密室で計画するから、こんな変なことが起こるんです

京都会館の関係で某所で喋ったことを、少しだけ改変して普遍的に読めるようにして貼り付けます。


みなさま、こんにちは。京都会館再整備をじっくり考える会の西本です。今日は京都会館のことを話します。

京都市では京都会館の大規模な改修計画を立てていて、その計画によると、第一ホールは一旦解体して、建替えることになっています。もう今年の3月いっぱいで使用受付は停止されていて、4月からはじまる次の年度には解体が予定されています。この計画が、ちょっと・・・いやかなり、相当、とっても変なんです。

みなさんにまずお伝えしたいのは、京都市では、10年前から京都会館の老朽化対策として、改修を検討してきたということです。そして、専門家の推奨する改修案がちゃんとあったのに、今回の計画では、それと全く違うものが急に出てきた、しかも公の議論を全く経由しないで、急に決まってしまったということです。

過去の調査で建築物の劣化度調査を行い、建物としては良好であることが分かっています。建物は手入れをすれば使える。現在の法律に合わせるために手入れをしなければなりませんが、使えることが分かっています。

専門家や利用者の入った委員会も作って、耐震性とか、現状の京都会館で不便に感じていることとか、世の中のニーズとか、お金のこととか、舞台をどの程度拡張したらどんなことが出来るようになるかということを議論して、結論を出しています。実はこのとき、建て替えて作り直すという案も検討されたんですけど、委員会は、建替え案は推奨しなかったんですね。

そして京都市自身が、この委員会の意見を受けて、さらに専門的な調査に出したり、案を作ったりして進めてきました。今度の計画は、これらがみんな無視されて、いきなり出てきたというプロセス上の問題があります。

専門家が検討して、採用しなかった案が何故採用されるのか。何故全く違う結論になるのか。プロセスもおかしいし、結果もおかしい。そういう計画が果たして現実的なのか。こういう問題があります。


過去の検討のなかでは、こんな話もありました。建替案に対する市の意見によると、京都会館の下に遺跡がある、と。50年前の京都会館が出来た工事で既にそれが見えていて、そのときには埋蔵文化財の法律も無かったのでその上に京都会館を作ったわけですけど、今、解体して掘りなおすとしたら、ちゃんと調査しないといけない。遺跡調査・発掘に時間もお金もかかる。だから建替はあり得ないということでした。

それがいつの間にか無視されて、無かったことにされています。でも解体したら遺跡は出てきます。そうすると、無駄な時間とお金がかかる。でも、一旦解体してしまったら、そこで止めるわけにはいかない。お金がかかっても遺跡調査はしないといけないし、工事を止めるわけにはいかない。これって、地下鉄のときと一緒ですね。はじめは百億円と言われた。でも蓋を開けてみると、もっとかかる。でも途中で止めるわけには行かないから、もっと注ぎ込まないといけない。税金の無駄です。京都市自身が、かつては税金の無駄だからやらないと言っていたことを、当時よりもっと市の財政が悪化した今、やることになった。全く不思議です。

お金といえば、今回の建替では、舞台がすごく大きくなるそうです。京都市の言い分をまとめると、大は小を兼ねるから、大きい方に合わせておくんだということです。当然それに見合った舞台機構の設備が入ります。そうすると、これを維持するために維持管理にお金がかかるようになる。どのくらいかかるかというと、他所のホールの実績から言って、どんなに少なく見積もっても3倍以上になるでしょう。これは古いホールの実績ですから、今はもっと電動化しますので、もっともっと高くなると思います。でも控えめに考えて3倍として、そうすると毎年2億円くらい余計にかかるようになります。ローム命名権に年1億くれる、そういう契約を京都市ロームと交わしていますが、実際には年1億もらっても割に合わないんです。税金からの負担になります。

この建替計画の予算規模は約100億円です。これまでの検討で、現在の建物の保存を前提にした改修で、35〜60億円の間と報告されています。それで多目的ホールとして標準的な整備が出来るということです。今の計画は大体100億円ですから、差額は、余計な出費ですね。


ものすごく疑問なのが、「大は小を兼ねる」発想です。みなさん、京都、岡崎はご存知の通りの地区です。みんな高さ規制かかってます。市民も不便でも守っています。現在の京都会館も、古い日本建築のように山形の屋根で人の目線から見て高く感じないように作られました。みんなが少しずつ遠慮しながら、全体として京都や東山の景観を守っています。こういう場所に、何故「大は小を兼ねる」発想で建物を作るのでしょうか。最低限必要な高さを検討して、少しでも低く出来ないか考えられないのでしょうか。

そういう大きいホールは、駅前のビルだらけの場所とか、郊外のなんにもないところとか、そういうところにあるわけです。何故京都の岡崎の地に、そういうところに合わせたものを作らないといけないのでしょうか。

他にもおかしいところがあります。京都市は「世界水準のオペラやバレエ」が出来るように舞台の大きさを決めたと言ってます。再整備基本計画にもそう書いてあるし、市民意見の募集でも、そう言って意見を募りました。ところが、これ、出来ないんです。京都会館の敷地でメインの舞台だけを大きくしても、他の部分が足りないから出来ません。これは京都市が今開いている「建物価値の継承に関する検討委員会」のメンバーで東京の劇場の舞台の専門家もそう言いました。「無理」と即答でした。こういう計画なんです。なんでこうなるかというと、計画を作るときに、専門家とか関係者を入れないで、密室で作るから、こうなるんです。

他にも密室で作ったプロセスゆえに、おかしいところがあります。
まず現状を全く分かってない。外国のオペラの来日公演は、数が激減しています。特に東京以外に来る来日公演は少なくて、いわゆる世界水準、京都市の文章に上がっているクラスだと、去年は関西全体で一団体しか来てないんです。関西全体で年に1回なのに、専門ホールは既に2個、来年もっと大型のがオープンして3個になります。公演は年1回、箱は4つ目、何かおかしくないですか。

それに、世界水準のオペラはチケットが5万円以上しますから、近くに出来たら気軽に行けるかというと、そういうものではありません。そんなものに合わせて大きな建物が必要ですか。


役に立たないだけならまだしも、この計画は、京都の将来の文化や芸術に悪影響を及ぼす可能性があります。こういう大きな舞台機構を備えたホールを作ると維持管理にお金がかかります。使っても使わなくても、世界水準の芸術が1回も上演出来なくても、一旦作ると毎年かかります。これは京都市の文化予算から出ます。そして京都市の財政状況では文化予算を増やすことは難しいでしょう。そうするとどうなるかというと、京都会館を手放すとか、京都会館そのものではなくても小さな文化会館をいくつか売りに出すとか、京都が長い間維持してきたものを切るとか、そういうことが起こり得ます。

お隣の大阪で長い間維持してきたものを一期であっさり切るということが起こっていますね。あれと同じことが京都でも起きる可能性があります。


私が言いたいことは、こういう密室政治を止めてくださいということです。密室で、色んな人を排除して決めるから、ちょっとあり得ないような変なことが出てくる。お金がないのに家賃の高い家に引っ越すような(今回の京都会館の件はまさにそれです)、そういう変なことをしようとする。

これは、ごく普通の当たり前のプロセスで防ぐことが出来ます。密室でなく、色んな関係者を集めて、過程を公開して、作るときのことだけでなく出来た後のことも考えて、誰が考えてもある程度納得出来るような結論を、そういう改修を考えることが出来ます。ごく真っ当な普通の感覚で物事を進めること、私が今の京都市に求めたいのは、たったそれだけです。



京都会館の件は、署名募集中です。