三文オペラ@びわ湖ホール2012

とても楽しかったよ!それに、観た後に、なんとも言えなくって、胸がいっぱいになって・・・こういう感覚になれることは、あんまりないんだよね。それこそ有名歌劇場のオペラを何本観ようが、国際知名度の高いスターが何人出てようが。だからびわ湖ホールは大好き。この中ホールのシリーズも大好き。

クルト・ワイルの三文オペラは、オペラだと思って観てると「ミュージカル?」。物語のテンポや歌の様式がそんな感じ。短いシーン切り替え、台詞を一くさりと歌のセットで、ポンポンと切り替わって行くテンポ感、なによりその歌の様式が、オペラらしくない。

みなさんオペラ歌手なので、ミュージカルみたいな発声を前提とした歌が(オペラ様式の歌を歌った場合と比べて)映えないという面も無くは無かったりして、正直途中までは、折角オペラ歌手で聴くんだからいかにもオペラ様式の方が良かったなあ、なあんて思っていたんだけど、観終わったら胸がいっぱいになったので、どうでもよくなっちゃった。こういうのもいいよね。贅沢言えば、こういうのとは別に、声楽アンサンブルでオペラっぽいオペラ、もう1本やって欲しいけど。

本日の客席は、1階席はいっぱい。2階席は空き多し。オペラとはちょっと客層が違うかな?どっちかというと、演劇のお客さんが多かったのかも。

実はつい先日マルメ(スェーデン)でミュージカルとしてはエンターテイメント性のとても高い非常によく出来た公演を、しかも普段オペラを演奏してるオケによる生オケ付で観た直後だったので、歌って踊っての総合点としてはオペラ歌手はとても適わないわけで*1、ついでにマイクで増幅する前提の歌というのも、そういう様式の範囲内にあって、しかも普段ポピュラーミュージックを聴いていて起伏の少ない音楽に慣れている耳にはたぶん聞きやすいのだろうと思うのですが、いやー、わたしはこっちの方がいいです。あれは耳にガンガン来るし、引きが無くて、押しがオンされるだけだから、なんだか耳が疲れちゃうんですよね。

メッキー・メッサーはなかなかダンディな好演でしたよ。歌によって映えるとことそうでないとこが分かれたかなあって気はしたけど。あとポリーの中盤の歌と、ジェニーの歌が結構来たかなあ。美しくない方がいいし、賢くない方がいいのよ・・・ってやつね。三文オペラは超ご都合主義なのに、歌詞聴いてると考えちゃうよね*2

開催日/2012.10.08 (月・祝) 時間/14:00 会場/中ホール
びわ湖ホール オペラへの招待 クルト・ワイル作曲『三文オペラ

ブレヒトの戯曲にクルト・ワイルが音楽を付した演劇でもあり、ミュージカルでもあり、オペラでもある「三文オペラ」を新制作します。「三文オペラ」は既存の枠組みにとらわれることのない作品で、世界の劇場のレパートリーとして再演を重ねられています。歌・芝居を織り交ぜて物語が進行し、オペラのみならず演劇に興味のある方にも楽しんでいただけます。


演出:栗山昌良
指揮:園田隆一郎
管弦楽:ザ・カレッジ・オペラハウス管弦楽団
出演:びわ湖ホール声楽アンサンブル ほか
   メッキー・メッサー/迎 肇聡   
   ピーチャム/相沢 創
   ピーチャム夫人/田中千佳子 
   ポリー・ピーチャム/栗原未和
   ブラウン/竹内直紀※
   ルシー/本田華奈子
   酒場のジェニ―/中嶋康子  
   スミス/西田昭広※
   キンボール牧師・大道歌手/砂場拓也  
   フィルチ/古屋彰久
   泥棒/青柳貴夫、島影聖人、二塚直紀※、林 隆史、山本康寛 
   娼婦/岩川亮子、小林あすき、松下美奈子、森 季子、林 育子※
   ※びわ湖ホール声楽アンサンブル・ソロ登録メンバー

*1:いやー。ミュージカル歌手の身体能力すごいわー。

*2:全く蛇足だけど、そんなご都合主義のストーリーはダメだ!で七転八倒したのが近代だとしたら、骨子をご都合主義のまま、その上に皮肉をデコレーションすることで、興行上必要な分かりやすさとポストモダン的な表現欲求を両立させたのが、この作品なのかなあ、と思ったりした。作曲は1928年だからそういう時代。ただ、いかにもモダン・アンチテーゼな主張は全然なくて、でもモダン以前には戻れない作家と観客のためのポストモダン的エクスキューズが用意されてると言うのかな。