パッパーノ+サンタ・チェチーリア菅@京都コンサートホール

本日は、約1年前から楽しみにしていた公演でした。パッパーノ+サンタ・チェチーリア菅といえば、私にとってはこのディスクです。

ヴェルディ:レクイエム (EMI)
アントニオ・パッパーノ(指揮)
ローマ聖チェチーリア国立音楽院管弦楽団&合唱団
合唱指揮:アンドレス・マスペロ
アニヤ・ハルテロス(ソプラノ)
ソニア・ガナッシ(メゾ・ソプラノ)
ロランド・ヴィラゾンテノール
ルネ・パーぺ(バス)
録音時期:2009年1月8-13日
録音場所:ローマ、アウディトリウム・パルコ・デラ・ムジカ、サラ・サンタ・チェチーリア

リリース時の感想

来日公演のチケット入手後にROHでトスカを聴く機会があったので*1、パッパーノのオペラを聴きたいという望みは既に達成してしまったものの、やっぱりそのときも「これは10月が楽しみだなあ」という感想で、本日はとても楽しみにしていたのです。陣取ったのは、指揮者の顔芸を堪能するため指揮者の真横席です。いつも定期で陣取っているエリアですが、今回はバラ買いだったので変化をつけるために反対サイドにしてみました。これで観察準備おっけー。

ホールの入りは、6〜7割といったところ。定期では8〜9割は当然*2、完売御礼も珍しくないので、こんな空いたホールは見慣れません。こんなに空いてたら次回来てくれなくなっちゃうよ、みんな聴こうよ!とヤキモキする私。しかし最近の京都は4〜5千円で聴ける演奏のレベルが高いので、来日団体のチケット代に厳しくなっちゃう心理は分かるような。

まず今年のPROMSでもやって*3、最近ディスクもリリースされたばかりのウィリアム・テル。子供の頃の音楽教育で誰でも聴いている有名曲ですが、視覚付きではじめて触れて、あの導入の音はチェロの塊だったのだと思いました。快調です。いつ顔芸をしてくれるんだろうと心待ちにしていたのですが、ずっとモグモグしてたけど、目がカッと開いたと思ったら次の瞬間に口が上下にガバァっと開くクリーチャーっぽいところはやってくれませんでした。残念。でも演奏を終わって去っていく後ろ姿はヒョコヒョコしてて可愛いです。また演奏と関係ないこと書いてるな。

サンタ・チェチーリア管の第一印象は、というよりこのオケの印象ではなく、この場所で違うオケを聴いて最初に思ったことは・・・と言うべきですが、いつも私はこの場所で聴くものと言えば京響ばかりなのでついつい比べてしまうのですが、日本人はおそろしく協調性があるんだなーということだったりしました。これは別に大人しくまとまっているということではなく、むしろ全く逆の各自がぐっと前に出るようなシーンこそに究極の協調性が(おそらく本人達は無意識なんだと思いますが)流れていることを、私も無自覚に当然視をしていたけど気付かされたということです。というと、まるでサンタ・チェチーリア管に協調性が無いと言っているみたいですが、そうではなくて、あって然るべき協調性は当然あって、ある同士だからこそ出来る比較が成立して、そういう前提の下で、同じ環境で聴いてはじめて自分が普段当然視しているものが顕在化したということです。


続いてアイーダ序曲、運命の力序曲と、一見オペラ育ちのパッパーノらしい選曲が続きます。一見というのは、アイーダ序曲の方なんですが、アイーダには序曲と前奏曲があり、オペラで演奏されるのは前奏曲で、序曲の方は作曲されたものの演奏されることなく放置されていたそうです。ちなみに別にプログラムに書いてあって知ったわけではなく*4、引っ掛かることがあったので、帰ってきてから調べました。実は私はアイーダの導入部って「らしくない(オペラの序曲らしくない)」と思ってて、でも覚えるほどには聴き込んでなくて、聴きながら「こんなに長かったかな?」と思ったのでした。そういうわけでその時点では不確かなまま聴いていたのですが、あんなに分かりやすいオペラなのに、なんで序曲はこんなに分かりにくい、つーか見通しが悪いんだと思いました。そして、曲が分かりにくいのに、よくこんなに見通しよく演奏するもんだと思って聴いてました。なんたるねじれ現象。でもパッパーノは見通しがいいんですよ。立体感もいいし*5。そして、運命の力の序曲になると、曲そのものが格段に見通しよくなって、アイーダ序曲が採用されなかったのにはやっぱりそれなりの理由があるかも、と思いました。これを言いたいがためのプログラムだったのか。にしても、書いて配らないと観客には分からないと思います。

前奏曲と序曲の演奏セットがニコニコ動画にありました。ニコニコだと聴ける人が少ないだろうけど、一応URLを。http://www.nicovideo.jp/watch/sm6293689


後半は、こちらはこちらで楽しみにしていたシェラザードでした。この曲のわたしの馴染みのバージョンはシュンヴァントさん+DR響です。この曲はDR響の演奏以来興味を持って色々聴いてみたのですが、結局これが一番好きなんですよ。こんな風に馴染みの音源があるとついつい比較してしまうものですが、あちらのヴァイオリンソロがドライブ感たっぷりに、聴く人にとっては過剰になるかもしれないくらいにたっぷり歌い上げるのに対して、かなり大人しい印象を持ったくらいで、生の音の面白さで集中したまま、ずっと前のめりになって聴いていました。ソロとしてはちともの足りないものの、弦全体としての音はずっと良かったし、どのセクションも悪くなく、そん中でもファゴットの音は特に気に入りました*6

なかなかに盛り上がって終わって、アンコールにマノン・レスコーの間奏曲とポンキエッリ「時の踊り」をやってくれましたが、この時の踊りではさざ波のような弦の空間的広がりがすごく面白くて、こういうのをもっと聴きたいのにー!アンコールで「ちょっとだけよ」なんてイケズ!と思いました。でも聴けたからいいや。

パッパーノで一番聴きたかった、ヴェルレクのあの突風感や、オペラのときに見せるちょっとないコントラストは聴けなかったものの、それは曲目のせいなので、これはこれで満足しました。でも次回はやっぱりオペラかな。

2011年10月2日(日)15:00 京都コンサートホール
指揮:アントニオ・パッパーノ
ローマ・サンタ・チェチーリア管弦楽団
ロッシーニ : 歌劇「ウィリアム・テル」 序曲
ヴェルディ:歌劇「アイーダ」序曲
ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲
リムスキー=コルサコフ:交響組曲シェエラザード

*1:ああ、これもレポ書いてない・・・

*2:むしろ8割だと不人気なのかと心配してしまう。

*3:丁度イギリスに行っていたのに、別の公演と重なっていけなかった。

*4:何故なら配られたのは曲目を書いた紙ペラ一枚だったからである。

*5:出た!謎キーワード立体感!!

*6:パッパーノも同じ意見だったようで、演奏後の労いでは真っ先にファゴットの人を指名していた。こういうのは同じ音を聴いてるんだと思って嬉しくなる(←私は日頃人と同じ音を聴けている確信がないので)。