ジークフリート@MetPlyer視聴記

いつでも聴けるからつい後回しにしてしまうMetPlayerですが、このタイミングで聴くしかないでしょうということで、以下の音源を聴いてみました。

  • まず驚いたのが、オケがワクワクさせてくれる音を出していることでした。実はこれまでの数回の経験から、レヴァインもメトオケも、ひょっとして相性良くないのかもとぼんやり思っていて、そんなわけで来年の来日公演も(NHKホールのせいもかなりあるけど)イマイチ乗り気じゃなかったりしてたのです。ところがこの演奏は、かなりぐっと来るのです。私がジークフリートの演奏に求めるものは、あまり捻りすぎず定番の冒険活劇物語を見せてくれることで、その雰囲気がバッチリなのです。おお!と思いながら次へ。
  • ミーメとジークフリートの組合せが、DNOの録音と一緒です。ただしこちらが5年前です。グレハム・クラークのミーメは、相変わらず達者です。DNOではプロダクションのせいもあって不気味さをかなり強調してて*1、強調ついでに捻り過ぎてちょっと変な領域に突入してるのに対して、こっちは素直にやってます。もともとうまいんですからこのくらいで止めておいた方がいいのに、と思わないでもありません。
  • さてお目当てのアナセン。おお、なかなか調子良さそうでないの。この人のいつものパターンで登場一声目から大きな音を出したりはしないんですが、それどころがどこまで行ってもそういう瞬間が来ないので、それを待ち構えてる観客からは「ひょっとして調子悪い?」と言われがちですが、いつもこんなバランスです。キャリアの最後期から知った私としては、少しでも古い音源は気になるのですが*2、そういう意味でこの音源はドキドキしながら聴き始めたのですが、2000年ではあまり変わらないですね*3。それこそ2幕のこの間聴き比べしたところのような、細かい表現に全く違いがないわけではないのですが、逆説的にそういう違いに注意が向くくらい、再現度の高い人です。それはともかく、これでNGだった(=次のシーズンお声がかからなかった)のかあ、厳しいなあメト、と思いつつ次へ。
  • その理由が一発で分かったのが、モリスさすらい人の登場。声量が違います。違い過ぎます。メトでウケるためにはこれが必要なのね。しかしこのblogの読者には既になんとなく伝わってるんじゃないかと思いますが、starboardはあんましそういうのが好きじゃないのです・・・・有難味の分からない奴ですいません。音を開き過ぎるのは好きじゃないのです。もっと抑制の効いた、丁寧な、音を最後まで離さないようなアプローチが好きなのです。チケット代が倍になってもいいから、もっと小さい箱でサロン風に聴きたいなどと考えてしまう不埒者です。よりによってワグナーでそれを求めるなって感じですね。それに、ここだけの話、1幕も3幕も*4ワンパターンなような。この役はこんなもんなんですかね。モリスの浪花節な声とキャラは好きなんですが。
  • 不思議なもんで、上のことに気づいたときは、なんだかオケもワンパターンに聴こえてしまって。それでも物語が進行すると再び冒険活劇風に聴こえてきましたから、全体としてオケの満足度はとても高いです。3幕のDas ist kein Mann!のところで一瞬かき鳴らし過ぎと感じる部分がなかったでは無いものの、このシーンの性格描写の解釈とドライブ感はとっても良かったです。
  • イーグレンのブリュンヒルデはとても綺麗で自然ですね!ブリュンヒルデのパート、こんな音楽だったんだとはじめて腑に落ちた感じがしました。聞き覚えの無い装飾音も各所にありました。これは楽譜にはあるんだけど難易度が高いので省略されることが多いそうです。3幕のディエットの満足度が高くてそのまま終わるので、すごく後味のいい音源です。

これまでに聴いたジークフリートの録音の中でも、かなりお薦め出来るものだと思いました。なんでディスク販売しないのか不思議です。イーグレンのブリュンヒルデはディスク出てないのかな。あったら欲しいな。

追記

  • 日本からはMetPlayer経由で聴くしかないのですが、こちらから登録して、支払いのところで$0のFree Trialを選んで、クレジットカード情報を入力して購入して、目当てのコンテンツを聴いて、1週間以内に解約すれば無料で聴けます。初回の再生でPlayerのインストールをするようになってますから、画面の支持に従ってインストールしてくださいな。

*1:なんせあのプロダクションのミーメは気の毒な風体である。あんまり気の毒なので、ついああいう外見に生まれついたミーメの一生に思いを巡らせてしまって、話がストレートに受け取れなくなるくらい気の毒である。

*2:既に最盛期を聴き逃しているのではないか、という意味で気になるのです。

*3:ちなみにジークフリートは92年から歌ってます。

*4:2幕はなんか記憶に残ってない。