ファルスタッフ@ムーティ+スカラ座

実演鑑賞前に1回観とこうと思って積んであったファルスタッフのDVDを観た。劇場で初鑑賞でもいいのだけど、字幕を見なくて済むならその方が集中出来るから。ROHは字幕の英語がシンプルなので、別にぶっつけ字幕読みでもいいのだけど*1

図書館にあったからという理由で選んだから、キャストも劇場も全く意識せずに観始めたのだけど、実はそんなに面白くなかった。みなさんうまい。手堅い。だけど、なんか・・・・生き生きしてない。終わってからキャストをチェックしたら、えらい豪華キャストで吃驚した。録音としての評判もよいディスクのようだ。これは自分の方が落ち込んだ。これで楽しめないと、何処に行っても駄目かもしれないなあ。と同時に、私が求め評価するタイプの要素ってのは、特殊な仇花みたいな存在で、一般には要求しちゃ駄目で、このくらい手堅かったら満足すべきなのかもしれない。これで不満にカテゴライズしてたら、幸せになれないかもね。

でも、こういう感じのもの足りなさを、ここ数回の豪華キャスト公演で(実演でも)相次いで経験したので、もう私は豪華キャスト公演とか手を出さない方がいいのかも。私が行かなくても、ああいうのは観たい人がいっぱいいるんだからチケット争奪戦に加わらない方が世のため人のため。


そういうわけで何も知らず観始めたら、人物に対してプロセニアムが小さいので(逆か、プロセニアムに対して人物が大きいと言うべきだな)えらく小さな舞台だと思ったら、ジュゼッペ・ヴェルディ劇場(ブッセート)はなんと328席の劇場なのだそう。ここにスカラのオケが遠征して、贅沢な公演である。ファルスタッフマエストリはいい声だと思った。この公演時点では31歳なのだそうで、そう言われてみれば若い声の良さかなあ、とも思う。そういえば今度の公演は誰なのか知らないなあ、と思ってチェックしたら、同じ人だった。10年経ってどうなってるか聴いてこよう。元々背が高い上に横幅ならぬ腹幅がすごいので無敵です。うん、ちょっと公演が楽しみになってきた(←指揮者の名前しか見てなかった)。アリーチェ夫人は一人お顔が艶々としていて、顎んとこがなんか見たことあると思ったら、フリットリだった。ナンネッタはインヴァ・ムーラで、この人、音だけでは聴く機会があって是非もっと聴きたいと思ってた人だ。音は素敵だけど、映像じゃない方が好印象だったかな。作品のせいか、いつもと再生環境が違うせいか(我が家は映像付きとCDでは再生環境が大きく違うので)、なんとなく、聴いたことのある人も違う人みたいだった。一人フェントンは、どこにでもこういうスタイルのテノールいるんだなあ・・・と思ったら本人だったというオチ。あとクイックリー夫人が良かった。印象に残ったのはそんくらい。みんな手堅いけど。その手堅さがなんとなく物足りなさになってしまう、オペラって難しいねって思った公演でした。

演出は、1913年のヴェルディ生誕100年祝のリバイバル。装置と衣装が1913年ので演技はカーセン。一部ピストルとバードルフの動きなどかなり凝った動きをさせてたけど、なんとなく全編通すと、生き生きとしない。オケも手堅いって感じで、不満に思う瞬間はないものの印象が薄い。作品自体は、ヴェルディのブッフォという観点では新鮮で興味深く聴けたけど、もうひとつなにか。この指揮者って私にとってこうだったかな、今度家にある何かを聴き直してみよう。

ヴェルディファルスタッフ
指揮:リッカルド・ムーティ
スカラ座管弦楽団・合唱団
ファルスタッフ:アンブロージョ・マエストリ
フォード:ロベルト・フロンタリ
フェントン:フアン・ディエゴ・フローレス
カイウス博士:エルネスト・ガヴァッツィ
バルドルフォ:パオロ・バルバチーニ
ピストーラ:ルイージ・ローニ
アリーチェ・フォード夫人:バルバラ・フリットリ
ナンネッタ:インヴァ・ムーラ
クイックリー夫人:ベルナデッテ・マンカ・ディ・ニッサ
メグ・ペイジ夫人:アンナ・カテリーナ・アントナッチ
演出:ルッジェーロ・カップッチョ
【2001年4月10日ジュゼッペ・ヴェルディ劇場(ブッセート)におけるライヴ収録】

*1:それに比べて、ドイツ語圏などの英語字幕のかったるさは酷い。原文の要素を削らず反映しようとした翻訳特有の長文で、字幕には全く向いてない。字幕は短く直感的で、口から出てる言葉の数分の一でなければならぬ。