ブラヴォ!アイーダ@びわ湖ホール

素晴らしかった!!予想をはるかに超えて素晴らしかった!!どのくらい素晴らしかったかって、思わず一幕が終わった瞬間にチケットカウンターに走って明日のチケットを購入してしまったくらい素晴らしかった!こんなことしたの初めてです。こんなに素晴らしい公演なのに前日までに完売してないなんて信じられない!でもおかげでチケット購入出来て良かった。ラッキー!このブログを読んだ人は明日のびわ湖ホールに走れと言いたいところですが、一幕後の幕間の時点で残り十席程度で、私はその後も友の会入会のために計3回カウンターに行ったのですが*1、いつ行っても人が並んでたので、このブログでプッシュするまでもなく完売したと思われます。ご盛会おめでとうございます!!

何が良かったって、魂が入ってるって、こういうことを言うんでしょうね。特別!「特別」を感じた。そういう種類の良さです。ブラヴォどころじゃなく、関西で良く見かけるブラビッシモおじさん*2みたいに「ブラビッシモーーーーー!!!」と叫びたい気分でした。私が日本で体験したオペラ(来日公演を含む)でぶっちぎりで一番なのはもちろん、海外体験含めても相当良かったと思います。最近このブログは書き手の特殊な嗜好のため「あいつが絶賛してたら避けた方がいい」ポジションになっているのではないかと懸念するので念のため書いておきますが、幕間や終了後の聴衆がみんなニコニコしてて、「いやー、本当に素晴らしいねー」的な会話があちこちから聞こえてきました*3。そこにいる人がみんな幸せそうな公演っていいですね。


さあ。そして。いやー。オケがいいって、いいですねー。どの瞬間をとっても音がいいんだもん。こっちの気分が全然違うわ。勢いも。歌手との相乗効果も。もちろん小さなミスとか無いわけじゃないですけどね。そういうことじゃないんですよ!京都市民として誇らしく思います!来年度の予算、もっと分配してあげてください!


そして、歌手のみなさんが素晴らしかった。明日も公演ありますが、完全ダブルキャストなので全部書いてしまいますが、まずなんと言ってもアイーダの並河さんが良かった。ソプラノ音痴を自認して2年以上もそこから抜け出せなかった私ですが、ソプラノのアリアをこんな風に聴けたのは初めてかもしれません。一幕の「勝ちて帰れ」は本当に心に訴えてきて、実はこれが始まる直前の若手3人の場面では、声そのものの持つインパクトや劇場での通りやすさなどの主に物理的な問題で、やや弱いかなという印象すらあったのですが*4、素晴らしい表現力で、思わずアリア終了後にブラヴォが出てしまいました。本当に、意識すらせず、思わず出てしまった。それに、なんだろ、声が真っ直ぐダイレクトに自分に向かって飛んで来るような感じがあって*5、特別でした。この方のこれで私はチケット買いに走ったと言っても過言ではありません。ダブルキャストなんで明日もう一度は聴けないんですけど。幸い関西中心に活躍してる方のようなので、以後マークして聴きに行こうと思ってます。念願のソプラノ音痴脱出のきっかけを日本人ソプラノがくれたことに多いに感謝します!

そしてラダメス。まず声質が良かった。こういう書き方から始めるのもなんですがボキャが無いので勘弁して頂くとして、惜しいところが全く無い声だった。逆に超貴重です。甘かったり輝かしかったりするような売りになりやすい声質ではなくて*6、強く真っ直ぐで男らしいタイプ。でも嫌なニュアンスは全然入らない。すごく自然。発声も含めてすごく自然。あ、そう、あれだ。「嫌なことしない*7」。表現も、一箇所にものすごいなんかを込めるタイプではないですが、終始場面に対して自然で良かったと思います。

アムネリスは、小山さんを生で聴くのは2度目ですが、やっぱり心地良い声ですねえ。この人が歌うと女性のたおやかさとでも言うべきものが出る気がします。声も歌唱スタイルも良いのでつい贅沢を言いたくなってしまうのですが、贅沢を言いたくなるのは上述の2人のせいもあるのですが、だから決して不満ってことではなく贅沢系の要求なんですけど、先日のトリイゾなども思い出しつつ言うと、表現がもうちょっとだけ何かが加わると本当に言うことないのになーと思います。上手い歌を聴いたって以上の、終わった後にガツンと残って離れないような。

あとアモナズロ役の黒田さんの存在感が良かった。2幕の存在感はすごかった。この人もまた聴きたい。今日はまた聴きたい人がいっぱいいて幸せだなあ。

全体に、本当にレベルが高かった。一体何が起こったの?ってくらい。エジプト国王も伝令も良かった。強いて言えば、ランフィスが音程がずり下がり気味なのが気になった。


あとは、巫女が良かったなあ。これ録音で聴いると聞き流してしまうパートなのですが、今でも耳に残ってる。一瞬、コーラス?と思ってしまった。そのくらい「普通の声とは違う何か」感があった。キラキラしてたし。舞台には出ないで影歌で登場するのですが、その影歌の演出(音響)もたぶん何かしてて、例えば4幕の裁判なども影歌なのですが、それぞれ全然違うんですよ。巫女の歌はちゃんと神がかっていて、裁判の場の影歌は、この場面はアムネリスだけが舞台にいて裁判はその向うの見えないところで起きているという演出なのですが、セットのその向うから聞こえて来る感じがちゃんとする。すごく自然。でも無自覚にやってああはならないから、ちゃんと意識してやってるんだと思います。びわ湖ホールのこういうところのきめ細かさは、本当に賞賛に値します。


演出は、これぞグランドオペラ!って感じでしたね。たかだかS席1.5万円でこんなものかけていいのでしょうか。まあオペラは何処もやればやるほど赤字なので、元々チケット代で元をとろうとは思っちゃいないのでしょうが。バレエも豪華で、ちびっ子バレエもあって、ダンサー・合唱の数も多く、どれもこれも素晴らしく、バレエが終わった後の拍手がすごい勢いで塊のようになって通り過ぎて行ったのには吃驚しました。オペラで、アリアの後の拍手ならともかく、バレエの後であんな体験したことないよ。セットは同じ部材の使い回しなどをしてて(金に黒のぶっとい柱がほぼ全幕出てくる)、見た目の満足感の割に頑張ってるのかなと思いました。あと2幕1場のアムネリスの部屋のセットが効果的だと思いました。演出の粟國氏は名前と顔はあちこちでお見かけするものの作品を見たのは初めてですが、さすがだと思いました。上記のように観せる要素をちゃんと確保しつつ、全幕で暑苦しく頑張り過ぎない点に、センスを感じました。「抜き」ってセンス出ますよね、抜いていいところが分からないとダメ=全部分かってないとダメですから*8 *9。感心したことはいっぱいあって、上に書いた裁判の場のような舞台の外を使うのが上手くて、照明と歌手の演技で舞台の外をリアルに感じさせてました。あと、最後の地下牢に閉じ込められるところで、牢の蓋と思われる大きな石細工を何人もの人間でゴロゴロ引いて行くシーンから始めるのは、シンプルながらそれだけでこのシーンを説明しきっていて、これから起こること・既に起こったことを想起させて、実に効果的だと思いました。

まだまだ書きたいことはあるのですが、明日の公演の後に。オケは違いますが、歌手と演出は同じ組合せで神奈川公演もあるそうです。この公演がこのチケット代で観れるのは、ものすごくお得だと思います。観ないと損ですよ!

2011年03月05日(土) 開演:14:00
びわ湖ホール プロデュースオペラ
ヴェルディ作曲 歌劇《アイーダ》(全4幕)
指揮:沼尻竜典
演出:粟國 淳
装置・衣裳:アレッサンドロ・チャンマルーギ
出演:並河寿美、永田峰雄、小山由美、黒田 博、佐藤泰弘、片桐直樹、二塚直紀、中嶋康子 ほか
バレエ:谷桃子バレエ団
合唱:びわ湖ホール 声楽アンサンブル、二期会合唱団
管弦楽京都市交響楽団

*1:注:普通は1回で終わる手続きですが、幕間で時間切れになる度に「また来ます」とやったので通う羽目になりました。

*2:今日はいなかった。

*3:ついでに(大きな声じゃ言えませんが)「この間の○○はなんだったんだろう」「これまでのオペラはなんだったんだ」的な声も・・・・<全力で同意。

*4:声質がメゾの小山さんと似ていたせいもあるかと。

*5:3階正面の後ろの方に座っていました。誰の声でもそうなる場所ではありません。

*6:でも実は私は甘い声が超絶苦手なので、その意味でも良かった。

*7:当ブログの筆者がテノールを聴いては「ここが引っ掛かる」「あそこがダメ」「アレが気になる」と毎度こだわっているポイント。音程のズリ上げ/ズリ下げ、狂ったまま引き伸ばし、レガートが狂う、うおぉぉぉぉと歌うなど。

*8:一番ダメなパターンが、思いついた箇所には目いっぱい詰め込むが、理解が浅い箇所は手付かずで残すという組合せ。

*9:そもそも全部分かってるのなんか当たり前だろうと思われるかもしれないが、分かってない演出なんかゴロゴロしている。