初収穫

もうはるか記憶のかなたかもしれないけど、ご心配をおかけしたのでお知らせです。私の出身地というのは茨城県福島県の県境付近のまさに海岸沿いドンピシャでして、親類縁者はいわき〜相馬の辺りに分布しております。そのうち農家が一軒西日本への移住を希望しておりまして、何度もこちらに足を運んでも土地が見つからないのでどうなるかと思ったんですけども、紆余曲折を経て無事土地家屋が見つかり、最初の収穫を迎えることが出来ました。

で、第一弾の野菜が出来たというからお祝いに駆けつけたわけですが、お米はまあいいとして、もらった野菜がこんなラインナップでございました。

  • フェンネル/玉ねぎ・にんにく似/葉は特徴あるハーブ。- 白い部分はサラダや煮込み料理・炒め物に。
  • コールラビー/キャベツ色の蕪/大根に似てシャリシャリしている。薄切りにしてサラダ・油炒め・味噌汁の具に。根に近い部分は筋がある。
  • トレビス/赤キャベツ似/サラダ。独特の苦味がある。さっと加熱すると苦味が増す(好き嫌いが分かれるが、味わいは増す)。
  • セレベス/丸い芋/里芋と同じ調理法だが、里芋より甘くて風味がある。万人受けする味。形崩れしやすい。
  • 京芋・海老芋/煮物・ポテトサラダ。

ちょw。知ってんのえび芋しかねえw。おっちゃん好き放題やり過ぎ。羽伸ばし過ぎ。

この人は元々変わっていて*1、農業の腕はとても良く、どのくらい上手いかって、ここの米食ってると、ちょっと凝った米を扱う米屋に行って、金は気にしないから一番うまいの頂戴と言って出てきた米がどれもこれもイマイチに感じるくらい上手いわけですが、それで農業誌なんかにもしばしば掲載されているのですが、こっちで土地を探すときに自己紹介になるからそれ持って来いと言ったのに「そういうのは大嫌いだ」と言い張ってやる気ナッシングなので全くこっちは無駄な苦労をしたのでありますが、まあそういうわけで変人で探究心が旺盛過ぎて変なところに行っておりました。

さすがに一年目だしまだ土が出来ていないだろうし、こっちとあっちを行ったり来たりで手間も例年のようにはかけられないしで、あんましお味の方は期待していなかったのですが、しかしこれが期待を上回る旨さでありまして、まず米が、向こうでおっちゃんが作っていた米にはまだまだ及ばないものの、おっちゃんの被災後は全然当たっていなかったレベルの甘くてもっちりとした米が出来ていて吃驚しました。

しかも、もらったときは「どうすんのこれ」と思った野菜がどれもこれもうまく、芋2種類は甘く風味があり、私はこれまでえび芋を特に旨いと思ったことはなく正月だから食うものとしか認識していなかったのですが*2 *3すっかり認識を改め、フェンネルの葉っぱのハーブんとこは衝撃のうまさですっかり嵌ってしまい、トレベスは生の野菜を食べてんのに調理済の何かを食べてるかのような不思議な風味に驚愕してしまいました。

実はおっちゃんはかなりストリクトなベジタリアンで、なんせこのベジが原因で離婚したくらいストリクトなそれで*4、自分の食べるものとしての野菜の探求に熱心なのですが、さすがベジタリアンの選ぶ野菜は違うと思わされるだけのものがありました。あまりにも野菜が面白いので、引退して野菜料理のレストランとかやったら面白いなとついうっかり考えてしまいました。

しかしおっちゃん見てると、農業ってのは観察力と探究心なんだなあとつくづく思います。生きて起きてる間ずっと観察と探求の連続だから、農協のカレンダーに従ってやってるだけの人とはそりゃ差が付くわ、と。

しかしね、たまにはうまい玉ねぎや人参が食いたい。おっちゃんが作らんと根本的に当たらんのだ。私もあちこち探したんだけど、能書きはうまそうだが、お味の方は厳しいのだ。来シーズンは普通の野菜も作ってくれー。

ま、とりあえず、メデタシメデタシかな。

*1:と、私には言われたくないかもしれないが。

*2:同じように思ってるものに京都の正月料理のぐじ(鯛)の習慣がある。こちとら浜育ちでうまい魚を最高の状態で食うのが当たり前で育ってんでい。なにが悲しゅうて正月から冷えて硬くなった鯛をちまちまと食わねばならんのよ。鱧に至っては、あんなもの浜じゃ真っ先に捨てる雑魚と放言。何が悲しゅうて生命力の強い鮫みたいな雑魚を、京都の山の中までちゃっぽんちゃっぽん運んで、有難がって包丁でちまちまと骨叩いてまで食わねばならんのか。しかもいかに骨を叩こうが口の中で骨の触感気になるし。

*3:(注)鱧は生命力が強いために、昔は、京都までなんとか生きた状態で運べて、生に近い調理法で食せる唯一の魚だったんですね。で、基本的にはそういう食べ方に向いてない魚を手間暇かけて食べる方法が開発されたわけです。文化とはそういうものかもしれません。・・・こんなこと書いてると京都人に後ろから刺される。

*4:あんな田舎で旦那がベジとか言い出したら無理もないわなあ、と私としては同情を禁じえなかったりする。