建て替え計画「白紙撤回し議論を」建築家が問題点指摘@毎日新聞

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京都会館:建て替え計画 「白紙撤回し議論を」 建築家が問題点指摘 /京都
毎日新聞 2011年10月18日(火) 

 ◇左京でシンポ

 京都市が第1ホールの全面建て替えなどを打ち出している京都会館京都市左京区)について、適切な保存・改修の在り方を考えるシンポジウムがこのほど、同会館会議室であり、約90人が参加。第一線の建築家らの話に耳を傾けた。【野宮珠里】

 基調報告では、劇場建築に詳しい建築家の上西明さんが「古いホールの再生には、その建築の歴史的意味、在り方を十分理解し、ホール建築としての課題に取り組みつつ、都市の文化遺産として使われ続けるべきだ」と述べ、市の再整備基本計画を検証。ポピュラー音楽や吹奏楽で多く利用されている第1ホールの現状を説明した。

 さらに、世界のトップクラスのオペラ上演が東京に集中する一方、規模の小さい海外オペラが地方を巡回している実態を指摘。今後の基本設計の前提となる市の基本計画に対し「第1ホールを世界水準のオペラ巡回ができるよう全面建て替えする、という結論は適切だろうか」と疑問を呈した。

 また、東京の国際文化会館再生に携わった建築家の鰺坂徹さんは「建築の改修では元の設計者や職人らへの敬意が大事。新しいものを加えるのは1%程度」と述べた。「京都会館再整備をじっくり考える会」事務局長の西本裕美さんは「海外の一流オペラが来てもチケットは5〜6万円になり、誰のためのホールか疑問だ」と述べ、市の計画策定の経緯の不透明さなどを批判した。

 パネルディスカッションでは劇場建築を多く設計してきた山崎泰孝さんが「建設後は維持管理費に何億円もかかり、貸館の代金に反映される恐れがある」と指摘。京都大名誉教授の前田忠直さんは「人間にとって一番大切なものは空間。京都会館の中庭の空間は『聖域』であり、絶対につぶしてはならない」と強調した。

 「京都会館を大切にする会」代表で建築家の吉村篤一さんも「二条通から第1ホールのロビー、その奥まで見通せる『透けた空間』は、日本の伝統建築の特徴を現代建築で見事に具現している」と指摘。「今回の改修計画を白紙に戻し、『市民のための京都会館』はどういうものかを議論することが必要」と声明を読み上げてシンポジウムを締めくくった。

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 第2回シンポジウムは12月18日(日)午後1時から同会館で開催予定。