兵庫芸文ジルヴェスター・ガラ

晦日のガラのレポを今頃書いてみます。いやあ、この日はやられました。何がやられたって、スーパーキッズ・オーケストラにですよ!

前半はキッズ達の演奏4曲と落語という構成です。正直前座気分で臨んだのですが、いやあ、この前半がすごく来ましてねえ。まずキッズ達によるG線上のアリア。そして佐渡監督と桂三枝トークにてキッズ達が震災の慰問に行った風景を紹介しながら次の曲に、という進行なのですが、もうこれだけで、ボロボロ泣けましてねえ。

・・・あ、ご存じない方のために書いておきますが、私は茨城県福島県の境の港町の出身でして、実家は浸水したものの倒壊は免れ、しかし通り1本隔てれば半壊、もう数軒いくと見事に柱だけの瓦礫の世界でして、震災直後に駆けつけたときには見事に瓦礫だらけだったのですが、数ヶ月後には、あんなに家が建て込んだごちゃごちゃした港町だったのが、見事に実家の前がスコーンと何もない空間になっていまして、前は建物が建て込んでいるので家の前から海が直接は見えなかったのですが、もう直接見えるわけですよ。なんかこわいですよ、ない筈のものがあるみたいで。閑話休題。そんなわけで今年は感じやすく、ここ関西では一人だけ変な人になりがちなのです。

この日も、陽気な曲でも一人だけ泣いてる変な人でした。キッズ達はなかなかすごくて、ヴァイオリンソロの女の子なんて度胸が据わってること演奏がすごいこと。こんな子供の頃からこうだったら将来どうなっちゃうんだろう、楽しみですね。本日は4曲とも弦だけの構成でしたが、元々PACも弦がやたら良くて、しかも珍しいことに可愛らしい方向性に良いのですが、ああ確かに継いでるなあというものがありました。

お次は序曲付きの落語。水槽の中の捕り物の情景から鯛がぽーん!と跳ねて話がはじまります。落語を生で聞くのは、よく考えたらはじめてだったと思うのですが、そして全く期待せずに臨んだのですが、これが意外なことに、すごく面白かった。生簀の中の鯛が会話する創作落語で、この日のための新作と言っていたかと思うのですが、鯛のしぐさなどが興味深く、ネタもすごく普通というか毒の無い年越し向きのネタなのに次々に繰り出される小技が面白くて全く陳腐になっていなくて、感心しました。帰ってきて三枝の落語を生で聞いたと言ったら、オペラやオケの話には全く反応しない家人達がめちゃ反応していました(←ぷんぷん!)。

これはめちゃ楽しいし、お得な企画だと思います。私は直前に行けなくなった方のチケットを譲って頂いたので、2千円で4階のステージ寄りでした。この日のチケットは発売日にうっかり忘れていて発売時間から1時間後くらいにアクセスしたら完売していて諦めていたところを直前に行けることになってラッキーだったのですが、あっという間に完売するのも納得の企画でした。来年からは発売日にうっかりしないように気をつけなくちゃ。


後半が目当てで、第九の4楽章、ドイツ・レクイエム、トスカからアリアという構成です。いきなり始まる4楽章は、ちょっと最初びっくりするかも。弦はいいですね(こればっか)。つうかいつも贅沢に慣れ過ぎててごめん(>KKの金管)と反省いたしました。第九では、ちょっとどうかなーと正直思った部分もあったのですが、ドイツ・レクイエムは文句なしに良かった。もう1音目がはじまった瞬間にはっとして、音の厚みが心地良くて、まろやかで、全然違うの。これは1月の定期のプログラムから先取りという選曲なので、定期の日がすごく楽しみになりました。

実は夏のこうもり、この第九と聴いていて、私は(指揮者としての)佐渡さん相性が良くないのかも?また人がよいと言うものをよいと思えないパターンか?ガーン!!!(←生で聴ける機会がある人と相性が良くないとそんだけ楽しめる機会が減るので「ガーン」じゃないですか?みんな満足してる横で一人不満なのもしんどいし)と思っていたので、このドイツ・レクイエムではとても嬉しかったです。


続いてトスカから「歌に生き、恋に生き」。本日は並河さんのこれが目当てで来たのです。やっぱりなにかテオリン姫っぽい。何が似てるんだろう。声質以外のもの。リアルさ?精神?感情の乗せ方?一瞬なんだけどね。極端で大げさで分かりやすい種類のものではなくて、抑制された中にこぶしを効かせるように乗せて行くのがリアルなの。

ところでこのガラにトスカからの選曲が入っているのには意味がありまして、兵庫芸文の夏のオペラ、今年はトスカです!もちろんダブルキャストの片方は並河さん。わあい♪折角近くでやるんだから2回は観よう♪7/19-28の間の8日間です。

ここでカウントダウン。テレビ的な演出です。風船があまりに沢山落ちてきて1階の通路を埋め尽くして収まりきらず、客席へも雪崩れていて笑えました。エルガーの威風堂々(に日本語訳詩を付けたもの)みんなで歌って、ラデツキー行進曲と六甲降ろしをミックスした曲でさようならとなりました。

実はあとちょっと書きたいことがあったりします。公演レポではなく派生して考えたことです。また明日。

佐渡裕芸術監督プロデュース2011
ジルヴェスター・ガラ・コンサート

日 時 2011年12月31日(土)
開 演 21:30  (開 場 20:45)
会 場 芸術文化センター KOBELCO大ホール

■出演者
指揮 佐渡
落語 桂 三枝
ソプラノ 並河寿美 ◆
メゾ・ソプラノ 谷口睦美
テノール 西村 悟 ☆
バリトン 久保和範
合唱 オープニング記念第9合唱団
ひょうごプロデュースオペラ男声合唱
管弦楽 スーパーキッズ・オーケストラ
兵庫芸術文化センター管弦楽団

■スタッフ
構成・台本 井上頌一
演出 小栗哲家

■プログラム
【第1部】
G線上のアリア(J. S. バッハ)
フィドルファドル(L. アンダーソン)
リバーダンス(B. ウィーラン)
桂三枝創作落語「鯛」
(序曲 芥川也寸志「トリプティーク」第1楽章)

【第2部】
ベートーヴェン交響曲第9番より第4楽章《合唱付き》
ブラームス:ドイツレクイエム op.45より 第4曲
プッチーニ:歌劇「トスカ」より“星は光りぬ”☆
プッチーニ:歌劇「トスカ」より“歌に生き、恋に生き”◆
カウントダウン
エルガー:威風堂々(ジルヴェスター・バージョン)
ラデツキー行進曲