ドレスデンのボリスレポ(後編)

続き物です。前中編はこちら。
前編 http://d.hatena.ne.jp/starboard/20090706
中編 http://d.hatena.ne.jp/starboard/20090710

四幕二場 宮殿内の広間

舞台中ほどに黒いパイプベッドが置かれ、後ろの金緞子は剥がれかかっています。手前の祭壇の周囲にはドミトリの胸像(石膏像)がいっぱい置かれています。そういえば一場でもありましたが、数が増えました。おそらく(偽ドミトリの登場によって)ドミトリの影響力が高まりつつあることを暗示しているのでしょう。


例のごとく柄の悪い貴族集団が集まって、僭称者の処置を話し合っています。拷問、磔、死体を晒したうえにカラスに啄ばませ、公衆の面前で焼き、呪いの言葉をかけて灰をばらまくそうです。物騒です。つーかお前らがイワン雷帝だよ。ロシア史そんなんばっかじゃねえか・・・・失礼。シュイスキーが入ってきて、ツァーリご乱心の旨を告げます。皇子ドミトリの亡霊におびえ「去れ!」と叫ぶツァーリの真似をしていると、そこに本物の声が被さり本人の登場です。三幕と同じ黒の上下ですが、革ジャンは着ていません。シャツの合わせは適当です。ボリスの乱心を象徴するかのように、パイプベッドに火が付き燃えさかります。


シュイスキーが乱心中のボリスを掴まえてその目を塞ぐと、ボリスは正気に戻ってパイプベッドに腰掛け*1、冷静なツァーリにモードチェンジして貴族達との対話を開始します。シュイスキーがピーメンを連れてきて皇子ドミトリの奇跡が語られます。盲目の老人が夢の中で幼い子供の声を聞き、その声の言うとおりに皇子ドミトリのお墓に参ったら目が見えるようになったというエピソードです。この奇跡語りの間、一幕の半ズボンの老人がその場に登場して語りの内容を視覚化しています。さらに話が進むと、ピーメンの後ろに一幕の男の子が王冠を抱いて現れます。ボリスは驚いて吹っ飛びます。皇子ドミトリの幽霊はパイプベッドの上に立って話が終わるまでボリスを指差しています。短い間ですが緊張感が漂います。


この話が終わると「苦しい!息が!息子を呼んでくれ!」でボリスの死のモノローグに入ります。さすがに導入部はしっくり行きました。全く不自然さを感じませんでした。しかしアリア集に入れるときは、この導入の台詞カットした方がいいと思います*2。それはともかく、ヒョードルが呼ばれて駆けつけて来たのはいいのですが、肝心のボリスはヒョードルと勘違いしてシュイスキーに抱きついたままです。ヒョードルは身の置き所がないのでパイプベッドの上に座ろうとして、そこに放置されていた王冠を取って膝の上に乗せて、そのまま頭を抱えようとしたら王冠に余計な力がかかってしまったのか、王冠がパカっと壊れてしまいました。あらら。


一方ボリスは、息子(のつもり)に皇位の心構えを説きながら、戴冠式に王冠と一緒に渡された大きなピカピカの指輪を自分の指から抜いて、ヒョードルに渡すつもりでシュイスキーに渡しています。適当な隙にシュイスキーがヒョードルを呼んで選手交替しました。今度はちゃんと本物のヒョードルを抱きしめるボリス。その傍らでシュイスキーが指輪をポケットに仕舞い込みます。鐘の音が響き、退室していた貴族達が慌しく戻ってきて緊迫感が増し、ドミトリの幽霊が横たわったベッドが起こされ、磔状態のドミトリが目に入ります。ボリスが最後の「プレステーチュ」を呟いて倒れ、幕となります。

終わりに

いやー。四幕二場、長かったですね。書き過ぎです。解釈編と音楽の感想その他諸々は次にまわすとして、最後にこれだけは言ってもいいですか。ボリスが倒れるときに、その方向が、私の目の前ドンピシャなんですよ。で、シャツの合わせが適当で背中に大きく抜きが入ってるもんですから、黒いシャツから覗く、うなじから背中のラインが色っぽくて。いやあ参りました。降参です。完敗です。何と戦っていたのか分かりませんが、完敗です。「負けてもいいじゃない、人間だもの」

*1:さっきまで燃えてたのに、熱くないのかな?

*2:パーペのに限らず、他の人のでも違和感を感じたので。