Sangen Har Vinger

コペンから帰って以来ずっと聴いているのが最初の夜にお土産にもらった新譜である。メジャーレーベルのようにCDをPC系の再生ソフトに突っ込むと曲目を表示してくれたりはしないので*1、曲目リストを入力しておきました。使う方は使ってください*2。タイトルの"Sangen Har Vinger"は「歌の翼」で1曲目のタイトルからとってある。基本的にはお馴染みデンマーク作曲家の作品群で、最後の2曲だけドイツ系。選曲のせいなのかアナセンのせいなのか*3とてもポップス調で、「オペラ歌手の歌ったクロスオーバーアルバムっぽさ」すら希薄で、普通の喉声の歌手が歌う映画のサントラ?童謡かフォークを集めたアルバム?かなにかじゃなかろうかと思うような雰囲気が漂っている。間にルース・フィルハーモニックによるオペラの前奏曲が3曲入る。私はここの演奏は好きである。

http://cdklassisk.dk/images/CDK1052.jpghttp://cdklassisk.dk/product_info.php/products_id/5149
SANGEN HAR VINGER (CDKLASSISK CDK1052)
Stig Fogh Andersen / Niels Borksand / The Ruse Philharmonic Orchestra

  • Emil Reesen: Sangen har vinger (3:02)
  • Emil Reesen: Den, som har livets mildhed søgt (4:33)
  • Emil Reesen: Livets glæder (4:19)
  • Carl Nielsen: Så bittert var mit hjerte (3:28)
  • Carl Nielsen: Min pige er så lys som rav (2:04)
  • P.E. Lange-Müller: Serenade (4:42)
  • Peter Heise: Drot og Marsk / Ouverture (11:31)
  • Peter Heise: Dengang jeg var kun så stor som så og (2:33)
  • Peter Heise: Kom nu kun død (3:22)
  • Desuden Friedrich Kuhlau: William Shakespeare / Ouverture (12:33)
  • C.E.F. Weyse: Skøn jomfru, luk dit vindue op (2:46)
  • C.E.F. Weyse: Hyrden græsser sine får (3:55)
  • Edouard du Puy: Ungdom og Galskab / Ouverture og som extra bon-bons (8:37)
  • W.A. Mozart: Dies Bildnis ist bezaubernd schön (4:02)
  • Franz Lehar: Dein ist mein ganzes Herz (3:13)

まず聴いて思ったのは、「名人芸」調じゃない!!!また外された!!とても普通に、素直に、ある意味とっても分かりやすく、しかしある意味全くクラシック声楽っぽくなく、「分かりやすく上手く」なく(?)歌っている。これはあれだ、あれそのものだ。

http://findarticles.com/p/articles/mi_qa3760/is_200004/ai_n8882824/

Was his style rugged and sturdy? Smooth and fragile? "The big forms were quite rough, but within that I like very delicate lines," he says. "I like that contradiction."

なんというのか、彼はもともとそういうところがあるのだが、今回は特にそれが顕著で、たぶん初聴だと「この人って上手いの?」と思わせるなにかがあるのだ。多くの人がやりたがるような「聴かせどころ」的な声の誇示もしない*4。全く分かりやすくない。なのに変な話、彼の歌の進行に馴染んでしまうと、色んな人のピッチの不正確さとか処理の雑さに気付いてしまって、他の人が聴けなくなるような、そういう種類の正確さとデリケートさがあるのだ。また今回も裏の裏をかかれてしまった。何度外されてしまうのだろう。もちろん、進行の中で、ビッグフォームが作り出すラフな波にノッていると「突然、しかしソフトに」落とされるのも外されるのだが。

個々の曲に対する初印象。レーセン(リーセン?)の表題曲は元気にはじまる。やっぱクラシックぽくない。何に似てるかというと、やっぱり子供向けコンテンツのタイトル曲だ。2曲目は何故か泣いてしまう。何故なのか分からない。3曲目、すごく馴染みがある。映画で使われていたのだろうか。4曲目のニールセンは口ずさみやすそうな素朴な歌。やはり映画で聴いたような。5曲目も口ずさみやすそうな弾むような歌。これも映画になかったかな。ニールセンの歌曲は実は映画によく使われているのだろうか。6曲目、お馴染みランゲ=ミュラーのセレナーデ。これは他の歌手がどう歌うかを知っているので、それと対比すると本当にラフに歌い出すので驚くけど、進行するうちにデリケートさが勝って来る。何故だあ!7曲目、重厚な導入部に哀愁漂うメロディーが続くのキング&マーシャルの前奏曲。同じハイセだけど一転してトボケた曲調になる8曲目。これは唯一先日のライブで聴けた曲だ。十二夜の5幕1場の道化の歌。続くハイセの9曲目も映画で聴いたことがある気がする。雨の振る路面のイメージと結びついている。何だろう。10曲目、クーラウによるシェイクスピア前奏曲。DRもよくこの作品から色々演奏するなあ、そういえば。一度通して聴いてみよう。11曲目、お馴染みヴァイゼの「窓を開けて」。やっぱりラフでデリケートだ。おかしい。そういえばこのキャラクターはハンターであって、どこぞの御曹司ではないのだった。12曲目もヴァイゼで羊飼いの歌。全くノホホンとラフにはじまるのに、哀しい。13曲目、ドュ・パイ「若さと愚行」の前奏曲。ルース・フィルやっぱりいいよな。全然話題になってるの見た(読んだ)ことないけど。14曲目、タミーノのアリア「なんて美しい絵姿」。なんてこったい!この60歳の巨大トトロは一体何をやりだすんだ。支えるルース・フィルがやっぱいいと思う。最後、レハール、いかにも締めくくりっぽい曲。でも間の転調するとこがエキゾチックになってゾクゾクする。

どうでもいいおまけ情報であるが、Wikipedia:フランツ・レハールによると、この人はsoraさん好きしそうなおめめクリクリふっくら外人さんであった。メリー・ウィドゥの作曲家。

*1:一言で言うとCCCDに登録されていないので。

*2:いないって。

*3:もともとこの人は、オペラを歌っても何かオペラっぽくない雰囲気に仕上がる人であった。

*4:私はこれは、「よーーーーーっぽど正確な人がよーーーーーーっぽどうまく決めたとき以外は」椅子を蹴って帰りたくなるくらい嫌いである。