マスカレードに求めるもの ― 2015年のニールセン生誕150周年に向けて、ニールセン正しい理解キャンペーンを張ってみる ―

思い出したのでマスカレード話。自分がマスカレード序曲に求めるものは、滑るように滑らかで、軽やかで賑々しくて、からかうような遊ぶような感覚である。あのオペラのイメージでもある。こんなんそうそうある筈ないし、日本人が苦手とする要素でもある。要求が特殊過ぎるのかなと思う。馴染みの音源はランベルト・ガルデリの1986年のTV放送音源で、アナログ音源からの変換が悪くて音は全くひどいものだが、その音の悪さを補って余りあるものがある。しかし、こればかり聴いているから特殊なものを当然視してしまったのかなと思って、検証のために、いくつかのデンマーク音源を引っ張り出して聴いてみた(全て全幕音源の序曲部分)。そしたら、やっぱりある。これは絶対アレがある。これがエキスである。旨味であり、出汁である。これがないと面白くない。

と、そこで思い浮かぶのは、デンマーク音楽を注目して聴くようになる以前のマスカレード序曲だったりニールセンのイメージだった「華麗で流暢だけどそんだけ」みたいなイメージである。あれは、ひょっとして、そう思っても無理もない演奏だったのではないか。ニールセンは誤解されているんではなかろうか*1。そういえば昨日配られたプログラムにもこんな風に書いてある。

仮面舞踏会(マスカラーデ)はニールセンの第2作目の歌劇で、その序曲は豊富な主題と見事なオーケストレーションでスケールの大きな作品に仕上がっている。

「豊富な主題と見事なオーケストレーションでスケールの大きな作品」は、本当に聞いたのか怪しい表現である。別にスケールが小さいとか言いたいわけじゃなくて、これ聞いた感想がそれ?っていう。これはなにか間違っている。書くことが無くて困ってこう書いとけば無難と思って書いた文章みたいだ*2。というわけで、日本におけるニールセン 誤解払拭 正しい理解キャンペーンのために、お薦め音源へのリンクを貼ってみる次第である。序曲じゃなくて申し訳無し。近いうちに序曲も切り出して用意しよう(←用意しました)。
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もひとつ、マスカレードで思うのは、デンマークのマスカレード演奏は壊れたレコードのように演奏する部分がしばし入るのだが、あれは一体なんなのかということだったりする。演奏者によって違うところでやってる気がするのだが、近いうちにどこでやってるか確認してみなければ。と書かないと忘れちゃうのでメモ。

しかしまあ、日本で壊れたレコードやったら聴衆から理解されないだろうなあ。難しいところである。しかし日本のオケには懲りずにニールセンに挑戦して欲しい次第である。次はマスカレード2幕の前奏曲とかどうすか?これは日本でやっても大丈夫だと思う。

ニールセン関係では極めてピンポイントの細かすぎる要求(殆どいちゃもんレベル)をしたが、そんだけ書きたくなるような演奏だったということで、これが何も感じなければ、そもそも書く気にならないか、書くことないよと思ってしまうだけなので*3、そこんとこはよろしく。

追記

これ書いた後でオペラ全幕の序曲として演るのと、オーケストラピースとして単独でやる場合の慣習の違いもあるかと思ったりもした。マスカレードの序曲だと単独でかなり流通してるもんね。つーか一般には全幕聴く機会なんてまずないか。ああオペラから入った人はそうなんだーくらいに読んでください。

*1:何をいまさら。

*2:もっとも、クラヲタがプログラム読んでそう思うのは全く珍しくないらしいので「何を今更」かもしれない。

*3:そう思ったときにしばしば引用した文章のようなことを書きたくなるのは内緒である。