京都会館再整備基本計画・基本設計の問題点

問題点

  1. 過重な施設・設備によって施設維持費が高くなる。

  2. 多くの施設で運営費に充当されるホールの命名権が、建設費で使い尽されていて運営費に使えない。

  3. 京都市の文化予算を圧迫され、使用料の値上げ、市税からの充当、市の文化事業の切捨てにつながる可能性が高い。

  4. 現在の京都会館の特色である市民利用が、大型興行公演に置換される。

  5. 実質、税金による大型興行公演(ポピュラーミュージック)への優遇となっている。

  6. 地域の文化芸術の育成のための計画になっていない。
    ホールの新設・改修は、地域の文化芸術の活性化のきっかけとなっている。他都市の実績では、地域の文化芸術のためにどのような施設が必要かという視点から議論を行い、そのために必要な施設を計画する。京都市では貸しホールの前提で、ソフトに関する議論がなく建築物の計画を一方的に行ったために、そのような動きに結びついていない。

  7. 折角ホールを整備しても特色が無く、単なる貸し館のままである。京都会館の利用実態や周辺環境(公演・活動実績、立地等)を踏まえた計画になっていない。

  8. 専門家や利用者が排除されて密室で計画されたために、不備な点が多い。

  9. 計画では、世界の一流の舞台芸術は受け入れ不可能である。しかし、パブリックコメントや基本計画では市民に「世界水準の舞台芸術」を可能にすると説明しており、矛盾している。特に、ロームとの命名権契約における義務の筆頭に挙がっている歌劇においては、致命的である。

  10. 大型の舞台芸術の来日公演が激減している現状の中で、そのような公演の受入を前提とした施設計画自体に疑問がある。2011年の有名歌劇場の関西における公演は一団体、中部を入れてやっと二団体だった。一方、これらに対応可能なホールは、関西に既に二施設あり、さらに2013年にさらに一施設オープン予定という状況の中で、果たして現実的なのか疑問がある。

  11. 非常に大きな犠牲や負担(文化財の損失、景観への悪影響、建設費への市税投入、今後の年々の維持管理費の増加、文化事業への圧迫)があるにも関わらず、東欧などの中規模劇場が行う地方巡業公演(全国20箇所を巡回するようなレベル)しか受け入れ出来ない。京都市のイメージアップにつながらない。負担の割に得られるものが少ない。なお、中規模劇場が行う地方巡業公演は、有名歌劇場の公演以上に激減している。

  12. 「大は小を兼ねる」発想で作られたホールは、生音を前提とした舞台芸術には適さない。失敗例が豊富にある。

  13. 再整備基本計画が、限られた敷地に過重なスペックを要求しているため、計画案が最近建設された諸ホールと比較して、特色も工夫もないホールになっている。最近のホールは工夫を尽しており、見劣りする。

  14. ホワイエが貧弱で、ホールとしての品格に欠ける。幕間の時間の貧しさは、総合舞台芸術の場として不適格である。

  15. 景観への配慮が必要な立地における計画であるにも関わらず、駅前や郊外にあるホールと同水準の大きさを目安にしている。敷地が不充分な中で舞台高さだけを要求しているので、計画のバランスが悪い。

  16. ロームとの契約で「著名な歌劇・・・を実施するに相応しい機能水準並びに評判及び名声を確保し維持するよう努める(第4条)」とされているのに、ロームは計画内容には関与していないと回答している。京都市は、継承委員会の席で「ロームとの契約で著名な歌劇等を行わなければならないことになっているので、基本計画の舞台規模が必要」と回答しており、矛盾している。

  17. この計画に異議や疑問を提示しようとした音楽家舞台芸術関係者が、京都市から口封じの恐喝を受けている。関係者を育成しないのみならず、表現の自由を奪い、萎縮させている。

考えられる特色

  1. バレエを特色とする。
    京都会館の利用実績はバレエ公演が他ホールと比較して非常に多い。市内の教室数も他都市と比べて非常に多い。バレエを柱にしたホールは全国でも珍しい。大型オペラと比較するとバレエは舞台装置が小ぶりな傾向があり、限られた敷地で特色を出すのに適している。

  2. サロンオペラ・小型オペラ。大型のグランドオペラを公演可能とするのは、近隣のホールと比べて不利な敷地・後発であり、多目的ホールが専門ホールに勝てるわけもなく、かつ非常に経費がかかるため、京都市の財政状況では無理がある。一方、千席規模の会場で行う比較的小型のオペラであれば、関西近隣でも全国でも日々制作しており、招致なども現実的である。日本人の体格や声量が映える分野で、盛んに制作されているため、芸術育成上の意義もある。チケット代も通常のコンサートと同程度であるため、市民にとっても鑑賞機会が現実的なものとなる。オペラ制作団体の定例公演、各地の市民オペラ、専門劇場が中小劇場向けに制作している作品、バロックオペラなど豊富に選択肢がある。制作というよりも上演機会の増加への貢献が望まれている分野である。他都市との差別化が出来、センスの良さをアピール出来る。経費が(大型オペラと比較して)少額であるので、様々な試みがしやすく、上演頻度を高められる。第二ホールの規模なので、建築物の高さを上げなくても、現状の躯体で特色を出せる。

  3. 芸術系大学の集積・学生の街であることを利用した学生演劇等の支援。