ソフィア歌劇場/カヴァレア&ジャンニ@兵庫

風邪を引いて行けないようなことを言いながら、根性で行って参りました。だって、先々週もその前も、行くつもりだったオペラやコンサートをキャンセルしまくってたし、さすがに一仕事終わった今週は行ってもいいでしょう。

というわけで、ブルガリアはソフィア歌劇場のカヴァレア・ルスティカーナとジャンニ・スキッキ2本立て。実は今年の前半、まさにそのブルガリアのソフィアからの引き合いがあって、仕事がとれたら1ヶ月単位で滞在する筈だったという縁があったりしました。結局流れてしまったのですが、まあ日本だと常温放置でいい水温管理が、マイナス10度以下からの加温を前提にしなきゃいけないような立地ですから流れてほっとしたというのが本音でしたが、あれ請けてたら毎週ソフィア歌劇場通いだったかなーと。ちなみに今はヴェネティアからの引き合いがあるのですが、まあ冷やかし半分だろうけど、万が一取ったらフェニーチェですよ。来日公演を先取りしているのか?という私の仕事事情です。

ところで関西にいると、東京のオペラファンとは違って所謂有名どころを観る機会は少なくて相対的に来日ものといえば巡回オペラを観る機会が多いのですが*1、これまで私は巡回オペラとしては、比較的良い回にしか当たったことがなかったのだなーと思ったりしました。


と来ればお分かりでしょうが、これはちょっとイマイチだったかな。特にカヴァレアがなー、学芸会みたいだった。まずオケは、オケ単独では面白いと思った。個々の奏者単位、セクション単位では個性的で面白いサウンドを出すし、セクションに凹凸が無くてバランスもいいし。ここのオケでオケコンがあるなら行ってみようかなと思うくらいには良かったです。また、楽曲全体としてもカヴァレアの音楽を美しく演奏していたと思うし、なんというか、すごく立つ演奏なんですよ。そこはすごく面白いと思った。

ただ・・・、この「ただ」を言い出しちゃうのが私の私たる所以だけど、なんつうか、演奏が立ちすぎて、舞台と噛み合わないんですよー(泣)。演奏と舞台で音の質が違い過ぎるというのもあるし、カヴァレアの歌手さん達が古き良きオペラ時代風というか、大股広げて会場に向かって両手を広げるようなノリというかな、それも噛み合わない一因でした。後者はまあすぐには改善出来ないとして、前者のサウンド問題ですが、人間の喉は楽器のようには密度の濃い音を出せないので、オペラの場合、オケコンで出す音より密度を下げないと釣り合わないんだと思ってます。実はオペラでこういう経験、以前にも経験したことがあります。広上のおっちゃん+京響と関西二期会フィガロの結婚で、やはりあれもオケピからの音が(音量の問題ではなく音の質の問題としてとして)密度が高過ぎて、舞台からの音が相対的に軽く(つまり釣り合ってる場合と比べて舞台上の音がイマイチに)感じられるといった現象がありました。この二人はオケコン指揮者としてはとても優れていると思うのですが、ゆえに(他の人の場合はありえない)別の問題が発生してしまっているように私には感じられました。

あと私の印象では主役級にもうひとつ何か欲しいというか、特に前半のサントッツァとトゥリッドゥの対決の場面などは、緊張感が無かったなーと。結局、緊張感が出てきたのはかなり後半のアルフィオが踏み込んで来て決闘になるところ辺りからで、それもソリストの表現によるものではなく、オケが引っ張って、この場面に付けられた音楽によって、という要素が大きかったように思いました。合唱もアンサンブルもうちょっと噛み合って欲しかったような。なんだか進行表に従って順番に出てきてこなしてるみたい→学芸会という最初の印象になりました。最近の巡回オペラの相場って、もっといいから。

結局、あの動きのないセットで、照明だけを変化させながら聴く間奏曲やらが一番良かったという。画付きのオケコンか?みたいな。


思わずここで失礼して別会場に移動しちゃおうかと思いましたが、気を取り直して、後半のジャンニ・スキッキです。こちらはソフィアのソリストが苦手らしい緊張感を要求する作品ではなく、コミカルに進行するので、ずっと良かったと思います。年長者で元行政官のシモーネが私好みの声質だったし。小林沙羅ちゃんのラウレッタも素直な若い女の子らしくて良かったし。そうそう、裸足で、なにかあると飛びついたりしちゃう野生児ラウレッタという設定でした。ただ・・・みなさんアンサンブルはそんなに得意じゃないんですよね。ま、そんなもんかなーと。

そうそう、この2作、指揮者が違ったんですよ。ジャンニ・スキッキの方は、前半感じたオケが立ち過ぎる問題はなく、そもそも演奏の個性が全く違い過ぎて、作品(作曲家)の違いでここまで変わるかねと思ってたら、今帰って確認したところ、指揮者がそもそも変わってたんでした。同じオケを同日に違う指揮者で聴くというのも貴重な機会でした。

12.11.10(土)14:00 兵庫県立芸術文化センター 大ホール
ソフィア国立歌劇場オペラ 「カヴァレリア・ルスティカーナ」「ジャンニ・スキッキ」
指揮/アレッサンドロ・サンジョルジ,ウェリザール・ゲンチェフ 演出/プラーメン・カルターロフ 管弦楽/ソフィア国立歌劇場管弦楽団 合唱/同 合唱団 演目:マスカーニ/歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」(全1幕・イタリア語上演・日本語字幕付),プッチーニ/「ジャンニ・スキッキ」(全1幕・イタリア語上演・日本語字幕付)

(キャストはそのうち追記予定)

*1:東京だと毎月のようにある公演の中からどれを観るかという選択の問題になるかと思うのですが、関西の場合は、来るものを全部見ても年に2〜3本なので。