魔笛@びわ湖ホール

今日は30分ほど遅刻。前の用事が長引いた時点で今日行くの止めたら楽だなーという考えがちらっと頭を掠めたけど、どんなに忙しくても根性で駆け付けて空席にしたことはない*1のを思い出して、やはり根性で行くことにしました。しかし、そろそろ絞らないとしんどい。秋はイベント盛り沢山なので、行く気になれば毎日なんかしら行けるのですが。

私的には週末2日とも出かけると、週末にする用事のしわ寄せが平日に行くのでしんどいです。ましてそれに祝日や平日夜のイベントも重なった週には、もうひーこら言ってます。折角観たのに慌しく上書きされるのも勿体無いので、週に1日が丁度よいペースだなあ。


それはともかく、くじけずに行って良かったです。やっぱこういう小さいオペラ好きだな。遅れて会場に入った瞬間の勢いがよくて、ちょうどパパゲーノが鈴をもらって出かけるところだったのですが、今日の公演はびわ湖ホールアンサンブルからソリスト・合唱ともに出演で、息のあった重唱と会場を満たす勢いに「これよこれ!」と嬉しくなりました。

また、日本人同士だから感覚が近くて微妙なところまで分かるせいかもしれませんが、歌に情緒や表情があるんですよね。つまり、演奏そのものの良し悪しというよりは、聴き手との相性や求めるものが一致してるかどうかの問題かもしれませんが、こんなこと言うと耳が可笑しいと思われるかもしれませんが、最近来日団体を聴く機会が続いたわけですが、どっちかと言うと、私はこっちの方が好きかもしれない。もしこの先どっちかしか聴けないと言われて選ぶとしたら、来日公演よりこっちを選んでしまいそうな勢いで好きです。そんなことを再確認した瞬間でした。

この公演はびわ湖ホールアンサンブルからソリストが出るとしか発表されてなくて、ソリストを務めそうなメンバーであっても2日ある公演でダブルキャスト前提なので全然分からなかったのですが、二塚さん聴きたいなーと思ってて、そしたら当たりでした。

ここまで帰りの電車の中で書きました。続きは後日。


と書いてから大分経ってしまったのですが、そうだなあ。セットは舞台の上にさらに可愛らしい小舞台を作って、それが「モーツァルト・シアター in びわ湖」みたいな。リアリズムは放棄。ま、魔笛だもんね。最初に出てくる大蛇がいかにもぬいぐるみ的な可愛らしい奴で、動きもそんな感じで、こいつが以後もナイフを咥えて出てきたりとアクセント的に活躍します。全般におとぎ話的な可愛らしさに満ちた世界。タミーノとパミーナの衣装は中華入ってて、他は割とオーソドックスな感じ。夜の女王の衣装がちゃんと小林幸子@紅白してる。

歌手は、やっぱニ塚さん良かった。この人の明るくて真っ直ぐな個性は好き。パミーナも控えめながら綺麗な芸だった。合唱はすごく良かった。重唱しかしない小役も良かった。さすがびわ湖ホール声楽アンサンブル。ちと不満があったのはバス陣のソリストで、なんつうか、弱かったなーと。

魔笛といえば夜の女王ですが、魔笛のお伽噺世界は各地のローカルな劇場でかけるのによく馴染むと思うのですが、ローカルな劇場どころか、市民祭とか、ときには素人芝居でいいじゃないと思うわけですが、私はそんな混然一体群雄割拠な風景を好ましく感じる人間なのですぐそういうことを想像するのですが、よく考えたらローカルで気軽にかけるには夜の女王が難しいと、そういう存在が夜の女王でありました。それで、本日の感想ですが、まずあの夜の女王の二幕のアリアが、本当に人の喉から出て来るのは新鮮でした。また、かなり正確に綺麗に歌われていたと思います。しかし、なんというか、慎重なんですよねえ。怒っているのか昏々と諭しているのか分からなくなりそうな慎重さではありますが、しかし、夜の女王のあの旋律のせいで、やっぱり怒っているのかな、という感じではありました。

キャストでは、パパゲーノがすっごい良かった。なんかダミ声キャラで、決して声がダミ声なわけではないのだけど、なんか小太りダミ声で、努力は嫌いで食べることが好きで「え゛ーーー」って言いながらみんなの後を着いていくような、一人早合点するおっちょこちょいで寂しがり屋のベタなギャグキャラってあるじゃないですか。動きなども含めて、すっごいああいう感じ。そういう種類のキャラ立ちしてて、すごく良かった。正直この人はどんな声してたか全く覚えてない。そのくらい声がキャラに一致して昇華してた。パパゲーノがこんなに説得力のあるキャラだったことははじめて。ちなみに、今回のメンバーの中では「一人この人だけマイクを付けてる?」状態だった。

そして、パパゲーナ!おばあちゃんの作り声をやってるときからこの人上手いなーと思ってたんだけど、いよいよ最後になって歌い出して、私は、今日たったこれだけしか聴けないことを残念に思いましたよ。そんくらいインパクトあった。この人も全くどんな声だったか覚えてない。心地好いインパクトに全てが持って行かれちゃった。ちなみにこのブログ的には「どんな声だったか覚えてない」は最大級の賛辞であります。

私はなんか、パパゲーノとパパゲーナのパパパ・・・のところで、なんか、泣けましてねえ。なんで涙が出て来るのか分からないの。ああ良かったなあって思って。たしかパパゲーノとパパゲーナがピクニックシートみたいのに座ってて、子供達のつもりらしい鳥のぬいぐるみが一緒に左右に揺れて踊ってるだけの、観方によってはチャチい、そんだけのシーンなんだけど、なんでか分からないけど泣けて泣けて。ちょっといま、家族とか繋がっていく命とか、そういうキーワードにめちゃくちゃ弱いかもしんない。


魔笛は、やっぱ、下手に裏読みとかしないで、お伽噺としてこういう風に素直にやるのが正解な気がします。泣いてカタルシスがあるくらい気持ちよく泣けたし*2、とても楽しい時間でした。

そうそう、この日の公演は、なんと日本語上演でした。それが、画期的なことに(?)歌詞がとても聞き取りやすい、こなれた訳詞でした。今思い出してみても日本語上演のぎこちなさが全然無くて原語で聴いたみたいな後味でした。それに、字幕があったんです。これで、元々聞き取りやすい上に、ちょっと分からないところがあっても字幕で確認出来るからストレスなく聴けました。今思うと、訳詞の日本語が、歌の旋律に日本語のアクセントを合わせるべく音節を工夫していて、そのためにちょっと古風な言葉遣いとかも動員していて、だから字幕を付けたのかなと思います。音節があってて違和感無く聴けるのは本当に効果大です。びわ湖ホールはやっぱりきめ細かくて大好き。

http://www.biwako-hall.or.jp/event/detail.php?c=10200267
2011年10月08日(土) 14:00 びわ湖ホール 中ホール
びわ湖ホール オペラへの招待
モーツァルト作曲 歌劇『魔笛〜まほうの笛』(全2幕)
日本語上演・日本語字幕付
指揮:園田隆一郎
演出:中村敬一
管弦楽:京都フィルハーモニー室内合奏団
出演:湯浅桃子、びわ湖ホール声楽アンサンブルほか
キャスト(8日)
ザラストロ・・・・・・・・・・   松森 治**
タミーノ・・・・・・・・・・・・・  二塚直紀**
弁者・僧Ⅱ・・・・・・・・・・  林 隆史
僧Ⅰ・武士Ⅰ・・・・・・・・・  古屋彰久
夜の女王・・・・・・・・・・・  湯浅桃子*
パミーナ・・・・・・・・・・・・  松下美奈子
侍女Ⅰ・・・・・・・・・・・・・  岩川亮子
侍女Ⅱ・・・・・・・・・・・・・  森 季子
侍女Ⅲ・・・・・・・・・・・・・  本田華奈子
童子Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・・・・・・・・  大津児童合唱団
パパゲーノ・・・・・・・・・・  迎 肇聡
パパゲーナ・・・・・・・・・・  栗原未和
モノスタトス・・・・・・・・・  竹内直紀
武士Ⅱ・・・・・・・・・・・・・  砂場拓也
     *…客演、**…ソロ登録メンバー

*1:海外の公演でチケット確保してて行けなかったことはあるが、オフィス預かりになってたチケットを寄付したので、それは私的にはカウントしてない。

*2:でも客観的には、変な人だよねえ。