ジークフリート@上海

控え室のジークフリート


行ってきましたよー!ジークフリート@上海!!夜ホテルに帰りついて興奮さめやらぬまま書いてます。

えっとですね、全てをすっ飛ばして一番最初にこれ書いちゃいますが、一幕後の幕間に楽屋を訪ねて、アナセンに会って、お花を渡して、サインもらって2ショット撮ってきちゃいました。うーん、文字にするとなんかすごいぞ。元々は直接渡せるとは思ってなくて、日本みたいにガード固いかなと思ってて、劇場のスタッフに託すつもりで、そのために同僚に頼んで中国語で「これを・・・・さんに渡してください」と書いてもらったカードを用意してたくらいなんですが、幕間にスタッフに声をかけたら「ついて来て」って言われて、一般客立入禁止のエリアにすっと入って、あらどんどん行くわーと思って着いて行ったら、なんと本人の控え室に到着してしまいました。途中アルベリヒの人とすれ違ったり、オケメンバーがいっぱいうろうろしてて、みなさん何故かバナナ食べてたりしました。アナセンの部屋の机の上にもかじりかけのバナナがありましたが、幕間の定番として配られてるんですかね?

幕間にお邪魔したんで、全然込み入った質問なんかは出来なかったんですが*1、コペハンリングを見て感心したよって話と、これを見せて日本でオペラファン増やしてるよって話をして*2、今年の冬コペンハーゲンに行くよって言って、今度ミュンヘンジークムントを歌う予定がある*3ってことを聞いてきました。会って思ったのは、意外と大きくないですね。元々身長がめちゃくちゃ高い方でないことは映像で知ってましたが、横にすごい大きいのかと思ってました*4。その辺によくいるお腹出てる人くらいでした。あとアナセンのことやたら不細工扱いしてましたが、もう止めます。今度からカメラ映り&ビデオ映りのやたら悪い人として扱います*5 *6 *7。で、間近に見たアナセンはプリティーでした。つーかあの60歳は、どう考えてもおかしいだろう。生物の法則を無視しないで頂きたい!!!*8 *9

もちろん写真あるんだけど、今の心境は、自分だけのものにしておきたい:みんな見て見て!:アナセン可愛いよアナセン!=3:6:1ってところです。


えっと、パフォーマンスですね、昨日も思いましたが、この劇場はやっぱり響きが足りないです。国内のホールで無い無いと言われてる京都コンサートホールよりもさらに全然無い印象です。諸事情で一幕は1階の後方で立ち見、二幕から1階前方の席に座って聴いたのですが、これで昨日の最上階の3階と合わせて3箇所で聴いたことになりますが、1階の前方で直接音を聴くのが一番満足出来ました。ここに来てはじめてやっと心地よい音が部分的に感じられるくらいで、他所のホールみたいに、ちょっと離れてまろやかになるとか心地よい響きになるとか、そういう効果は全くないと思いました。帰ったら日本のホールにもっと感謝しようと思いました。残りの日程の3階席どーしよ。頭痛い。

パフォーマンスについて書くと言ってホールについて書いてしまいましたね。悪い癖です。でもこれ先に言っとかないと以後の評価がフェアじゃないので。そういうわけで音が大切な私にとってはかなり悪条件で聴いたことを前提に読んで頂くと、全然感心しなかった。さっそく思いましたよ、ごめんエッティンガー!って*10。うーん、あとは、いつも軽妙な演奏を好んで聴くので、ドイツ風の音に慣れてないってのもあると思います。そっちが王道だと思いますが、すごく偏ったものを基準にしてしまってる者視点の戯言ということで。一般には「このくらい聴ければ満足」なのかもしれません。どうも私は自分にとって特別なもの以外を、平均点クリアしてるものも、かなりダメダメなものも全て一緒くたに「どうでもいい」カテゴリに入れてしまっているような気がします*11


歌手ですが、まず書いておきたいのがミーメのMartin Koch。この人ならジークフリート歌ってもいいと思いました*12。もともと若くてスマートで全体に小さめで、さらにドングリ頭にずるずるルックでぴょんぴょんしながら出てくるのでお猿さんみたいな印象です*13。で、声と歌唱スタイルが可愛いらしい。割と達者なところもあって、2幕の毒薬の本音を言ってしまうところの笑い声なんかコミカルでうまいです。

アナセンですが、私は満足しました。彼としては調子悪くなかったと思うし、あのニュアンスも目の前で実際聴けて良かったです。声の聴こえ方とかも、録音と違和感ない印象でした。2幕の私の大好きなところで「え?私さっきオーフスのこの箇所が好きだって言ったっけ?」と思うようなことが起こって驚愕したりして*14。要所々々でこっちをズバリ見ながら歌ってくれるのですが、そりゃこんな位置に座っててさっきのことがあればそりゃそうだと思って「自意識過剰」とか考えてワタワタせずに有難く受け止めました。つーか彼にとってもここが要所なんだなーと思って、自分の思う箇所と一致してて嬉しかったです*15。あ、でもここで思い出したことがあるのでひとつ書いとこ。過去のジークフリート訳者のみなさん、ein Menschenweib! は「人間の女」ではなくて、日本語にするなら「女の人――――!」ですから。ここで思慕の対象が、母親から(まだ見ぬ、彼のパートナーとなり得る)女性に切り替わるわけです。

ただね、声のサイズはやっぱり他の歌手より一回り小さいんですよね。で、ラストのカーテンコールで3階からブーが出まして、昨日の感触から言ってこのサイクル全体を通してブーが出るのはたぶん彼だけじゃないかと思うんですが、ここは他の歌手もみんな上の方では聴き辛いから*16、アナセンだとよく聴こえなかったんじゃないかな。ヴォータンのグレムスリーも前で聴いた感じでは小さめなんですが、声質とか高さの関係で彼は上で聴くと大丈夫なんでしょう。私も3階で聴いた昨日は、彼だけ特別聴こえないという感じはなかったです。

上海大劇場は席数と容積は小さめなのに、なんか音がガチャガチャしちゃって非常に聴き難いんですよね。特に歌手の声が聴き難いから、プロセニウムがうまく行ってない可能性があるんじゃないかな。

そのグレムスリー・ヴォータンですが、声とスタイルは正統派ヴォータンて感じでピッタリなんですが、ちっと声のサイズが小さめで大人しく聴こえちゃうポイントが惜しいかなあ。ただ舞台姿は非常にスマートです。現代読替演出なので半白髪のオールバックにスーツとコートスタイルで、やたら若いヴォータンになってしまってました。トレードマークのあのロン毛は切られてしまったのかと心配しましたが、後で私服姿を見かけたところ、ちゃんと後ろに長いしっぽが着いてました。うまいこと隠したもんです。

ブリュンヒルデは、パワフル系統ではないものの、癖が無くて聴きやすい感じで好印象でした。

アルベリヒとファーフナーはよく覚えてません。意識が別のところに行ってたものと思われます。

あとエルダは良かったです。エルダのここのパートって、低音で節回しが難しいのか、どの人でもわりかし気になる箇所があるんですが、そこもうまく行ってたし。


演出は、2回目の鑑賞レポのときに時系列で詳しく書くつもりですが、良かったと思います。(1)扱ってるモティーフそのものは廃墟とかゴミとかで、決して綺麗ではない、むしろ汚いものばかりなのに、照明や配置の絶妙さで舞台全体としては綺麗な瞬間を見せてくれる、(2)特に奇抜なこともせずちゃんとドラマに則った展開をする、(3)表面的で安直で小賢しくて気に障ること*17をしないという点で、ちゃんとした人のまともな仕事だと思いました。

*1:そもそも私の込み入った質問というと、初対面の人にいきなりするのは憚られるようなものばっか思いつくしなあ。

*2:本当にコペハンリングを見て、オペラ行ってみたいって言い出して実演初鑑賞に行った知人がいる。

*3:コンサート形式。正確にいつなのかは忘れたらしい。

*4:横じゃなくて前後に大きいという説も。何故あんな変なバランスなんだ。

*5:それはなにかマシになったのか?

*6:いやだってコペハンワルキューレとか出回ってる写真とか本当に本当にひどいんだもん。このblogではマシな画像しか紹介してませんて。

*7:つーかある年齢を超えると、舞台メイクがものすごくしわを強調するし、上からのライトには耐えないと思うのだ。何故DKT常連のコペハンDVD感想には「彼はとても若いのに」的なニュアンスが入るのか実によく分かった。

*8:その基本的に若い顔型に年齢相当のしわが入ってるからミスマッチですごく珍妙に見えるというのがアナセン問題なのだが。←また勝手な造語を作った。アナセンプロブレム。

*9:ちなみにたまにテレビを見ると、男性の逆パターン(顔立ちが年齢相当なのに、肌が妙に人工的に若い)が目について、これまた珍妙だと思う今日この頃です。女性については色々と人工的な顔を見るのって慣れてるけど、男性についてはこれまでなかったから慣れてないのだろうな。しかしこの余談長かったな。ついついこういうことを考えさせるのは止めてくれー。

*10:以前新国で鑑賞した際に一言で切って捨てたことを懺悔する言葉。

*11:ただ、歴史的名盤とかその手のよっぽど稀なものと比べてそう言ってるわけじゃなくて、日本の地方都市でそこそこ当たるレベルの演奏なんですよ、比較相手は。

*12:なんだその感想は。いやジークフリートに関してはピンポイントの芸風以外を認めないわけじゃなくて、やっぱりある特定の系統、しかも最近のバイロイトが採用したがるような系統がダメなんだと再確認出来ましたということで。現実問題、歌えるかどうかも大きいんだと思うし。

*13:ほらね。http://www.bach-cantatas.com/Bio/Koch-Martin.htm

*14:オーフスのレポを公開してないから意味不明ですね。

*15:私の聴き方はこの人に開拓されたから、当然といえば当然ですが。

*16:昨日のレポで書く予定。

*17:でもこれやると、多くの人にとって指摘しやすいせいか話題にはしてもらえるんですよね。で、それを見たstarboardがトサカに来るという。