フランク所長も投票呼びかけ @ 京教大OBオケ「こうもり」

新聞の見出しっぽいタイトルですね。種明かしはエントリの後半で。


さあー。当面やることはやったので、オペラの話をしよう。

今日は、前回も行って実に好感触だった、京教大OBオケの演奏会に行ってきました。前回は「愛の妙薬」の原語ハイライト上演でしたが、今回はオペレッタ「こうもり」の日本語上演です。ステージは、前回と同様、京都コンサートホールの半円形の平台二重構造を利用して、前半分の半円形にオケを収め、後ろの一段高くしたエリアを演技スペースとしています。家具程度のセットと、衣装や小道具を使ったセミステージ形式です。

でね、最初に総括しちゃうと、実に良かったと思います。このシリーズは、アマオケの自主企画とはいえ、その辺の国内制作団体の定例シリーズの「出来のよい回」くらいのクオリティがあります。チケットは二千円ですから、実にお得な企画ですよ。京都近辺の方は是非足を運びましょう。

って私に言われなくても、よい公演には自然と客が来るもので、本日も1階はほぼ埋まった状態でした。前回の出来が良かったためでしょう。チケットの安さと子供料金(千円)があることもあって会場はいつものオペラとは異なり、実にカジュアルな雰囲気でした。

京都教育大学管弦楽団OBオーケストラ −第10回演奏会−
2012年2月4日(土)京都コンサートホール

J.シュトラウスII: 喜歌劇「こうもり」
ロザリンデ: 長谷川 泉
アイゼンシュタイン: 大谷 圭介
ファルケ: 片桐 直樹
アルフレード: 竹田 昌弘
アデーレ: 稲森 慈惠
オルロフスキー: 伊藤 絵美
フランク: 服部 英生

指揮:山口 基之
合唱: 「こうもり」特別合唱団
合唱指揮: 大谷 圭介
演奏:京都教育大学管弦楽団OBオーケストラ

この公演、何がいいって、歌手の人選がいいんですよー。私の趣味に合ってるというのが大きいのですが。関西二期会系統からの人選なのですが、いろんなところで関西二期会の自主公演・派遣公演ともに観てますが、ここほどお気に入りの組合せにはならないのです。是非来年もこれで行って頂きたいと思います。

また、オケがよくまとまってるんですよ。関西のプロオケで、定期演奏会の完成度がここ以下のとこ、なんぼでもありますもん*1。本当、よくまとまっている。違和感を感じる瞬間がない。美しいと感じる瞬間もたくさんあって、こうもりには充分です。

本日は自由席だったので、前半は3階のDエリア(舞台寄り最上階)で、後半は舞台やや後方寄りのBエリアで聴きましたが、オケの響きということでは、断然Dエリアの方が良かったです。京都コンサートホールのこの辺りの響きは本当にいい。後半Bエリアに移ったらやや音がガサついて、まとまりが欠けて聴こえると思いましたが、それもDの後に聴いたからであって、このホールは3階に限ります。その代わり後半は歌手の声がダイレクトに聴こえる位置になりました。それを狙って移ったんですけどね。


さて、では歌手編行きましょう。まず本日のお目当てで、前回のここの公演で知って、以来この人の名前を見かければ必ず行くことにしている、もうおっかけしてると言ってもいい存在の竹田昌弘さん。私のファイヴァリット日本人テノールNo.1です。この人は、最初のときも書いたけど、存在感がポップスターっぽい。いわゆるオペラティック・テノールじゃない。そこがいい。ボーイッシュな声も、込める熱も、アクセントの付け方も、強調するところと抜くところのバランスも、全部好き。声をいっぱいに張って引き伸ばすタイプのテノールではないので、大声大会を求めてオペラに来る人にはもの足りないかもしれませんが、このバランスがいいのです。

実はこうもりは実演を過去2回観ていますが、アルフレードに対して好感が持てないってパターンが続いてまして。大体こういうチャラチャラした色男キャラというのがそもそも大嫌いなところに持ってきて、歌唱的にもなんか鼻につくというか「うぉぉぉー!!なんか分からんけど超ムカツくー!?!?!?(首筋をバリバリかきながら)」的な反応が出るのでした。この役を、どう歌えばこういう反応が出ないように出来るのか全く分からない状況で臨んだんですが、今日は全く出ませんでしたねえ。何故だー。自分でも謎です。なんで嫌なのかは大体分かってて、男の媚ってものが、耐え難くムズムズするんです。しかもお嬢さんに人気のある男性のそれほど耐え難く思ってしまうというダメ押し付き。そんなこと言ってたらオペラなんて聴けないんですが、何故か、たまに、全く平気な人がいるんですよねえ。これが何なのかは自分でも謎です。結局好みや相性って奴でしょうか。あ、でも、音程が不安定な人はダメです。それも超ストリクトなレベルで。ちっとでも音が狂った途端ムカつき度メーター振り切れです。不思議なのは、他の系統のロールだと音程が不安定だとしてもムカつきとは結びつかないのに、この系統だとそういう感情を引き起こすことです。

元の話に戻って、本日は、アルフレードのそういうムカつきになり兼ねない要素を、とてもユーモラスに処理していて、そういう点でも良かったです。ユーモアがないとただの嫌な奴ですからね(←非モテ視点からは)。


今日は、どのキャストも本当良くて、その中で新鮮だったのが、ロザリンデ。この方、面白いですねえ。本日は字幕なしの日本語歌唱だったこともあって、今日のキャストの中では歌詞がはっきりしていなくて聞き取りが若干し難いかなという感じだったのですが、ついでに声量もすごくあるというわけではないのですが、なんだか心地良いインパクトのある歌唱で、もう一度聴いてみたいと思いました。それに、おっさんみたいなことを言い出しますが、ドレスから出た肩が綺麗。肌理が細かくて滑らかそう。3階からの見下ろし席だったので眼福でした。

アデーレ役の稲森さんは前回もこのシリーズで聴いていますが、同じ人?と思うくらい高音がすごく出るようになっていて、大ホールの空気を震わせる高音を何度も決めていました。びっくり。

ファルケの片桐さんは私はすごく好きな歌手なんですが、今日はソロが少なくて残念。日本語がすごくはっきりしていて聞き取りやすい。普段は字幕前提の原語上演なのであまり気にしていませんが、実はこれ大事ですよねえ。

アイゼンシュタインの大谷さんも、日本語が聞き取りやすくていいと思いました。アイゼンシュタインて、実は派手なアリアがあるわけでもなく、ずっと出ずっぱりでストーリーに絡んでいるので、聞き取りやすさって重要なポイントです。大谷さんと片桐さんが聞き取りやすいというのは、演劇的な滑舌の良さ、歯切れの良さがあるから聞き取りやすいってのもあると思います。

オルロフスキーの伊藤さん。実はメゾでこの役を聴いたのが初めてという、逆転した経歴を辿った私ですが、ズボン役でこの役ってのも男の人には出せない凛々しさがあって、いいですねえ。見た目にもよいし。

フランクの服部さんは、一声聴いただけで絶対忘れない声と外見の持ち主です。先日のメリー・ウィドゥで聴いたところでした。深い声なのになんだかアワアワしてるってキャラクターが、この役にピッタリでした。

実は、3幕でフランクが酔っ払って伸びてるときに、タイトルのアドリブがありました。酔っ払って寝ててたまに寝言を言うシーンなのですが、「なに、京都にオペラハウスだって、あまり大きいのは使いにくいよ」「小さくてもセンスのよいのがいいなあ」「次の市長さん、頼みますよ」「夜が明けたら選挙に行きなさいよ」「あんまりこういうこと言ってるとまずいけどね」

こういうわけなので、京都市民のみなさん、夜が明けたら選挙に行きましょう!

*1:曲の難易度や挑戦度合いも違うとは思いますが。かけられる時間も。