何を期待しているのか/録音が主食(2)

録音が主食です/未来論風味再びのコメント欄への返答として書き始めたのですが、いろいろリンクなどもしたくなり、そうするとコメント欄では不便なので本文にて続けます。


>Madokakipさん

意図してすごく極端に振りながら書いたので、恐ろしい例ばかりになってしまいました(笑)。思考実験ということで。私も劇場で味わう生の音は大好きなんですが、まだそれは私の生活の中では旅先の食事のようなものなので、どんなに旅先で美味いものを食べられるとしても家の飯は家の飯で充実させたい!とダダを捏ねているところです。そして家で録音を聴くことを前提にすると、劇場でよいものと必ずしもイコールではないのかもしれないな、と思う瞬間があります。

ニュアンスもコントロールも新しい魅力も特にこれという具体的なものがあるわけじゃないんですが、何を想定して、こういう別の可能性みたいなことを言い出したかは心当たりがあります。練習風景やインタビュー映像なんかで軽く歌っている瞬間を聴けますよね。あれをもっと聴いていたいんです。一般ウケするかどうかは分かりません。賄い飯が美味そうに見えるだけで、それがメニュー化された瞬間に魅力が無くなってしまう、そういう種類の魅力かもしれません。これが念頭にあるから、小さい箱でサロン風だとか、マイクを使ってもいいからそのニュアンスを保ってくれとか思うわけです。

もちろんこれまでのスタイルにとって変われというわけではなくて、そういうの「も」聴いてみたいというバリエーションの問題です。

あとは、これは一般的ではないと思うんですが、私は聴いてて歌手の肺の使い方に引きづられて自分が苦しくなる傾向があって、他の人よりもそれを避けたいと思う傾向が強いかもしれません*1

それと、ちょっとどう関連があるか自分でもはっきりしないのですが、フィリップ・ジャルスキー氏の歌唱が念頭にあります。もちろん彼はマイクが必要な歌手なんかでは全然ないのですが、声量をそれほど振らず、でもすごく充実した印象を与えることが出来るんですよね。あれはかなり衝撃的というか、こういうスタイルがあってもいいんだと目から鱗なところがあります。そうです、彼を知って以来、新しい可能性について考えてるんだと思います、私は。


>soraさん

オーディオは大きな電気店のオーディオフロアに行くと試聴させてくれますから、行ってきたらいいですよ。自分のお気に入りのCD持参で。フロアの一角にセミオープンの隔離された空間があってスピーカーがいっぱい並んでるのが見えたら、そこが視聴室です*2。全然知らないけどこれから色々知りたいのでって言えば、オーディオの担当者はまずインパクトを与えようと思うものですから一番いいシステムを聴かせてくれますよ。

ちなみにカーオーディオは、「空気」は、これはこれですごいですよ。「音楽は腰で聴く!」が合言葉ですから*3。言うまでもないですが、劇場の空気とは全くの別物です。

今は地理的に生は主食に出来ないので(なんかいかにも内陸の人っぽいな、私)、生が主食のみなさんの話をキーっとなりながら聞いておきます。いろいろ制約があって動けないんですよ。

その吉松センセの生の音楽・煮た音楽が、私の最初の記事を書いた直接のきっかけです*4。よく見ると、吉松センセの次の日でしょう。隣に他の客がいるからってくだりで、もう心底共感しちゃいました。煮た音楽って表現がいいですよね。焼いたでも茹でたでも蒸したでもなく「煮た」。色々いじくりまわして加工してクタクタになってる様子が想像出来ます。

吉松センセに倣って、私も音楽を食べ物に喩えるシリーズを意識して書いてみました。

*1:もちろん聴いてて全然苦しくならないすごい人もいますが、それはそう出来る方がすごいのであって、前提には出来ないというか。

*2:何処にでもあるわけではないので、こういうコーナーがある電気店を選んで行ってください。

*3:それはあなたの車だけです!>starboardさん

*4:話の導入に使った林田さんの記事はいつか言及しようリスト入りのまま数週間経ってました。