マンチェスターのサンタ(2)

昨日の続きです。と、その前に、昨日あんなことを書いたら、タンホイザーのDVD面白くないみたいじゃないですか。ちゃんと、いつも通り面白いですよ。ただ、コペハンリングの奇跡と比べちゃうから分が悪いだけで。だってDKTの後に観ちゃうと、例えば、放送とかDVDで触れられる舞台映像が、すごく間延びして見えるもの。あとレビューを調べたりして思ったんだけど、リングのときも最初からすごかったわけではなく1周やってサイクル上演してすごく深まったという面もあるみたいなんで、私はタンホイザーの再演は、DVD以上に良い舞台が観れそうで、逆にものすごく期待していたりします。


そんなこんなで話はDKTの舞台のことになり、今年のパルジファルの話題になりました。KYなstarboardが例のごとく「ウォーナー演出は好きじゃない」とか言い出したりして「アイディアマンだけど全体的な理解に欠けている」「観終わった後は空っぽ」だとか好き放題言ってます。「ボクが教えるから大丈夫だよ」って、あら?否定しなくてもいいの?な返答が。でもこの会話の後で思ったんだけど、DKTならうまく行くかもしれないと私は考え直してたりします。だってDKTの歌手は、ものすごい主体的に考えて動くのに慣れているから、ジャスト・アイディアを継ぎ合わせただけの演出に意味を与えることも不可能ではないかもしれないし、音楽を読んで体を動かす能力*1もすごいから、彼の欠点が丁度補えて、練れた舞台が出来るかもしれません。音楽を読んで体を動かすって、これ当たり前のようで全く当たり前ではないんですよ、演技が天才的とあえて言われるようなオペラ歌手の水準を、劇場全体で達成してしまっているのが、DKTのあの演劇的な舞台の秘密だと思うんです。ただ、私としては、ホルテンほどの天才じゃないにしても*2デンマーク国内の演出家の方がいい仕事をしてるのになあ、って残念な気がします。デンマークの中の小国意識と、海外のビッグネームの方がすごく見えて自分達の良さに気が付きにくいところが、日本とすごく重なって見えるんですよね。これはDKTのマネージメントとか観客の素朴な反応の話ですけど。まあ、分かっててもチケットの売れ行きと話題作りには名前が必要なのかもしれませんが。


あと何の話をしたかな、幸福のヴェールの話をして、コペハンリングを観てアルコール中毒みたいにリング中毒になった話とか、それはとても不思議な体験で、歌と音楽という様式と制約があるのに、私達が普段話すようにナチュラルに話す映画やドラマよりも、様式と制約があるオペラの方がずっとリアルだったという話をしてて、何故かアナセンにはずっと問題なく通じてて、彼はときどきイングリッドに解説してた*3。この話は、通じる人の方がよっぽどおかしいと思うんだけど。


アナセンそんなに言葉が多いわけじゃないのに、割と人の心を読むというか、いきなり突っ込んだ会話が出来て通じる不思議な人だ。笑うとき、口の端がニッて持ち上がって、それからパカッて割れて満面の笑みになるんだよね。

またいっぱいスリスリして*4、それから2人は今度は観客席で舞台を観るために階下に降りていって、私はさっき座らなかった反対サイドの座席で鑑賞すべく上に移動しました。

*1:というかそういう観点で組織的にトレーニングされた結果?

*2:彼はアイディアもすごいよく考えてあるけど、関わる者にポジティブな影響を与えて主体的に動くようにさせる、そういう方面の稀有な天才だと思う。

*3:2人の会話はスェーデン語だそうです、デン語とは方言みたいなもんらしいですが

*4:いつもアナセンが「もういいだろ」ってトントンするまでやってようと思うんだけど、いつまでやっててもトントンしないので、きっと周囲が「おいおい・・・」って思うほど長くやってると思う。