黄昏&ワルキューレ@上海の鑑賞メモ

忘れないように。

  • 3階で聴くと、この劇場は、オケはまだ届くんですが、歌手の声が届かなくて、特に聴き難い。なんというか、声が空間を満たす感じが全くしないんですよ。これはちょっとなあ。んで、黄昏の最後にブリュンヒルデプロセニウムの手前まで来て、その後で暗幕が降りて舞台転換するシーンがあるんですが、このとき急にそれまでかき消されがちで聴こえなかったニュアンスが聴こえてきて「あー勿体無い」と思いました。あれを歌ってもらって聴こえてないってのは実に勿体ないですよ。
  • その後劇場スタッフの人と話す機会があったんですが、彼らも認識してるとのこと。この劇場は普段はバレエをやっていてオペラは滅多にやらないそうです。今回座席数の関係でこの劇場を使うことになったが、音響面では良い選択ではないとのこと。
  • 基本的にはプロセニウムの後に大きな空間があり過ぎて、舞台の音が拡散してしまうらしい。こういうときこそ小野さんの本の出番ではないですか。
  • この劇場ではどの歌手もパワフルな印象は全くないんですよ。そんなわきゃないので、実に勿体ないと思うのですが。
  • 宿題になっていたライアンですが、基本的に私の評価はそのまま。彼の声は私にとっては甲高いダミ声なんですよ。人の感じ方はいろいろなんで、私にはそう聴こえるって話ですが。でも2回とも客ウケは実に良かったですね。黄昏の2回目のハイホーとかを長ーく引っ張ってたりしましたからね。ただあそこもちゃんとした箱で聴けば、もっとすごい印象になるだろうに、勿体無いことでした。あとそうですね、小鳥真似のシーンとか、高音を丁寧に頑張ってたと思います。ディクションも頑張った。この高音で意識しながら声を作ったりしてるときの方が、普段のダミ声じゃないのでいい感じです。細部の処理は成長してるんじゃないでしょうか。
  • あ、ちなみに見た目は、プロフィール写真100%でした。バレンシアのときに書いた通り、髪型と衣装によってはバケる人ですが、今回は両ロールとも地頭でプロフィール写真100%でした。つーか剃り込みとカールが進行してた。容赦なくカツラを使わない演出だからな。
  • 他の歌手については、なんか最後の自己犠牲のプロセニウム前と後の変化を聴いちゃった後では、もう1回聴かないと書けないって心境ですねえ。この環境は全シンガーにとって不利だったと思います。他の劇場の印象と比較して語ったらいけない感じです。
  • 黄昏は何故か2幕までは全然聴こえて来なくて、合唱が入っても全く迫力がないのは嘘でしょーと思っていたら、何故か3幕のラインの乙女達から比較的良くなりました。音楽も3幕からよくなったかな。ただ和音の入りとか合ってないことが多かった。
  • 演出については、黄昏まで見てもやっぱり最初に書いた印象通り。いいと思います。具体的にどのシーンがどんなかは2回目の鑑賞後に書きます。基本的に何か付け足したりはしないんだけど、割と登場人物の触れ合いが多い感じが新鮮だったかな。
  • 特筆しておきたいのが、ワルキューレ2幕3場(ジークムントとジークリンデの逃避行)の美しさですね。雪原に壊れたジープが放置されてるだけなんですが、風に吹かれて自然に凸凹が出来た雪原の表現に幕が上がった瞬間、はっとしました。前の列で寝かけてた人も起きて集中し出したから、ここ普遍的に良かったんだと思います。この演出はセットと照明がいいですね。
  • あと全体を通して思ったのは、またコペハンと比較してすみませんが、なんというか、エモーショナルじゃないんですよねえ。ワルキューレのホヨトホとか、あっちは2幕も3幕も実にエモーショナルですもん。そこで感情の解放がある感じ。テオリンのコペハンのホヨトホが結構好きなんですが、天に伸びるようにバーッと出し切って、そこで気持ち良さそうに笑うんですよね。あれはクラクラ来ますね。でもこれは、ない方がスタンダードだと思うので、別にケチつける話じゃなくて、この鑑賞がきっかけでこのことを自覚したってことです。