イゾルデの愛の死・ファーストインプレッション
もっとずっとずっと前に感じていたことですが、いつでも書けるつもりで後回しにしていたら、そしてトリイゾ全曲を聴いたら急速に当初の印象が薄れてきちゃったので、あわててまとめておきます。つーか、これをアウトプットしておかないと安心して世界に浸れないので(←厄介な性格である)。
きっかけはこちら。
http://d.hatena.ne.jp/wagnerianchan/20100620/1277037563
「愛の死」・・・テクノクラシカ?@ワーグナー聴けば聴くほど
ボーカロイド*1によって作られたwagnerianchanさんの力作です。これに失礼なコメントを付けた奴が約一名。
- starboard 2010/06/24 23:55
これ聴いて以来ずっと思っていることが。いや薄々思ってはいたんですが、これほど明らかになってる音源は珍しいので、いい機会なので(?)恥を忍んで書きます。ワーグナー節って「音痴な人のモノマネ」っぽいところがないですか。音が一音分だけぽーんと上がって戻るところとか。本来の旋律を辿れなくて行き過ぎてしまった感があるんです。原曲に馴染んでない者の印象でした。珍説失礼。
- wagnerianchan 2010/06/25 22:30
(前略)
starboardさま
「音痴モノマネ」に聴こえるとすれば、それはたぶん私が悪いのです(笑)。おそらく、私がオケのハーモニー(特に低音)を省いたため、歌の進行を十分に支え切れていないので、音痴に聴こえるのではないかと?
ただ、そこから逆にわかるのは、この歌で重要なのは、歌のメロディーではなくて、オケと一体となったハーモニーだということですね。だからオケの響きに溶け込むように歌わねばならないと思うのですが、これこそ、劇場の音響を良く考えねばならないような気がします。
あと、もう一つ気付いたのは、これは楽譜どおり歌っちゃダメだということですね。ボカロバージョンは、1・2箇所を除いて、ほぼ楽譜通り歌っているので、これはこれで資料的価値があるかも知れません。(←と言って居直る私)
ちなみに、ワーグナーが傑出しているのは「旋律」ではなく「ハーモニー」だというのは、おそらく一般的な意見です。
- starboard 2010/07/01 00:30
連投&しつこくてすみませんが、ここは大事なことだと思ったので。まさに楽譜通りでは駄目だというのが、ワーグナーの旋律だと思います。はじめて触れたときから、なんて歌いにくい(そのままでは様にならない)旋律を付けたのだろうと思ってました。そこでお願いなんですが、折角ここまで作られたので、楽譜通り&伴奏抜きバージョンを作ってもらえませんか。人間では出来ない、ボカロならではの意義があると思います。いつでも構いませんので。
- wagnerianchan 2010/07/01 23:15
私も大事なことだと思います。この曲は、そもそもどういう発想で作られているのでしょうかね?メロディーだけのバージョンは、そんなに手間はかからないので、いずれ、ご要望通りアップしたいと思います。
ちなみに、このメロディーは、第2幕の二重唱の途中でトリスタンが初めて歌うのですが、ここがとても難しいらしく、みなさん、音程を外したりするので、昔からすごく気になっています。それほど高い音ではないので、やはり「歌いにくい」のかな?と思います。
という経緯で作って頂いた音源が以下。コメントも参考になるので一緒に紹介します。
http://www.jca.apc.org/~czy00347/starboard/Techno_classical_Isolde_wmv.flv
- http://d.hatena.ne.jp/starboard/20100704#c1278421532
- wagnerianchan 2010/07/06 22:05
この前は失礼しました。リクエストのものをアップしてみましたので、聴いてみてください。
(中略)
あまりにマニアックなので、うちのほうでは、特にリンクする予定はありません。なお、画像は曲と何の関係もありません。
ボカロは、ほぼ楽譜通りですが、最初の5小節だけ違います。そのため、シンセ・バージョンもつけてみました。この部分は、楽譜通りじゃ、まったく音楽にならないことが良く分かるのではないかと。
ところで、これやってて面白いことに気付いたのですが、私の場合、「愛の死」はメロディーだけ聴いていても、頭の中でハーモニーを補ってしまいます。そのため、あまり変に聴こえません。
最後はおまけで、「トリスタン」の最初の「水夫の歌」のシンセ・バージョンです。こちらの歌のほうは、いつ聴いても変だと思います。
- starboard 2010/07/07 22:52
おお!ありがとうございます。シンセバージョンがすごく参考になります。これは・・・・なんというか、感想に困りますね。これだけ聴くと、アリアな感じが全然しませんね。やっぱり歌いにくいですよね。私は音楽は全くの素人(体系立てて学んだことどころか、自分で演奏したり作ったりしたことすらない)なのでまた的外れなことを言うかもしれませんが、これは、いわゆる主旋律じゃなくて、他のパートと一緒に和声を構成するものじゃないかと思います。あ、なんか段々当初の謎が解けてきました。この関係をまとめておきたいので、wagnerianchanさんとこのコメント欄なども含めたこの一連をまとめて記事にして(コピーして)いいですか。
- wagnerianchan 2010/07/10 23:33
最近バタバタしてて返事が遅くなってすみません。コピーして、まとめていただくのは全然かまいませんよ。なお、「指輪」や「トリスタン」以後のワーグナーには、アリアは一切ないので、私はそれと知りつつ誤解を招く表現をしていたかも知れません。(後略)
こうやって読み返してみると、このときのやり取りだけで言い尽くされていて、何も付け足すことがありませんね。ハーモニー・・・・ですよねえ。でもオペラでヒロインが最後に歌うアリア*2としてはものすごく前衛じゃないですか。もちろんワーグナーはこれまでだって常に前衛だったけど、ここは特に前衛だと思います。
有り難いことに、wagnerianchanさんが「愛の死」特集をしてくださっているので、歴代「愛の死」を簡単にさらうことが出来たのですが、私はこれ、フラグスタートでも後半ヴォーカルが出過ぎだと感じてしまいますね。もっとこう、最後まで溶け合うように、盛り上がりたいところをぐぐっと堪えて、いや盛り上がりたいところは一瞬盛り上がってもいいから一瞬ですぐ波が引くように抑えて*3、夢見るように眠りたいですねえ。あら?夢うつつの初鑑賞が影響してるのかしら?
そして、私もやっぱり、愛の死に一度漬かってしまった後では「頭の中でハーモニーを補って」しまって、もはや音痴モノマネに聴こえなくなってしまいました*4。そして、夢うつつの愛の死に浸ってこのメロディーが頭から離れなくなって、ついつい口ずさんでいたら・・・・家人が「味噌が腐る」と言いながら通り過ぎて行った!ぷんぷん!
やはり「愛の死」マジックは初聴きの人間には通用しない模様です。思わぬところで「音痴モノマネ」説の裏付けがとれました。全く嬉しくないですが。