第一ホールの解体差止を求める住民監査請求、棄却へ

本日の京都新聞にこのような記事が載りました。この記事が出るまでのいきさつです。

2012年7月14日 京都新聞

京都会館建て替え工事差し止め棄却/京都市監査委員

 京都市監査委員は13日、市民団体のメンバーらが京都会館第1ホール(左京区)の建て替えは市眺望景観創生条例に違反するなどとして、解体工事の差し止めを求めた住民監査請求を棄却した。

 棄却理由について、市監査委員は「市長の建て替え判断は会館の老朽化の程度や機能などを総合的に勘案したもの」とし、「条例違反の是正措置を取らなければならない事態が生じるとは認められない」と退けた。

 請求した京都会館再整備をじっくり考える会は「多額の費用を投じて第1ホールを建て替える必要はない。監査は請求内容をしっかり追求しておらず、不服」と反論し、住民訴訟を起こす方針。
(広中孝至)

まず住民監査請求提出日の記録と、呼びかけ、監査請求書の本文などは以下のところにあります。
http://d.hatena.ne.jp/starboard/20120517
http://d.hatena.ne.jp/starboard/20120508
http://www.jca.apc.org/jikkuri/docs/120509_KansaSeikyu.pdf

で、我々は以下のような請求を、京都市の監査請求委員会に対して行っていたわけです。

  • (1) 現状の京都会館を改修して適切に使うという選択肢があり、2006年の検討委員会で提言されていたにも関わらず、これを無視して建替案との結論を出した行為は、市民の財産を適切に管理・運用しなければならないとする地方財政法に違反する。
  • (2) 建替案は、良好な景観を阻害し、京都市眺望景観創生条例に違反する。
  • (3) 違法な建替案を前提として行われようとしている第一ホールの解体を防止する措置を請求する。

この監査請求という制度は請求後60日以内に判断が出るわけで、期日までもう数日あるのでまだ先かなと思っていたのですが、13日に結果が出まして、当日の午後2時くらいに電話がかかって来ました。「請求が棄却されましたが、今のお気持ちをお聞かせください」。いやあ。よく新聞やニュースで「訴状を見ていないので、コメントは差し控えたい」こういうコメントを見かけますが、まさか自分が言う羽目になるとは思わなかった。それしか言い様がないって。

その場は電話を切って、既に市のウェブサイトで監査結果が読めるとのことなので、それを読んで、一時間後くらいにもう一度連絡をもらうことにして、それまでやっていた野暮用を果たして、監査結果をチェックしました。

監査結果の内容自体の解説は後に譲るとして。

記者は原文自体を読んでなくてこっちに解説を求めてくることがあるので、まずは解説出来るように監査結果の内容を簡単にまとめておいて*1、さて何をコメントしようということで、私は考えました。ここで言いたいことをそのまま言っちゃ駄目だ。どうせこの件をずっと気にかけてくれるような人達に伝える機会はあるだろうから、そういう真っ当な解説や論点の網羅はそのときやるとして、これは貴重な広報の機会と考えて、少ないスペースで、何を伝えたら、あまりこの件に詳しくない市民が許せないと思うかを考えて、それに絞って言うべきだ。というわけで、言いたいことを言うのは止めて、価値観が反映しそうな貴重な建築物・景観への悪影響・手続上の不正などを強調することも止めて、多くの市民がケシカランと思いそうな無駄遣いにポイントに絞ってコメントしました。

  • 京都会館は60億円の予算で充分な改修が出来るとの市自身の過去の検討結果がある。今回の建替えは110億円かけて、(建築物の歴史的・文化的価値を失い、東山の景観へ悪影響を与えるにも関わらず←言いたかったが我慢した内容)60億円の改修と同等の機能にしかならない。市民の財産である建築物と景観上の価値を失うことと、同程度の機能を実現するためにわざわざ倍額近い工事費を費やす点が地方財政法違反である。
  • 請求では上記のポイントを挙げて訴えたが、監査委員会の判断においては、この部分は全く言及されなかった。
  • 判断では、どんな場合に地方財政法違反になるかというと、工事を行った後にその建築物が法令違法であることが判明し、違反の是正のために取り壊したり再工事を行わなければならない事態になるのであれば地方財政法に違反するのだと言う。そして本件は建替後に違法になる見込みはないから地方財政法には違反しないとのことである。
  • このロジックを使えば、どんなに高額で非効率な公共工事であっても、肯定されることになる。この計画が「最少の経費で最大の効果を上げている」か、「必要且つ最少の限度を超えて(経費を)支出してはならない」かという点に全くメスが入らなかったことが不服である。
  • 60億円の改修計画で充分な改修が可能であることは、是非紙面に書いて欲しい。60億円の数字を書いて欲しい。

これで出来た紙面が、上の通りです。裏側を知ると読み方が変わりますか?

 棄却理由について、市監査委員は・・・「条例違反の是正措置を取らなければならない事態が生じるとは認められない」と退けた。

 請求した京都会館再整備をじっくり考える会は「多額の費用を投じて第1ホールを建て替える必要はない。監査は請求内容をしっかり追求しておらず、不服」と反論し、住民訴訟を起こす方針。

60億円の数字は載らなかったけど、しつこく言っておけば、いつかチャンスが来るもんだから、私は機会ある毎に言います。


ここで終わりにしとけばいいのに余計なことを書きますが、よく市民団体の人とかで長々と論点を考えられるだけ挙げまくった挙句に、「マスコミは極端な単純化をする」「一番載って欲しいことが載らない」「一般ウケしそうなことしか書かない」とか言う人いますが、もしどうしても載せたいことがあるなら、自分の側で言うことを絞って、それしかコメントしないことです。いっぱい挙げたらそのうちのどこをピックアップされても無理はないでしょう。

*1:これは今回は結果的に要らなかった。