某市議との対話@京都会館建替問題

往路の飛行機で書いたシリーズ。

京都会館の件で某市議に申入れをしてきました。その時の内容で思うところがあったので、メモを残しときます。こういうのを公開するのがバレると以後の動きに良くない影響も予想されなくはないので、相手の名前は伏せときます。別に個人攻撃したいわけじゃないし、これ、この人だけじゃなくて、これまでに接触した経験から市議の大多数がこんな感じなので、むしろそれを整理しておきたくて出すので、誰が言ったかの問題じゃないんです。ちなみに録音があって確認しながら書いてるので、内容は正確です。

じっくり考える会(以下じっくり) まず京都会館再整備をどう見ているか?
市議 好ましいことだと思っている。大いにやって頂きたい。今の建物は価値があるというが、これを使い続けるのは非常に金がかかると聞いている。
   
じっくり 京都会館の再整備は、関係者や専門家らによる検討会で現場の建物を前提にした増築で機能的にはOKとの答申が出されており、その整備は最大60億円で可能である。一方、建て替えではその倍額かかる(現時点で114億円、オープンまでには120億円を超えるだろう)。市は当初大型のオペラが出来ると言っていたが、これは勉強不足で高さを上げるだけでは出来ない。指摘されて出来ないことが分かったので、最近は市も言ってない。一部増築と建替えは機能的には同等で、価値の高い建物を残し、景観も守り、半額で済む、三方よしの方策があるが、どう思うか*1
市議 それは知らなかった。知らないことが多くあったことは分かった。しかし、今はそういうタイミングではなく、決まったことを実行するタイミングである。
   
じっくり イコモスの警告をどう思うか?
市議 遅過ぎる。そういうことならもっと早く言えと。
   
じっくり 嘘に限りなく近いやり方で、パブリックコメントを行ったことは?
市議 問題がある。
   
じっくり 建物価値の継承の委員会で、建物価値は委員会を作ってちゃんとやると言って、実際にはやっていない。委員から提言を反映していないとのコメントが出ている。
市議 それはあり得る。
   
じっくり 先ほどの再整備の検討委員会でも、委員会の最終答申と矛盾するプランを出して、委員会を設置して検討したと言っている。建物価値の委員会でも、委員会の提言を全く反映していないにも関わらず、委員会を作ってやったので建物価値は継承されたとしている。
都市計画審議会では建物価値が守られると説明して通した。しかしその後に建物価値は守られないことが分かった。基本設計は高さが緩和される前提で発注された。そして基本設計が出来上がると、もう出来上がってしまったから変えられないと言う。
市議 全く驚かない。いつもそうで、我々もそれについてはいつも怒っているが、この件だけの問題ではない。
   
じっくり 都市計画で地権者一人の土地に地区計画を適用し、しかも申請する側と審査する側が同じという問題もある。
市議 それも先ほどと同じことで、役所のやることはいつもそうなので、それを言い出したら何も賛成出来ない。
   
じっくり 私も311以前はそう思って見ていた。しかしこういった政治プロセスを我々が許してきたので、ああいったものが建設され、あのような運用がなされ、福島の人々が苦しむことになったと思って心の底から反省した。責任を感じている。
市議 おっしゃる通りだ。
   
じっくり では京都会館の件は?
市議 この件はもう止められるタイミングにはない。
   
じっくり いつなら止められたのか?
市議 都市計画審議会で高さ制限が緩和されるまでだ。
   
じっくり 何か出来ることはないか?
市議 ロームが変えろと言ったら変わる。今の計画もロームがこうしろと言ったならその通りにするしかない。
じっくり それは具体的に聞いているか?
市議 おそらくあるだろう。
じっくり ロームはこの建物はどうでもよく、要求もしておらず、利益は別のところにあるだろう*2
   
じっくり この件は、一貫して排除の論理で進められたので、音楽関係者が排除されていて、機能面や実践上の必要から本気でチェックする人が誰もいない。このような場合は業者の言いなりのまま設備を導入することになるので、ランニングコストが高くなる。
市議 それは問題である。今後追求する。
じっくり 今後の追求は大いにして頂きたいが、基本計画の仕様が出来たときにはあらかた決まった後である。
市議 設計が出来上がらないと試算は出来ないとの説明だったので。
じっくり そして出来上がったときには、もう動かせないと言われるだろう。
   
じっくり 景観への影響も、1メートルでも下げることは出来ないか、追求して頂きたい。
市議 景観は全く問題だと思っていない(景観配慮や高さ規制そのものが必要だと思っていないらしい様子)。
   
市議 登録文化財でもなんでもない。
じっくり あの建物は、本当は重要文化財級の価値があるが、所有者である市が申請しなかったので登録を受けていない。本当は価値がある。
市議 その辺のお寺でもなんでも、そういう例はいっぱいある。所有者にその気がなければ壊される。京都会館だけの問題ではない。
   
じっくり 最後に、ランニングコストの追求をしてくれと言って終わり。


回答だけ読むと自民あたりの高齢議員っぽく読めるので、そうではなく新興の若手議員だと申し添えておきます。
分かったのは、金には興味があるが文化には全く関心がなく(景観も建築も音楽環境も)、金も企業が出すならイニシャルは仕方無いということで*3、市から今後出るランニングには興味がある。法に反さない範囲であれば(都市計画とか登録文化財とか)、例えその法が問題のあるやり方で曲げられたとしても、問題がない。法だけが唯一の抑止力。法の範囲内で目一杯の容積率や最低限のセットバックの建物を作ったりするのは、私なんぞは見識が露呈して恥ずかしい気がするのでとても出来ないが*4、こういう考え方だと当然のことになるのだろう。

あとロームの件は検討委員会でも同様だったけど、ロームの要求上今のプランになるしかないように思わせる説明を担当部局からしているのだろうなあと思った。

全体の感触として、悪平等的発想というか、悪いのはこの件だけでなく他にもあるのでこの件だけ特別対応は出来ない、悪い方に合わせて当然という主張が多い。普段こういう会話で納得する人ばかりと話してるのだとすると*5、よっぽど普段触れている相手が酷いのか、まともなときはそれなりだけど自分が追い返しモードで対応されたからまともに相手してもらえなかったのかよく分からない。どなたかざっとした印象でいいので教えてください*6。普段会話してる世界と違い過ぎるので、私なんぞは山に引き篭もって里には降りて行かない方が良いんじゃなかろうかと思うわけですが、そうしてるのも無責任だと反省したので、無理矢理里に降りて摩擦を起こしてるわけです。

*1:ついでに建替えの根拠となっている「全てをリセットして理想的なホールを追求すべきとの意見もあった」について、第一ホールのみ建替えを全く想定しておらず、敷地から全てリセットして自由なプランを考えることを指していることを説明して、音楽関係者が機能面から第一ホールの建替えを推した事実はないことも併せて説明したが、本筋と関係ないので、注釈に記す。

*2:オペラは会長対策で入れたのだろうが、機嫌を損ねないための方策程度でクリティカルな条件ではないからそのまま進んでいるのだろう。これがロームの要求であれば、出来ないことが分かった時点で、もっと慌てたことだろう。

*3:その結果企業が公共財産の行方を左右するとしても、それ自体も仕方無いとのこと。

*4:猫の額ほどの我が家でさえ高さはずっと抑え、セットバックもその地域で最も後退している建物に合わせた。

*5:なんせ相手は人気商売だし。

*6:ネットでそれまでは触れることのなかった人の本音を見聞きするようになって、人はそういう対応をすることがあると学習したのだが、具体的なケースでそう疑うこと自体に罪悪感があるが、かといってそういったことがまるで読めずに真に受ける態度もある種の人のイライラを誘うらしいので、どうしたもんかと思う。