パッパーノ・突風のヴェルレク 2009

ラヴ・パッパーノ


録画したバレンボイム・ヴェルレク放送を聴きたいが、しかしこれをアウトプットする前には手を出せない。そういうわけでレポってみます。

今回書きたいことは決まっています。それは・・・・もうキレが足りないなんて言わせない!迫力勝負なパートの導入部の一音目のインパクト、キメキメです。気合入ってます。Dies irea, Tuba mirum, Rex tremende, さらにRequiem et Kyrieの男性合唱の入りのとこですね。これは是非迫力系のオーディオで聴いて頂きたい。うちのオーディオでは、このDies ireaのために調整が必要になっちゃいましたよ。まあこれまでテクノ/クラブ系統の音楽のためのセッティングだったから、ずっとサブウーハー活躍してなくて、ここらで見直すのもよい機会ではあったのですが*1


導入部。微かな・・・風が吹きます。そして、合唱の表情が、遠くから微かに聴こえる声、そして力強い声、すぐに遠ざかる声の表情。各ソリストの独唱が被さり気分が高まったところで、
ドン!
starboard驚愕です。少年漫画なら絶対このシーンで突風が吹いて髪が逆毛状態になってます。主人公を見守る脇役陣のコマに「なにぃっ!」「風が・・・・!」という台詞も入ってます。そして畳み掛ける怒りの太鼓。低音の嵐。ああこの音圧、素敵・・・・うっとり・・・・目的外使用ですstarboardさん!


いやー。もうここだけで私としては満足なのですが、一応その先も言及しますと、まず重要なのは、インパクトがありゃ、音圧でかけりゃいいってもんじゃない。パッパーノ氏の音作りはすぐに遠ざかるところがいいです。いつまでも盛り上がったままだと有難味が薄れます。世の中、引き際が肝心です。

オケは、あんまりコメント出来ないな。主張しない確実なオケでしょうか。囁くような寄り添うようなオケはそれ自体に注目させる機会は少ないものの、確実にこの演奏を支えています。全体にそういうトーンだからこそ突風が引き立つってもんです。

ソリストについて。ビリャソンはなんかテノールに聴こえないんですけど。この演奏後に喉を手術したと聞いていたので、故障のせいで声が太いのかと勝手に納得していたら、実は元からこの系統だったらしく(ここで学習した)。でもテクとか表情とか声量とかの面では立派なのはテノール音痴の私にも分かりました。ヴェルレクテノールについては、例の禁断の映像のロパード氏が初体験で刷り込まれてしまったので、どうもそっちに引きずられてしまう。予習素材にしてたドミンゴ指揮のテノール、シャコーン-クルーズ氏もそんな感じだし。

ソプラノのハルテロスは声が素晴らしいですねえ。透明感があって。そして歌唱が重くなくて。軽いのとは違うし軽やかってのとも違って、重力から解放されて自由に緩やかに行き来してる感じ。天使が飛んでますねえ。いつも際立ってるのはこの人の声だ。

メゾの人は、たぶん平凡かな。やっぱり今回も、ソプラノとの重唱のところは綺麗だけどソロの印象が無いと思ってしまった。そういうもんなのか。立派に役目を果してるけど、勝手に私が特別なサムシングを期待し過ぎなのかしらん。見事なヴェルレク・メッゾとは何ぞや?を学習しようとしたら、何を聴いたらいいですか?

パーペは、やっぱりパーペです。もうね、この人に関しては、私の耳が特別に聴いてしまうのか、それとも本当にこういう風に他の人にも聴こえているのか自信がないので、コメント出来ないです。すごく分析的な還元的な、そのポイント指摘してそこに注意して聞けば誰にでもそう聴こえるだろう的なことだったら言えるかもしれないけど、印象とかは書けないです。


まあでも、そんなことは全部どうでもいいから、突風を味わおうぜ!

ヴェルディ:レクイエム (EMI)
アントニオ・パッパーノ(指揮)
ローマ聖チェチーリア国立音楽院管弦楽団&合唱団
合唱指揮:アンドレス・マスペロ
アニヤ・ハルテロス(ソプラノ)
ソニア・ガナッシ(メゾ・ソプラノ)
ロランド・ヴィラゾンテノール
ルネ・パーぺ(バス)
録音時期:2009年1月8-13日
録音場所:ローマ、アウディトリウム・パルコ・デラ・ムジカ、サラ・サンタ・チェチーリア

*1:サブウーハー全開にしてクラシックを聴くのは止めてください!!