動を展開し、さらに北白川に移動してオペラを観るという忙しい一日でした。


オペラの会場は、京都造形大学の中にある京都芸術劇場(春秋座)で、私にとっては初めての会場です。千席足らずで2階席までの小さな会場で1階客席の一部に花道が設えてあり、1階と2階の境の天井部分には赤い提灯がぶら下がっていて、主に歌舞伎の上演を想定してあるそうです。こんな天候にも関わらず、会場は8割方埋まってました。

各幕の前にコーラスの若者達による小芝居がついていて、ここで各幕の解説モドキが朗読されたり、舞台転換(若者達が小道具を動かす)が行われたりします。この小芝居の存在もそうなんですが、登場人物の服装やセットも含めて学生劇団っぽい雰囲気が漂っており、この場所らしい舞台となっていました。ボヘミアンの青春を描いたこの作品は、日本で言うと学生劇団の連中ってところでしょうか。パンフの解説によると「無残な青春」を描きたかったそうです。

本日特筆したいのはオケです。お気に入りの2階舞台寄りサイドに陣取ったのですが、このように小さい会場でもあり、各楽器1本きりの11人+ピアノの小規模なアンサンブルですが、なんとも豊かな響きがすること。ずっとこの音に酔ってました。ホールの効果もかなりあったかもしれませんが、大満足でした。パンフレットに載ってたの指揮者の解説によると、この会場のために室内楽風の小編成にアレンジしたのだそうです。美しかったー。すごい満足した。またここで音楽を聴きたい。

なんでそんな小編成にしたのかって、この会場で通常の編成で演奏したら、歌手の声は殆ど聴こえないだろうということなんですが、それも分かる話で、こんな小編成なのに、前半はオケの音が厚過ぎで、相対的なバランスの問題として歌手の声が聴き難く感じました。しかし休憩後は改善されてずっと聴きやすくなりました。しかし、いつもこのパターンでは不満を持つのですが、オケの音色そのものが心地良いと不満にならないというのが、自分にとっての発見でした。

それにしても、あの音響のアンバランスさは不思議で、なんであんなにオケだけ増幅されるんでしょうね。シングルの音なのに厚いこと厚いこと。舞台の音が同じように増幅されないのは、舞台袖や上部に散ってしまうのでしょうか。演劇なんかに合わせて作られた舞台ではありますね、この現象。今回みたいに舞台転換に左右を使わないなら、反射板で左右をある程度塞いだらいいんじゃないかと思うんですが。

歌手では、ミミを歌った川越さんが良かった。繊細でした。最近ソプラノ・ショックが来たので、ソプラノがどんどん聴けるようになってて楽しい限りです。たぶんびわ湖ホールのアイーダでそれは来たんだと思います。オペラ聴くようになってからここまで、まる3年かかりました。一方ロドルフォは、うーん、ニュアンスに乏しい張り上げ型で、私の好みではなかったです*2。あと特筆しておきたいのが、哲学者を歌った片桐さん。前半はソロが殆どないこともあって目立たなかったのですが、外套の歌での存在感がすごかった。この前のヴォータンでも思いましたが、本当になにか哲学者然とした雰囲気が出る人です。

全体としては、ほろっと来て胸に火が灯ったようになって、大変満足した公演でした。やっぱりこういう小さな公演好きだなあ。ダブルキャストで明日もう1回あります。チケットはS9千円、A7千円、学生席2千円とお値打ちです。

http://www.k-pac.org/performance/20110903.html
歌劇「ラ・ボエーム」全4幕(原語上演・字幕付)
日時 2011年9月3日(土) 17:00開演 (16:30開場)
会場 京都芸術劇場 春秋座
構成・演出/岩田 達宗
指揮/牧村 邦彦
公演監督/松山 郁雄
ミミ…        川越 塔子
ロドルフォ…     村上 敏明
マルチェッロ…    井上 敏典
ムゼッタ…      柴山  愛
ショナール…     萩原 次己
コッリーネ…     片桐 直樹
ベノア/アルチンドロ…松山いくお
合唱 ミラマーレ・ヴィルトゥオーゾコーラス
演奏 ミラマーレ室内アンサンブル

*1:またそういう誤解を生みそうな一行紹介をする。建設中の映像から都市を考える真面目なイベントです。http://ucfa-jp.blogspot.com/2011/08/3_21.html

*2:念のため。私の好みから外れるだけで、声量もあるし、一般には好まれやすいタイプであると思います。会場のウケも良かったです。