フィリップ・ジャルスキー&ラルペッジャータ@大阪

galahadさんのレポを読んで、この部分にズキューン!と来たので、当日券で行ってきちゃいました。

http://galahad.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/post-bea9.html
コルネットとの演奏の時に、完全にブレンドされていて個別の楽器の音が聴こえなくなるんですよ。

完全にブレンドされて個別の音が聴こえなくなる!!!そんな経験したことない!してみたい!と思ったので速攻調べました。なんと明日(その時点の明日)が大阪ではありませんか。電話してみたら当日券有とのこと。これはもう行くしかない。こういうのって前売りで売り切れてて、よっぽど事前に準備しとかないと行けないもんだと思ってた。

というわけで、行って参りました。いつものごとく時系列で脳内垂れ流しでお送りします。

  • 会場はサンケイホールブリーゼ。はじめて行くホールです。ビルの7階がホールになってて下の方にお洒落テナントが入ってます。こういうところに縁の無いstarboardとしては気後れします*1。見えないお札*2が貼ってあるよ怖いよ〜。えいやっと勇気を出して通り過ぎます。← 大袈裟に書いてるだけでたぶん普通の商業ビルだと思います。でも繁華街に出るのすら年に数回あるかないかの人間には、ああいうコジャレ空間は怖いんですってば。もっとこう、NHKホール的なダサさを隠し味に入れといてくださいよ。← 無茶を言う。
  • というわけで無事ホールに辿りつきました。912席の規模ですがガラガラです。1階席が半分埋まってたくらい。2階以上は使ってたかどうかあやしい。勿体無い。
  • そして客層が、はっきり言って、年齢層が高い。なんとなくジャルスキー氏の顔だけ見て若いおねえちゃんがいっぱいいるとこを想像してました。自分の 淡い期待が打ち砕かれ・・・ 偏見を猛反省しました!
  • でもさー。うちの若い女の子@オペラファンとして育成中*3も今日のコンサート行きたいけどチケットが高いから無理だって。海外みたいにアンダー30割引とか考えた方がいいかも。若いファンを育てていかないと先細りだからねえ。と、ガラガラのホールを見ながら考える*4
  • そんなこんなで開演です。目の前の珍妙な楽器に気をとられているうちに曲がはじまります。本日も予習ゼロです。マンドリンの柄がやたら長い奴がビヨヨン、ビヨヨンと琵琶をさらに派手に大袈裟にしたような音を出すわ、玩具っぽい見た目の鉄琴の小さい奴は見た目通りに目一杯ファンタジーな音を出すわ、角笛を長くしたような笛を吹いてるおっさんはいるわ、なにか小さい?変なシルエットのバイオリン弾いてるおっさんはいるわ、この中ではパーカッションが一番普通に見えてしまいます。
  • とかしてるうちに袖から例の肺の無い兄ちゃん・・・・もといジャルスキー氏が出てきて歌い始めます。一声目、またやっちまった!と思う私。増幅慣れはやばいって。いい加減クラブミュージックのような音量でクラシックを聴くのは止めなさい>自分。
    • しかし思うんですけど、みなさん普段録音聴くとき、実際より増幅してしまったり、自分好みに調整し過ぎてて、それに慣れて実演聴いて「失敗した!」と思うことは無いんですか?オーディオ趣味者の間ではよく聞く話のようですが・・・・
    • ところでこの「またやっちまった」感はボーカルのときだけ発動するんですよね。なんでだろ。普段そんだけボーカルに特化して聴いてるってことなんだろうけど。
  • しかし最近は生演奏にも慣れてきたので、すばやく補正して本線復帰します。そうやって落ち着いて聴いてみると、やっぱり完璧過ぎて人間離れしてますなあ。でもあの、肺が無い!人間じゃない!感は、音だけ聴いてるときの方が強いかも。視覚がついてると、それによって呼吸タイミングが分かってしまうので、あの出てる音と呼吸が一致してない摩訶不思議な印象は薄まるかも。
  • たぶん3曲目で、女性ボーカルの人登場。ここでいきなり念願の全部の音がひとつになる現象を経験することになりました。全ての音が一緒になって、客席の中央の天井辺りに、音と自分が一緒に持っていかれた感覚。音が完全に溶け合っちゃって、その中に自分も入っちゃってる。そんな感じ。
  • この後でジャルスキー氏が登場すると、やっぱり彼の声は輪郭がはっきりしてて彼の声がひとつ前に出るから、完全に溶け合うってのは無いんですね。定位がはっきりするというか、伴奏がいて、その手前に彼がいて、そして聴いてる自分のポジションがある。で、盛り上がっていくと、そのポジションを保ったまま天井に向かっていくような、そういう感覚。一方で、女性ボーカルの人のときは、そんなに声が前に出ることもないし、正直ジャルスキー氏と比べるとどうしても聴き劣りするんですけど、それが他の音と一緒になる効果を生んだというか。曲目のせいもあるんでしょうけど。
  • 画が描けるといいんですけど、ジャルスキー氏のときは、自分が椅子に座ったまま、その体勢のままそれぞれの音のポジションを保ったまま浮きあがっていくような感覚なのに対して、もう一方では体がどこにあるかとか関係なくなって、意識だけが音の塊の中にある。この効果はシャーマン的だなあ、と思ったりして。
  • でも、この幽体離脱モドキが出来たのはこの曲だけで、後半は意識しちゃったから出来なくなったんですけどね。
  • 他に思ったのは、鉄琴の玩具とマンドリンと琵琶の合いの子オバケの音は完全に重なるなあとか*5、妙に長い角笛と変な向きのバイオリンの音はやたら相性がいいなあとか、このバイオリンの弱音はかすれたような音を出すのにそれが妙な魅力になってるとか。
  • もうひとつ、触れていない楽器がありました。日本人の奏者がやってるバロック風の装飾が入ったピアノと、もうひとつ見た目はオルガン風の箱っぽい奴です。この2つを曲によって使い分けてるんですけど、正直、ピアノの方はいつ音が出てるのかあまり意識させられることがありません。主旋律になることはない・・・んですかね、役割的に。はっきり意識したのは箱っぽい方を使ったときなんですけど、2つの楽器の音が出てるとして、そこにこの箱が入ると、前の2つを含めて音が溶け合う効果があるんですよ。それがなんとも不思議なんです。これは楽器の特性だけでなく、こういう和音の使い方のテクニック上の効果でもあるんでしょうけど。
  • そして一番最初に一番普通に見えたパーカッションがどんどん変になっていきます。粉は撒くわ、なんかスプレー缶を逆さにしてオイルを注いでる!?!?!?舞台の上で何事????と思いきや、これは缶からゴムチューブみたいなのが出ててそれが丁度粘り気のある液体が出てるみたいに見えるんですけど、それを揺らしながらその近くに置いた太鼓の皮と共鳴させて、珍妙な、強いて言えばビヨヨヨーンみたいな(でも擬音で表せるほどはっきりした音ではない)変な音を出すのです。音も演奏風景も珍妙さ具合も、まるでテルミン・アナログ版です。
  • そんなこんなで、音的にも視覚的にも面白いことが次々と起こって、いつものごとくジャルスキー氏が地声になって「おっと!いけない!」と口をおさえてみたり、割り入って来るおっさんコーラス部隊と張り合ってみたりというギャグを交えながら、なごやかな感じで時間は過ぎ、最後は大盛り上がりで終わりました。アンコールを何回やったか覚えていませんが、いっぱいやったので途中帰りかけた人が戻ってきたり扉付近で喋ったりしてて、ちょっとそこが惜しかったかな。でもいい気分で終わりました。
  • ところで曲目に即興演奏とそうでないのがあるんですが、違いは私は全然分かんなかったな。ま、全曲知らない曲だから!(予習しろよ・・・・)
  • 終演後にサイン会があったのですが、ジャルスキー氏だけでラルペッジャータの人は出てこなかったのが残念。折角なのでCD買って並びましたが、間近で見るジャルスキー氏は、ジャケ写のまんまか、実物の方がジャケ写っぽかったりして*6、目が点になりました。色が白くて唇が赤すぎるので、ちょっと生々しくて直視出来ない。あなたは肺が無いですね・・・・なーんて失礼なことは言わずに、もっと常識的な言い方をして帰ってきました。
  • 本日は上書き禁止なので、明日になったら買ってきたCD聴こうっと。

フィリップ・ジャルスキー&ラルペッジャータ
2009年11月10日(火)19:00 サンケイホールブリーゼ(大阪)
曲目はこちら

この日のメンバーのアルバム

*1:普段は超むさ苦しくてどよよ〜んとした男子校に生息する生物です。

*2:オタ除けって書いてある。たぶん。

*3:新しいDVDを持っていくと最初に「パーペ出てますか?」と聞くパーペ大好きっ子。← ぼ、ぼくは何もしてないからね!彼女はDVD見て自発的に「この人がいい」って言い出したんだから!

*4:ここは、ほれ見ろ客入ってねーじゃねーか、こうなりたくなかったら俺の言うことを聞けよ、という文脈ではなく、こんなに空席あるんだったら若い子を安く入れてあげればいいんじゃないか、と考えたということですので念のため。

*5:ついさっき全部の音が溶け合うところを経験したので、2つの音が溶け合うくらいでは驚きません。でも普通のときだったらこれだけでも充分驚異的。

*6:普通逆だろ!逆!