放送の感想>ラインの黄金@ROH

あら。この録音とても面白いわ。実演観に行った人間が言うのもなんだけど、実演から予想した「録音としての面白さ」よりもずっと面白いかもしれない。

いや実演は面白かったんですよ。特に2回目は前から3列目で観てて、箱のデッドさは関係なかったし。さすがに体験としては生の方が面白いです。ただ、生から予測する「これが録音になったときの、他の録音との相対比較」として予想したポジションよりずっと面白い演奏だったんだなあ、と。これは、やっぱりROHの箱としての伝わりにくさがあって、ステージの上の魅力を伝えきれていなくて、他の箱でやったらもっと良かったんでしょうねえ。そういう意味では残念だったかも。

BBCのオンデマンドがあと4日聴けるのでどうぞ。
http://www.bbc.co.uk/programmes/b006tnpy/episodes/guide


実演の感想(と言っても公演の回は違うのですが)と一緒に読んで欲しいのですが、放送になると実演より良く感じる歌手は、コッホのアルベリヒと、ファーゾルトを歌ったイアン・ペイターソンかな。生で聴くと巨人兄弟は響きの面ですごい差があったのに、録音では差を埋める方向に変わってますね。公演日が違うので声の調子がそもそも違ったのかもしれませんが、私の聴いた公演では2回ともそんな感じでした。アルベリヒは音だけだとなんかハンサムっぽい(笑)。舞台では憎たらしいばかりと思ったのだけどなあ(いや、ステージ姿じゃなくて表現が)。これも、響き込みで聴くよりステージ上の近距離の方がそう聴こえる声質なのでしょうか。

意外と印象が変わらないのがターフェル。はじめて彼を生で聴いたときも「あ、録音と一緒だ」と思ったもの。フライアのサラ・コネリーは舞台だと声量やインパクトが頭ひとつ抜けた印象があったけど、こうやって聴くと、そういう差は平均化しちゃいますね。

アナセンは、やっぱり面白いと思うなあ。でも、彼の声は、生の方がより個性的(似た歌手がいない系統の声)に感じられると思う。散りやすい声質だと思うけど、その散った後の声がソフトで、フワフワとしていて、他のどんなテノールにも似ていなくて、重いのに軽い。今のワーグナーの流行とは全然違うと思うけど。