新作デンマークオペラ Houdini
今日も古いデンマークオペラを観て、骨抜きにされてしまった。マスカレード(1986)と同年代。その時点の新作デンマークオペラ。すーごーいー。たしかに、これと比べたら、今のオペラは怒鳴ってるだけだわ・・・・。
昔って、みんなこうだったの?歌手が違い過ぎない?そりゃ黄金時代だわ。ちょっと、ごめん、この時代の公演もっと発掘してくる。
作品名は Houdini den Store (The Great Houdini)、Andy Pape というデンマークの現役作曲家の作品で、クラシックというよりはミュージカルみたいな、映画音楽みたいな音楽。そこにものすごくニュアンス豊かな歌が絡むのだ。もう口あんぐり。ずっと圧倒されっ放し。2回連続で観てしまった。
題材もミュージカルっぽくて、1910年代のNYを舞台に、実在の人物を元にした作品。画面は完全にミュージカル*1。Houndiniという人は縄抜け芸と手品の名人として、ショービジネス界で活躍したらしい。あらすじは、とある女の子がリンゴを盗もうとして警官に捕まったところを、この縄抜けの名手ハウンディーニが手錠を外して助け、後でその警官と鉢合わせしたときに何故か縄抜け芸をやってその場を切り抜けることになり、これはすごいということになって、その警官と女の子と3人でショービズ界に進出して成功を収めるという話。んでこのハウンディーニはマザコンなので、要所々々にママが出てきて、ママとのエピソードが絡みながら進行するという。デンマーク語なもので全然台詞は分かんないけど、歌と表情が雄弁なので全然問題はない。基本くすくすオペラで、ちょっと奇妙で、たまにホロっと来て、あんまり極端な感情は描かないデンマークオペラっぽい作品だ。
最初に出てくる警官のバリトンがすごいニュアンス豊かで圧倒されるのに、その後に続く歌手が全員その調子なのでもうひたすら吃驚。でもこの警官の人何かに似てるような。ホルテン演出のマスカレード(2004)のマスカレードマスターかな。あの人なんて言ったっけ。
ロッテ・ニールセンがまたすごい。軽やかで可憐だ。ママと二重唱するとこが好き。
あとはタイトルロールのアナセン独壇場。こんなに歌い続けて大丈夫なのと思うくらい歌ってるけど、これ一時間少々の作品なんだよなあ。密度濃いわー。存在感は完全にポップスター*2。この全く成人男性っぽくないセンスどっから出てくるんだろう。相変わらず「抜き」の表現がすごい。
うーむ。あんまし言いたくないような気がするけど、この時代がプライムですね。というか、やっぱし今はちょっと無理のあるレパートリーを歌ってるってのは、やっぱり、ちょっと、ちょびっとだけ、あるかも*3。多くの人が年月をかけて獲得するような役の解釈面とかも、この時代で既にものすごく完成してるからなあ。新作をよくこんな密度で出来るもんだ。よっぽど歌いやすいのかな。あと、縄抜けシーンはタンクトップ姿なわけですが、くりくりお目々とマッチョが共存して超絶変なことになってる。もう倒錯って言うの止めます(逆説的な意味で)。
いやー。でも、いろんな意味で、期待以上だった。音源としてここまでよいとは期待してなかった。
なんでこれ今このタイミングで見たかというとですね。今シーズンプレミエが新作デンマークオペラってとこから連想してこのタイミングで観てみようと思ったからです。これも70年代のアメリカの映画だかTVドラマだかを80年代にオペラ化した作品で、ちょうど10年前の映画のオペラ化であるあっちと共通してますしね。
こんなん観て育ったら、そりゃこういうの作りたいと思うわけだー。すごい納得した。がんばれ新作デンマークオペラ。おんぶコンビ時代は年一作のペースで製作されていたが、次のシーズンからは一体どうなるんだろう*4。それにしても私は古いTV放映とかばっかレポしてないで、ディスクリリースしてる盤について書けよって感じですね。
Andy Pape: HOUDINI THE GREAT
Libretto: Erik Clausen
Lise-Lotte Nielsen, sopran, Stig Fogh Andersen, tenor, Gurli Plesner, alt, Jørgen Ole Børch, baryton.
Dirigent: Svend Aaquist Johansen.Instrumentation: Vocalists: Sop, Alto, Ten, Bar. Ork.besætning: Tr, Perc, Guit, Guit / Basguit, Acc, Synth.
Premiere: 1989-03-04, the Royal. theater
Duration: 01:05:00
試聴出来るサイトがありました。是非お試しを。
http://www.chesternovello.com/default.aspx?TabId=2432&State_3041=2&workId_3041=22513
Fanfare and Prologue from Houdini the Great | |
'The Women's Song' from Houdini the Great | |
'Come closer, ladies and gentlemen' (Houdini) from Houdini the Great |