椿姫@兵庫芸文センター

これは良かった!最近の関西オペラ体験の充実ぶりにホクホクです。最近の椿姫体験の中では文句無しに最も入り込んで鑑賞出来ました。座席は、大好きなエリアである3階オケ横。なんで私ここ好きなのかって、声とオケが重ならず別々のところから聴こえて、聴き易いから好きなんです*1

まずオケが良かった。なんかこのオケは可愛らしい音がする。全般に弦が良い。もちろん指揮も。いきなり序曲の弦の抜き方が私好みだった。このオケはまた聴きたい。帰ってから調べたら運営方法が変わってるらしく、普通のプロオケというよりは奏者育成に特化してて、開かれたオーディションで選抜して3年でメンバーをどんどん入れ換えて行くというやり方らしい。そう言われてみると、ああそういう種類の良さかもと思う。

舞台装置はかなり簡素で、3幕を通して共通のセットに家具なんかの小道具と背景の画を変えて変化を付けるというやり方。一幕のシャンデリアが執念の手作りで涙無しには見れません。ちなみに3幕ではこれが一部よれっとして埃が被るのでありました。衣装は頑張ってた。ヴィオレッタの衣装・髪型が「これぞ椿姫!少女漫画家が描いた椿姫!」してまして、これはこれで、王道を極めた新鮮さを感じました。


椿姫の森さん。写真が美人なので全く期待してなかったんですが*2、申し訳ありませんでした!!素晴らしかったです。パワフルなタイプではないし、一幕の技巧的な部分に全く難が無いとも言いませんが、特に二幕で見せてくれた表現は素晴らしかった。今日はもうこれに尽きるでしょう。会場のあちこちからすすり泣きが聞こえてました。このすすり泣きの音があんまりにも至るところから聞こえてきたので、私は最初個々の客のすすり泣きの音とは思わず、なんか効果音でも入れてるのかと思ったくらい会場全体がすすり泣いてました。また、パパ・ジェルモンがいい人なので、余計このシーンのすすり泣きが来ましてねえ。幕間になっても泣いてる人が。女子トイレの列が涙の女性の列に。すごい!!もちろん私もホロっと来ました。パパの話を聞いて別れることを受け入れてからのところが本当に素晴らしくて、ここから立ち去る前にアルフレードと短時間だけ話すところまでは絶品でしたねえ。3幕も良かったです。あ、でも手紙の朗読をするところは、なんでそんな太い声なの?パパの真似?って感じで、うむ、意外でした。全体として、非常に非常に大変×3乗で満足しました。

パパは声が良い。暖かくて、この声だけで、ああ素朴にいい人なんだなーって思わせる声です。基本的に、善意のすれ違いが好きでリアリティを感じる私としては、パパはこういうタイプがいいです。歌唱としては極端な何かが込められていたり、すごく様式的だったりはしないと思いますが、素朴なキャラで良かったです。この役で達者過ぎて作為的だと、なんかやらしくなるから。

アルフレードは、素直な感じがして好感が持てました。そう、好感なんだよなあ。なんか、新国もCD/DVD鑑賞も*3別に悪かないけど好感が持てないってパターンが続いてて。この好感が持てないってのも、なんか声楽的にあることをやると私の反感センサーに引っ掛かるらしいのね。まだうまく言語化出来てないんだけど。閑話休題。素直で目の前のことに夢中で気が回らなくてってキャラが説得力ないと、2幕でヴィオレッタが去った後に逆上して追ってきて、あっけなく後悔するって展開が嫌で嫌で仕方無くなるんです。そういう部分が全く抵抗なく聴けたなあと。これは2幕のその部分の問題というよりはその前までの表現として。

あとは、合唱は良かったと思う。2幕のフローラの宴の場面とか、予算とか他会場との兼合いだろうけど*4ダンサーも合唱も少ないのに一定の満足感が出せてた。えらい。あ、でも、3幕で祭りの賑やかな合唱が通り過ぎて行くところは、舞台裏からの音そのままで、単にこもって聴こえない印象で、これがびわ湖ホールならすぐそこを通り過ぎて行く臨場感たっぷり or 風に乗って遠くの賑やかな音が届く寂しさ満点だろうに、なんて変な不満を感じてしまった。

男爵は、あれはないだろーと思った。子爵だか公爵だかのどっちかは普通でどっちかは男爵と似たか寄ったかだった。区別ついてなくてゴメン。これ、あまりにも私的にはナシなんだけど、一定の割合でこういう人いるので、しかも連続的でなくこういう人はいきなりこういう歌い方なんで、私が分かってないだけでこういう様式でもあるのでしょうか。

ヴィオレッタのとこの使用人(テノール)、この人が良かった。声そのものも使い方も良くて、すごいポテンシャルを感じた。使者も結構良かった。不言及は可もなく不可もなく役目を務めてましたってことで。

主役3人が良かったので、大満足の公演でした。土曜にも公演ありますが、完売だそうです。

オペラ「椿姫」 (全3幕・イタリア語上演・日本語字幕つき)
日 時 2011年3月10日(木)
開 演 14:00  (開 場 13:15)
会 場 芸術文化センター KOBELCO 大ホール
出演
森 麻季(ヴィオレッタ)
佐野成宏(アルフレード
青山 貴(父ジェルモン)
佐藤路子(フローラ)
木村孝夫(ドゥフォール男爵)
浪川佳代(アンニーナ)
藤山仁志(ドビニー侯爵)
直野良平(ガストン子爵)
大畑理博(グランヴィル医師)
合唱 新国立劇場合唱団
バレエ 貞松・浜田バレエ団
管弦楽 兵庫芸術文化センター管弦楽団

指揮 現田茂夫
演出 十川 稔
装置 枡平香織
衣裳 下斗米雪子
照明 矢口雅敏
振付 川村康二(貞松・浜田バレエ団)

*1:管弦楽でも解像度が高い状態を好む邪道者ですから。

*2:すんません、私は美人だと期待度が下がり、一般ウケから遠そうなルックスだと期待&肩入れしてしまう種類の人間です。

*3:順番が前後しますが、予習で観たDVDレポを近いうちにUPします。私的には不思議な経験だったので。すごい評価高い公演らしいんだけど、全く入れなくて。何故オペラファンが口を揃えて誉めるようなものがNGで国内地方公演がいいのか我ながら謎だ。でもこの好みはラッキー。もっと早く気付けば良かった。灯台下暗し。

*4:このプロダクションは、金沢、新潟、富山、福井で行われ、兵庫が最終です。