体操のおっちゃんがすごい!京響定期5月レポ

もう大分日が経ってから、この日の日記を書いてるわけですが、この日は、こんなものに行ってきました。

京都市交響楽団 第535回定期演奏会
日時:2010年5月21日(金)7:00pm 開演
会場名:京都コンサートホール・大ホール
出演者:広上 淳一(常任指揮者)、ボリス・ベルキン(ヴァイオリン)
曲目等:シューマン交響曲第3番変ホ長調「ライン」op.97
チャイコフスキー:幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」op.32
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲二長調op.77

これね、すごくびっくりしました!結論から言うと、ものすごくいいです。聴ける状況にある人は聴くべきだと思います。京響は地元にも関わらず昔のイメージで敬遠していて、昨年たまたまエリヤの演奏で聴いて良い音なのにびっくりして、その後ずっと聴きたかったんですが、なんだか日程が合わなかったり、曲目やソロがイマイチ気が乗らなくて敬遠してしまったり、行く気満々でいたらチケットが完売していたりと、なんだかんだと縁が無くってほぼ半年。この日やっと聴くことが出来ました。

この日の座席は一部に熱狂的なファンがいてすぐ売り切れてしまうというP席です。やった!開演時間になると、すぐ広上氏登場。なんというか、やたらニコニコとした小っこい大阪のおっちゃん風の雰囲気です(しかし大阪出身ではない)。スタコラと出てきて、ぴょこんと指揮台に乗るとすぐ開始です。早っ!そしてその指揮スタイルが、なんというか、珍妙な新体操みたいなんですよ。まず上下運動が多い。殆ど「流れない」。そして終始笑ってる。目が点になりました。ところがそんな珍妙な体操のおっちゃんの元から流れる音が面白いのです。とんでもなく面白いのです。最初の曲目はシューマンですが、シューマンなのに現代曲を聴いてるみたいです。ちなみに大抵の人が現代曲と言うときは褒めていないと思いますが、私が現代曲というときは褒めてます(参考 (1) (2))。

いやもうこれをどう表現していいか分からなくて時間経っちゃったので、何を書いていいのか自分でもよく分からないんですが、なんというか、音が目の前を噴き上がって来るんですよ。漫画みたいです。熱血音楽漫画の一コマみたいなことが本当に起こってるんですよ。あと客席中がバーっと音に包まれるというのか、こんなのはじめてです。音が自分のところに伝わって来るんじゃなくて、自分が音の中にいるんです。全身の毛が逆立ちそうです。もちろん、こういうことの起こっていない瞬間々々もかなり面白い。やっぱり現代曲の音の動きの面白いやつを聴いてるみたいです。そういう面白さがある。でも目の前は珍妙な体操のおっちゃんです(笑)。

特にこのラインの第3楽章と第4楽章は、すごく面白かった。この日の演奏は録音されててNHK-FMで放送されるそうですから、もう一度聴くのが楽しみです。そしてラインが終わると満場の拍手。カーテンコールが3回。これってすごいと思ったんですけど、こういうもんなんですか。第1曲が終わっただけで、終演のときの拍手並みか、それ以上なんですけど。この瞬間、今まで聴かなかったことを激しく後悔しました。興奮冷めやらぬまま休憩に突入です。

ここでP席のこと。最初ちょっとした違和感がありました。新しいオーディオシステムをはじめて聴いたときのような違和感です。生でこんなこと思ったことないです。でもそれは置いといて、音の迫力がすごい。ここはいいです。圧倒的にいいです。たしかに、これは熱烈なファンが付くのも頷けます。

でもこうなると私はいつもの欲が出てきてしまって、さっきの違和感は何だったんだろう、あっち側で聴けば解消されるのか、あの音がどう聴こえるか知りたいと思ってしまいました。別の日じゃダメだ、今日のあの音がどう聴こえるのか今日知りたい。幸いにも京都コンサートホールの公演には休憩後に空席を半額で買える後半券という制度がありまして、今日の公演は平日ですから空席もあります。速攻で決断して会場を出て、3階のB席を購入して会場に戻りました。実はこれが後で仇となったわけですが。

さて後半は何故かガラガラだった3階サイドの後方に陣取りました。そしてこの場所が空いていた意味を知りました。続くチャイコフスキー、演奏は相変わらずとても面白いのですが、音がとても遠いのです。さっきまでの音が噴き上がったり包まれたりする感覚を覚えているから余計悪いのですが、もどかしく遠いのです。京都コンサートホールは音を遠くに感じるとか、迫力が無いという評があるのですが、この瞬間ほどこれを実感したことはありません。そして客のウケから考えてさっきのライン並みかそれ以上に面白かったであろう第2曲目が終わってしまいました。

折角のP席を手放してしまったことを激しく後悔しつつ、ダッシュして戻りたい誘惑にかられつつ、3曲目のブラームス。バイオリン・ソロが入ります。実はここでもひとつの課題を発見しました。わたしこういう協奏曲の聴き方って分かってないんですね。なんだかソロとオケのバランスがしっくり来ないのです。もちろん、特にこの演奏がってことじゃなくて、このジャンル全般に対して分かっていないってことです。さてバイオリンは予想に反してドライだなーと思いつつ(悪い意味じゃないです、外され好きなので)、前半の音とのギャップにばかり気をとられて不完全燃焼なまま後半戦が終わってしまいました。そして相変わらず盛り上がりまくりの客席とP席のあたりを複雑な気持ちで眺めつつ、この日の公演が終わりました。

いやー。人間欲を出すとロクなことがありませんね。でも今日の体験ではっきりしました。これで私もP席難民*1の仲間入りです。さっそくチケット購入に走りましたが、3ヶ月後のチケットはその日発売日だったので手に入りましたが、その前2ヶ月分は売り切れでした。しまった。広上氏の振る7月の公演は気になっていたものの、ピアノ協奏曲だから敬遠してノーチェックだったんだ。おっちゃんをあそこで聴かないなんて馬鹿げてる。なんてバカなことを!これを逃すとおっちゃんの公演は3月までないのに!・・・・ああでも、地元のオケがいいって本当にいいなあ。

私が欲を出して失敗した話はともかく、京響、機会のある方は是非聴いてみてくださいね。特に広上氏指揮のときに。常任指揮者2年目だそうです。あとこの日の録音がNHK-FMで放送されます。7/18(日)19:20〜21:00の予定です。

しかしこの日の体験、私が聴いてるのは音楽なのか音響なのかという私にとっては古くて新しい課題を掘り起こすことになってしまいました。

*1:P席にはファンがいてすぐ売り切れてしまうので、P席を求める難民がいるそうな。