イタリア歌曲の夕べ/推薦コンサート

いろいろ、面白い発見があった公演だった。まず小ホールで聴く声楽の面白さに惚れ直した。大きいとこだと、これやってても分かんない(伝わってない)んだよね。本当に勿体ない。

このコンサートは「イタリア歌曲研究グループによる推薦コンサート」ということで、グループのメンバーが将来期待出来る若い歌い手を推薦した企画なのだそう。そういうフレッシュな顔ぶれによる対比が、私にはとても面白かった。客入りも盛況で、ここのシリーズが毎回面白いことが予想出来た。私は芸文のサイトで情報を偶然見つけて行ったのですが*1、みなさんどこで知るのでしょうね。


万遍なくレポろうと思うと筆が進まなくなっちゃうので、印象に残ったとこだけ書きます。まず2番手の林祐子さん。あまり期待せずに聴き始めたこともあって最初のこの辺ではぼんやり聴いていたのですが、すっと入ってきて違和感がなく*2、心にふわっと残る何かがありました。

そして目当ての上村さん。相変わらず粒立ちの良い発声で、一声発した瞬間に明らかに違う印象があり、安定感もあるのですが、これまで聴いてきたオペラでのインパクトがなにしろすごかったので、あれを覆すのは中々難しいかなーと。レパートリーとしてどっちがよりマッチしてるかというレベルのことであって、単独では充分聴いて良かったと思える範囲ではあります。でも前回の感想でも「これぞまさにオペラ」って書きましたが、今回歌曲聴いて、改めて、オペラチックな歌手さんなんだなーと思いました。ものすごく期待しております。

後半、客席の温度が1℃上がったのが藤原未佳子さん。課題もなくはないが、とにかくド迫力がある。もちろん声量もある(→客席ウケる)。これは、女の情念とかそんなものを表現したレパートリーを聴いてみたいですなあ。きっと迫力があるだろうなあ。ドンナ・エルヴィーラを歌ったことがあるようですね。なかなかない「明確で分かりやすい何か」を持っている方です。

実は私的に一番掘り出し物だったのが、落合庸平さん。おおー!カンタンテだー!これは気持ちいい。実は日本人で低声の男声歌手で積極的に気にいる人ってなかなかいないので、結構快挙かも。1曲目のレオンカヴァッロとか、滑舌が・・・ガンバレ!って点もなくはなかったけど、楽譜を歌ってるんじゃなくて自分の中から楽譜を貫くリズムが出てきて、ちゃんと「歌ってる」感じがとても好感触でした。本人のキャラも面白そうだ。

というわけで、すごく実り深かった若手推薦コンサートでしたよ。

2012年4月26日(木)兵庫県立芸術文化センター 小ホール
イタリア歌曲の夕べ
イタリア歌曲研究グループによる推薦コンサート
トスティ、ドナウディとヴェリズモの作曲家達

  • 高木未知子 トスティ:夢/四月/薔薇
  • 林祐子 トスティ:幻覚/あなたが帰ってこないから/そうなってほしい
  • 諏訪部匡司 トスティ:理想/かわいい唇/暁は光から
  • 水野智恵 ドナウディ:私の愛の日々/愛が私に歌わせる/ああ、すばらしい愛の巣
  • 上村智恵 ドナウディ明るい懐かしの地よ/雲雀のように/新鮮な土地、芳しい野よ
  • 藤村江李奈 プッチーニ:太陽と愛/そして小鳥は/栄えあれ、天の女王よ
  • 藤原未佳子 カタラーニ:星に/口づけもなく/ジョルダーノ:四月が戻ってくる
  • 中川正崇 レオンカヴァッロ:愛を受け入れなさい/マンドリータ/朝の歌
  • 落合庸平 レオンカヴァッロ:フランスのセレナータ/マスカーニ:愛の苦しみ/あなたの星
  • 坂口裕子 マスカーニ:アヴェマリア/月/花占い

*1:数ヶ月に1回、公演情報を隅から隅まで見ることにしていて、やっと見つけた次第。

*2:私は聴いててつい赤ペンを走らせてしまうというか、ここが気になる、あそこが気になる、と減点主義な聴き方をしてしまう聴き手なので、違和感がないというのは相当の褒め文脈になります。