他人の褌で相撲をとる企画/ツェリーナ&マゼットカップル@ドン・ジョバンニに学ぶ愛情表現
モリエール『ドン・ジュアン−石像の宴−』を読んでいて、ツェルリーナの原形シャルロットとマゼットの原形ピエロの造形が面白かったのでメモ。
- ピエロ
- な、シャルロット、みなの衆も言う通り、おいらも腹のうちを打ち割らざなんめえ。お前も知ってるだべが、おいらあ、おめえが大好きで、行く行くは夫婦(いっしょ)になるはずだべ。だけんど、はあ、おめえのやり方はてんとおいらの気に入らねえだ。
- シャルロット
- あんだと?どこが気にいらねえだ?
- ピエロ
- おいらの気を揉ませるからだよ、ぶちまけちまえばよ。
- シャルロット
- それがどうだってえ言うだ?
- ピエロ
- こん悪魔っ娘、おいらのこと、これっぽちも好きでねえだな。
- シャルロット
- あっはっはっあ!それだけのことかよ?
- ピエロ
- うん、それだけだ、それだけでたくさんだあよ。
- (中略)
- シャルロット
- ふんならどうして欲しいだよ?どうしたら気が済むだ?
- ピエロ
- ちょっ!おいらあ、おめえに可愛がってもらいてえだ。
- シャルロット
- わしが可愛がらねえというだか?
- ピエロ
- そうともよ、可愛がってくんねえだ。ふんだのに、おいらのほうじゃ、できるだけ尽してやってるでねえか。小間物屋が通るたんびに、小言一つ言わねえで、リボンを買ってやる。首根っこをへし折る覚悟で、つぐみを巣から取ってやる。おめえの誕生日が来りゃ、琴弾きをよんで聞かせてやる。こんなにまでするだのに、おいらあ、てんで壁に頭をぶっつけてるようなもんでねえか。な、それ、可愛がってくれる男を可愛がらねえのはよくねえこった、義理に外れたこった。
- シャルロット
- だけんど、わしはわしなりに可愛がってるだよ。
- ピエロ
- ふんとに、妙ちきりんな風に可愛がってくれるだで!
- シャルロット
- そんならおめえ、どうしたら気が済むだよ?
- ピエロ
- みなの衆が本気になって可愛がるときにやるような、あんな塩梅に可愛がってもらいてえだ。
- シャルロット
- わしだって本気に可愛がってるでねえかよ?
- ピエロ
- うんにゃ。そういうときにゃ、顔に出るもんさ。心底から可愛がるとなりゃ、相手にいろんなしなをつくるもんだあね。でぶのトマスを見なよ、あの娘ったら(中略)けっ!なんてえたってよくねえだよ、おめえは人に冷たすぎるだ。
- シャルロット
- どうしたらいいだよ?わしの性質だもの、いまさら生れ代りもできねえだ。
シャルロット(ツェリーナ)男前過ぎる。素直になれない現代人は、ピエロ(マゼット)を見習ったらいいと思うよ!