追記/私のジークフリートへ

こんな機会がないと出来ないアナセンの魅力語りしてみます。全部読むと目が疲れるよ!まずピッチが正確*1。言葉と一体化した表現。そこから生じる圧倒的なリアリティ。人間理解と表現が精密で等身大で、誇張され極端になっていないこと*2。決して分かりやすい人間ではないキャラクターを、自分の隣にもいそうなリアルな人間にしてしまうところ。「迸る感情」を歌唱に乗せるところ。感情と一体化したリズム感。頑固なところ。オリジナリティもんじゃない、自分の内から迸り溢れ出てくるとしか言いようのない独特のやり方で表現して、それを貫いているところ。天才肌の孤高の人です。彼は持って生まれた声とか、身体的なものはそんなに恵まれなかったと思うのですが*3、センスが突出していたタイプの人だと思います。ボリュームレンジのすごく大きな、急上昇と急降下を繰り返す歌唱スタイル。決して一発目からスコーンと大きく入れずに、かならずソフトに入れて音の途中でボリュームコントロールすること。一旦大きく入れた音を決して手放さず、同じようにボリュームコントロールして終わること。全ての瞬間に神経が入ってるとこ。矛盾を愛するところ。ビックフォームのラフな進行の中に、ありえないくらいデリケートな要素を忍び込ませるところ。しばし彼の作り出すラフな波にノッていると「突然、しかしソフトに」振り落とされる瞬間。外されて、外されて、焦れて、渇望する瞬間。絶妙な抜きの表現。全幕を通した圧倒的な完成度。あんな風に、熱を込めて全幕を完璧に歌いきる人を私は知らない。歌手の存在を忘れて、キャラクターがその場にいるように思わせるところ。無駄にアスレチックなとこ。さて、この辺に入れておこうかな。ご結婚おめでとうございます。末永くお幸せに。夢と希望に溢れたキャラクターと作品理解。疑うことを知らないヒーロー*4そのものであること。甘酸っぱい理想を身勝手にしないで表現する不思議なバランス感覚。サンタクロースのような体型なのに少年を感じさせるところ。ときどきくれる倒錯感。セックスアピールが徹底して抑制されていること*5。愛嬌が服を着て歩いてるような本人のキャラクター。絵に描いたような無邪気さ。信楽の大狸のような体型なのに幼児体型(永遠の謎だ)。懐きたくなるお腹。スリスリすると「ハッハッハッ!」ってサンタさんみたいに笑うこと。私服の趣味が死ぬほどダサいこと。何年も前にどっかからもらったロゴ入Tシャツを一張羅にしていて、撮影付インタビューに着てきてカメラマンを困らせること。何をやっても可愛いこと!!!

ええ可愛いかどうかは、中身に何が入ってるかによるんですよ(←力説)。ところでこの記述は過剰じゃないんですか>starboardさん。

*1:これが1個目かって項目ですが、これが筆頭です。

*2:極端に誇張され分かりやすくしたものって通じやすいんだと思うし、というかそうしないと通じないのだとも一般受けのためには必須なのだろうとも思うのですが、そういうところが気になってしまう性質に生まれついてしまった私としては、どうも素直に受け取れないのです。ひねくれた感受性なんですけどね。こんな言い方をしなくても、単に合ってるってことなんでしょうね、彼の表現と自分の丁度良いと思うポイントが。

*3:それもトップクラスの歌手間の比較の話ではありますが。

*4:と書いてジークフリートと読む

*5:私はこれがダメでテノール全般がどうにもダメなので。上記の誇張され極端になったものがダメという性質と共通するかもしれません。誰にでも分かるくらい顕わにされていたら過剰なのです。抑制されたところに微かにあるからこそ倒錯感に繋がるのです。