Siegmund as a real man

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ちょっと前に戻って、1週間前の週末なにをしてたかというと、部屋のモニターでコペハンリングのワルキューレ再生しつつ、モニターから一番遠い隅に陣取り、買ったばかりの単眼鏡*1のテストを兼ねて単眼鏡経由で画面を観ながら「うーん、劇場気分」と嘯いて鑑賞してました。私は一体何をやってるんだ。

それもこれも全く見目麗しくない*2 *3アナセンのジークムントが悪いのです。でもこの人すごいんですよ。何がすごいって、彼を見てると、ジークムントを一人のリアルな人間として感じるんです。あんなぶっとんだ設定の人物をこんな風に思う日が来るとは思わなかった。物語の登場人物としてリアルとか演じることに関してリアルというのと、自分の隣にいてもおかしくない人間の一人としてリアルって違いますもん。何故か前者を通り超えて後者なんです。

何がそんなに違うんだろう。正直めちゃくちゃ完成度が高いわけでもないし、聴いてて安定してるわけでもないし*4、人によってはヘナヘナでなんだこれって評価になりそうな第一印象であるし、ワグナーのタイトルロールとしては相当忙しいみたいですが、観客よりも製作サイドに好かれてそうな感じで*5、それも押し出しの強さとかじゃなくてスタミナで評価されてるみたいで、ついでに声はハスキーと言えば聞こえはいいですが悪く言えばしわがれの入った声で、決してテノールとして絶賛されるタイプの声ではなく、オペラシンガーよりはアニメの主題歌とかみんなの歌とかで活躍してそうな声質だし、このまま書き並べると延々と貶しそうなのでこの辺で打ち止めにしときますが、でも何かあると感じるんですよね。単純に美しいと感じて惹かれるよりよっぽど謎ですよ。何だろう。

他のシンガーだったら声を張り上げるような場面で繰り出してくる、原始的な武器をぶんぶん振り回してるかのような音の処理の仕方が好きです。変な奴オンパレードのワグナー作品にはいいとして、それ以外にはどうだか分かんないけど。あ、でもそういう役他にもいっぱいあるか。

結局本人が言ってた「矛盾が好きだ」って言葉に集約されるのだろうか*6

http://findarticles.com/p/articles/mi_qa3760/is_200004/ai_n8882824/pg_2/?tag=content;col1
Still, I wonder: Was his style rugged and sturdy? Smooth and fragile? "The big forms were quite rough, but within that I like very delicate lines," he says. "I like that contradiction." I jot this down. "Maybe it sounds as if it had something to do with the way I sing," he concludes, reading my mind.

本当はコペハンリングのレポの続きを書こうと思ったんですが、これ書いただけで長くなってしまった。続きはまた明日。この一週間はこのコペハンリングのワルキューレのAct1をヘビロテ中です。正直音だけで聴くと音質がイマイチなんだけど、それを補って余りあるパワーがあるのです。あとこのAct1の前半は音だけ聴いてるとめっちゃエロい。昼間っからこんなんかけてていいんかと思うくらいエロい。

*1:劇場に持ち込む際に一番コンパクトで最低限の用の足りるものをと考えて購入。長時間使いそうなときはちゃんと双眼鏡にするとして、そうでもないときに荷物に忍ばせておいて、たまに補助的に使うツールがあるといいなと思って。単眼鏡にすると超コンパクトになるので座席への持込に便利ですよ。単眼にすると何故か視界の揺れも気にならないし。片目にするの疲れそうなら使わない方の目を軽く押さえちゃえばOK。

*2:ものすごく婉曲表現。

*3:タイトル画像はいつものstarboardフィルターで比較的マシな瞬間(←これでも)を切り出しました。

*4:ライブ音源とスタジオ録音音源の間に恐ろしくムラがないので結果的に安定してるとは思うんですが、聴いてて安定感があるタイプの歌唱ではないですよね。

*5:作家でも編集者好きのする作家っていますよね。

*6:ところで私も矛盾が好きです。矛盾というか、なにかストレートではないものを仕込んでおくのが好きです。例えば今日のタイトルとかね。複数の意味にとれる言葉を、マイナーな方の用途で使って、読む人に引っ掛かりを感じさせるような、そんなイタズラが好きです。