夢遊病の女@京都市立芸大

去年行っていたく満足した芸大オペラに今年も行って参りました。大満足!まず会場の音響がすこぶる良いです。見た目には800席程度の昔ながらの講堂ですが、ソリストも合唱も声がストレートに飛び込んで来ます。余計な残響がないのに、生声の細かなニュアンスが会場の隅々まで満ち、しかもオケの響きに全く遮られることなくストレートに届く感触があり、これはちょっと病みつきになりそう臨場感です。

正直、二千席級のホールで声量がもの足りないのが不満な人は、ここで聴けば誰でも満足出来るんちゃうの?なんて失礼なことを思ってしまう今日この頃でございます。100を40くらいしか感じないより、70をフルに感じた方が幸せなこともあるよ。その人が何を求めているかによるけど。いつも誉め言葉が「豊かな声量」な人は一度ご検討を。いや、オペラって本当はそんなもの(こんな規模の会場でやるのが当たり前のもの)だったと思うんですよ。世界でも極端な条件を作って、そのなかでさらに極端なものを求めるより、当たり前の規模でフルの魅力を感じた方がよっぽど幸せなんでないかと思うわけです。ブランドで大規模オペラばかり行ってないで、一度騙されたと思って、小規模なオペラに足を運んでみて下さい。って、こんなブログ読んでる人には、そんなこと言う必要ないか。まあ関西にいて行ける人は、芸大の講堂は特にお薦めの小規模会場ですので、是非足をお運び下さい。明日も別キャストで公演があります。


さて、いつもはとても姫には見えないオバ・・・いえ、素敵な熟女が姫を演じたり嫁入り前のお嬢を演じるオペラの世界ですが、学生オペラは若さ120%!!若さマックスの学生達が年配男性などを頑張って演じているのは、微笑ましい限りです。こうやって自分の年がどんどん年が離れていくと、最近20台前半の若者なんて高校生くらいにしか見えません。舞台の村人が全員高校生!!しかし、女子はともかく、最近の日本男子の細さは、舞台で見ていてもポキンと折れそうです。てな余談は置いといて、やっぱりフレッシュな声で一生懸命にやる舞台は、なんとも言えず、いいです。心が洗われます。合唱、いいですねー。

また女声陣がいいです。去年も良かったので、指導がいいんでしょうね。私が一番気に入ったのは、アミーナのお母さんを歌った白波瀬さんです。幽霊の語りや後半のリーザを糾弾する場の存在感など、素晴らしかったです。母としての優しさを表現するところも。役に対して声が若いのは、まだまだこれからでしょうが、今後も聴きたい歌い手さんです。リーザも勝気な美少女風によく似合っていて良かったです。声のフレッシュさもいいし。目鼻立ちのはっきりした美人さんに勝気なキャラがハマるので将来が期待出来そうです。私こういうバレエやってそうな首のラインに耳が立ったタイプの女の子って大好きなんですよ(←お前の好みはどうででもいい)。アミーナ二人(主役は幕毎に交代します)も声がよく揃えてあって、鈴の鳴るようなタイプのソプラノで、1幕の熊谷さんは通してずっと丁寧なところと透明感がよく、2幕の吉田さんは凸凹があるものの、決め音の高音もなかなか、しかも思い切った高音を出しながらも直後の音を気持ちよく収める能力に感心しました。

一方男声陣は、エルヴィーノの川崎さんは、甘さのある柔らかい声質となんか引っかかる面白い素質がありながら、この素質を活かすような歌い方になってないんじゃないかなーと私は思いました。もっとスコーンと抜ける声質の人がやるとハマる歌い方で、ちと素質が勿体無いような気がします。指導の範疇かもしれません。このままでも充分聴けるんですが、噛み合い度が女声陣よりも惜しく感じられました*1。ロドルフォ、アレッシオ、公証人は立派に務めてたと思います。

勢いよく飛び込んで来るフレッシュな合唱は、やっぱここの良さですよね。オケも主張しすぎず、よく統制されていて、しかしプロオケにありがちなルーティンさは微塵もなく(当たり前か)、聴いていて気持ちのよいものでした。

プログラムによると、大学院の上演にこのオペラを選ぶのは冒険だそうですが、その難しさを感じない出来だったと思います。

演目:V.ベッリーニ作曲 『夢遊病の女』日時
平成25年2月21日(木曜日),22日(金曜日)
両日ともに午後5時開演(午後4時開場)
会場 京都市立芸術大学 講堂
住所 京都市西京区大枝沓掛町13−6
演出・出演
【演出】:松本重孝  【指揮】:奥村哲也
21日
アミーナ 熊谷綾乃(1幕),吉田早希(2幕)
エルヴィーノ 川崎慎一郎
ロドルフォ 下林一也
リーザ 大塚真弓
テレサ 白波瀬由利香
アレッシオ 本智敬
公証人 池田真己

*1:マニアックな話かもしれません。