京響2011年12月(第九)

実は第九を生で聴いたのは、はじめてである。たぶん(遠い昔にはもしかしたらあったかもしれないが)。昔わたしの同級生に、関西圏のしかも主要駅の近くに住んでいるにも関わらず新幹線に乗ったことがないことを自慢(というより自虐系の持ちネタ?)にしている奴がいたが、日本のクラシックファンで第九を聴いたことがないなんてきっと珍しいに違いないので、このまま温存していたら同様の持ちネタになったに違いないのだが、手元に定期会員のチケットがあったので持ちネタ温存よりも好奇心が勝って、聴きに行ってしまった。

今年のこのシリーズの第九は二日間あって両日完売とのこと。めでたい。前座のプログラムは変えてあって、それぞれ、モーツァルトとダマーズによる、フルートとハープをフィーチャーしたプログラム。定期の会員向けの本日がダマーズで、この曲は2000年の京響の定期が初演とのこと。ハープの作るうねりにフルートが絡む心地良い音楽で、京響の得意なジャンルだったと思う。フルートがさすがだった。弦も大変美しい。でも、折角おっちゃんの回なので、もっと新鮮な驚きとか、世界観が変わるような衝撃・・・を求めてしまうのは贅沢かなあ。

後半が第九。第一楽章は、すいません、ひょっとしてダレてる?って思いました。第九の演奏あっちこっちでし過ぎて*1、なんだかよく分からなくなってるんじゃないかなあ、と思うような種類の何か。特に金管が今日はどうも。何が駄目ってわけじゃないけど精彩に欠ける的な。いつもがいいだけに今日は特別じゃない的な。メンバーにも抜けがあったような。京響は前座的プログラムではあえてセクションの首席クラスを外して来るのですが、それでもメインのプログラムでは揃えてたのにー。年末年始のお休みに入ったのでしょうか。お休みといえば、いつも平日の定期は空席が目立つのですが、チケットが売れてても定期の客が一定来れないからですが、今日は自分が来れなくても知人を誘ったのでしょうか。客席がほぼ埋まっていて、定期のエリアに見慣れない顔もちらほら。第九なら行ってもよいという知人に譲ったのでしょうか。さすが第九。いつものホールと違う現象が起こってる。

こんな始まり方でヤキモキしたのですが、第二楽章でずっと持ち直して、第三楽章は素晴らしい演奏となりました。ここから楽器がすごく良く鳴り出したし、圧巻だった。どの瞬間も過不足がなく、空間が完璧だった。ここって、こんな音楽だったんだ。もっと無難な、蝶々の戯れみたいな音楽かと思ってた。もっとなんか、ちょっと面白い、新しい瞬間の連続みたいな音楽になってた。空間を完全に掌握した広上のおっちゃんらしい演奏・・・というかおっちゃんでないと出来ない種類の演奏で、満足でした。また今日は弦がすごく良かったなあ。なんというか、一体化してて、膨らみを持った良い音になってた。

続く4楽章は、これは今日は合唱がド迫力でした。オケ真上の3階に座っていたから、合唱とすごく近かったからっていうのもあるんだろうけど、もう合唱の塊がビシバシ来て振動してるような「音楽は腰で聴く!」みたいな状態でした。いやあ。これはこれで面白いですね。あとソプラノの小川さんが一際通る声で、これまで聴いたときにはそういうイメージが無かったので、ちょっと発見した。しかし第九はバスソロ目立ちますなあ。

京都市交響楽団特別演奏会「第九コンサート」
2011年12月27日(火)7:00 pm 京都コンサートホール・大ホール

ダマーズ:フルート、ハープ、弦楽のためのデュオ・コンチェルタント
ベートーヴェン交響曲第9番ニ短調「合唱付」op.125
広上 淳一(常任指揮者)
清水 信貴(京響首席フルート奏者)
松村 衣里(京響ハープ奏者)
小川 里美(ソプラノ)
手嶋眞佐子(メゾソプラノ
吉田 浩之(テノール
黒田 博 (バリトン
京響市民合唱団
京都市立芸術大学

*1:12月のスケジュールで確認出来たのだけで、6回目。