椿姫@びわ湖2013

これは、演出がまずガッカリだったなーと。美術センス・衣装センスともに良くない。カラーセンスが駄目なのが私的には一番よくない。舞台はバリ辺りの南国の社交界設定らしく、男声陣は白系統のスーツ、女性陣はやっぱエキゾチックなサマードレス。別にこの設定だってちゃんとセンスのある人がやったらちゃんとなると思うんだけど、カラーが全く考えられてなくて、舞台全体を見たときにバラバラで落ち着かないことこのうえない。しかも主役二人が全く引き立たない。二幕の二人の愛の巣はなんとも暗い中間色のグレーだし、三幕もヴィオレッタの部屋もそのセットのレイアウト替えだし、二幕のの闘牛士のシーンなど、壁にプロジェクターで映し出されたスペインの動画を観ながら客が歌うという静的な演技付けで、なんとも映えない。三幕の幕切れだけ、ああそれがやりたかったのねーという感じ。それに二幕での愛の巣のヴィオレッタの衣装が、ベージュっぽいスーツであるのも全く分からないのだが、なによりもヘアが、襟足の後ろでロングヘアを軽く結わえただけの、手抜きの生活観あふれるおばちゃん縛りで、百歩譲って素材勝負の金髪美女がやれば肩の力が抜けた感じでサマになるのかもしれないが、遠目に我が同輩の邦人女性を見るには辛く。ちょっと日本人スタッフ、ちゃんといるんだから、そこはちゃんと抵抗してよー!!!

通常華やかなオペラからあえて華やかさを抜きました的なドイツ的なアンチテーゼの結果なのか、イタリアの演出家だから演出はこんなものなのか、しかし演出に凝らないのが当然のお国柄の常設劇場の目玉ではない演目のひとつであればシーズンにひとつくらいこんなのが混じっていてもアリなのかもしれないが、今日は大ホールのオペラを年に2回しかやらないびわ湖ホールのハレの日なのである。いくらなんでもこれはあんまりである。こういう外国人演出家を航空券と滞在費かけて連れて来るのであれば日本人を起用して頂きたい。猛省を促したい。大体、沼尻さんは前回のコジが地元で評判が悪かったのに新聞でこんなことを言って、イマイチな外国人の起用が続いて、自分があっちで仕事を取るためにあっちで仕事がない人を呼んでいるのでは疑惑がかかっているのだ。外国人ならなんでも有難い時代はとっくに終わった。イマイチなDVDの真似も駄目。外国のDVDのような舞台が日本で観れると有難がられたのは一昔前。地方の観客は(東京のヒエラルキーから自由である分)シビアである。国内でもっとちゃんと演出出来る人がいるんだから日本人で良いではないか。地元の複数人から同種の意見を聞いたので、ここまで書かせて頂いた。


この公演、救われたのは京響の音楽であり、なんせオケの出す基本の音が出来ているので安心して聴けるのだが、ゲネプロを聴いちゃった身としては、慣れて熱が感じられなくなった感がするのも事実であった。色んな事情があるのだろうが、ゲネから4日連続というのは考え直した方がよくないだろうか。これがオペラ座付きのオケであれば、毎日の演奏に対してペースが出来るのだろうが、京響はオペラ演奏は年に数回という活動形態なのだから。

歌手は、あんま書くことない。ヴィオレッタの砂川さんは綺麗な声で綺麗に歌えるとは思うが、溜めがなくてさらさらと流れてしまって、躊躇とか、その挙句の苦渋の決断というものはあんまり感じられなかったように思う。あと特に温まるまでの前半の間の、音程を上げるレガートのときの癖みたいなものが気になった。実はAキャストのヴィオレッタも全く同じ癖があるように思ったのだが、同門だったりとか、なんか理由があるのだろうか。

福井さんのアルフレード、誰だこのキャスティングをしたのは。もう話がねじ曲がっとるやん。この下から持ち上げるように歌うおっさんが、口を聞いたこともない女性の家に一年も黙って通ってるわけないやん。絶対、見かけた次の瞬間にはアピっとるね、アレは。初々しさナッシングである。私は声質至上主義者ではないので声質が合っていなくても寛容な方だが、それは元々の声質と違っても歌い方でどこまで変わるか知っているからで、歌い方が違うのはナシである。大体どう考えても芸風が違うのだから、これはキャスティングした人が悪いと思う。

パパはまあ良かったと思うよ。ただ、私はヴェルディバリトンはあんまよく分かんないので、客席が沸いている割には、ものすごく特別だったかというとよく分からない。

その他の小役に特筆したい人はナシ。これが楽しみなのになあ。

びわ湖ホール プロデュースオペラ  ヴェルディ作曲 歌劇『椿姫』
開催日/2013. 3.10(日)びわ湖ホール 
指 揮:沼尻竜典
演 出:アルフォンソ・アントニオッツィ
ヴィオレッタ      砂川涼子
アルフレード     福井 敬
ジェルモン       黒田 博
フローラ       小野和歌子
ガストン子爵     与儀 巧
ドゥフォール男爵   北川辰彦
ドビニー侯爵      斉木健詞
医師グランヴィル   鹿野由之
アンニーナ      与田朝子
ジュゼッペ      村上公太
合  唱:びわ湖ホール声楽アンサンブル、二期会合唱団
管弦楽京都市交響楽団

ついでに、びわ湖ホール次のプロデュースオペラであるが、えーーー。起用外国人には大いに不満がある。よりによって私の聴いたことのある人ばかりなのだが、特にヴォータンが、これまで聴いたワースト・ヴォータンどころかワースト・バリトンである。ひたすらフラット。一緒に聞いていたドイツ人が何アレ?と。私はこの人のことをミスター・フラットマンと呼んでいる。去年兵庫でこの人を使うのを見かけたときは、私が聴いた役とは違うから黙っていたけど、ワルキューレは聴いたことがあるので言わせてもらうが、なんでよりによってワーストを引っ張って来るのよー。もう日本人キャストの日で決定。それでチケット確保した。しかし上海の聴衆には大ウケだったから日本でもウケちゃうんじゃない。声質さえそれっぽかったらフラットな方が歓迎されちゃうアジア市場だから。もう彼はアジア専門でやっていけばいいんじゃない。しかしわざわざこういう人を呼んで来るんだったら、国内の歌手に活躍の機会を提供して欲しいものである。