ドン・カルロ@メト来日公演名古屋(後半)

この公演、世間の皆様は満足らしいですね。マジですか(驚)。こんなタイミングで来日してくれて有難うリップサービスじゃなくて?空気読まない奴ですいません。でも相手はプロ中のプロなんだし。プロンプターボックスと屋根裏のやり取りなんて、いい大人なら見て見ぬ振りをするもんだって?でもインサイダー情報を流してるわけでもなんでもなく、客席から見えたものの話だからなあ。たしかに手はサイド席じゃないと見えなかったかもしれないが。

さて、こりゃ飲まなきゃやっとれんと休憩中にワインを仕込んで席に戻りました。実は2幕まではオケが強く出過ぎというのも大不満だったのですが、この場所でそうなら2階正面席*1なんてどんなことになっているかと先日その場所に酷い目に合わされた私めは勝手にご心配申し上げていたのですが、3幕からは普通っぽいバランスになりました。そして、さっきまでのぎくしゃくさと比較して、色んなことが滑らかに回り始めました。

休憩中に解決したのか、こんなだったらとっとと休憩しといてくれよと超勝手なことを考えつつ、さっきよりはリラックスして聴けるようになりました。が、あんまり安心しちゃったのか、ここ全然覚えてないですね。次の合唱も、一幕と比較したら明らかにマシになりました。ただ、前半を経験するうちに期待値が思いっきり下がっていて、致命的な欠点のないことがプラス評価の対象になってしまっています。ただま、ハラハラ状態からの復帰が感動的だったと言えば言えるでしょう。しかしそれで感動されたら、最初からちゃんとやってる公演と不公平過ぎないか。

全ては私の脳内妄想で、前半はノれなくて、後半は酒飲んで感度が下がったのを、さも演者の側の問題であるかのように勘違いしているのかもしれませんが、私の感じたものはこういうものでした。そして、一番振り回されたのがゲネプロにもいなかったというリーで、比較的マイペースで通していたポプラスカヤは私に気に入られ、グバノアとホロフトフスキーは協調性が裏目に出て、それを無視して脳内カウントでいつも通りやったパーペは一人突き抜けていたと考えると辻褄が合いました。視覚から想像した通りステージでオケの音が聴きにくい状態にあったのか*2、それとも演奏が合わせ難い状態であったのか、本当のところは分かりませんが*3、やはりステージの上はかなり困惑して萎縮した状態で、その原因はオケ(とのコンビネーション)にあったと思います。

さて、そういうわけで復帰して以降はあまり書くことがないんですよね。ここからは各ソリストともかなり調子が出たと思います。ここからがみなの実力だったのだと思います。個々に感心する瞬間も熱い瞬間もありました。しかし、ゾクゾクしたり創造性を刺激されたりするような、このブログで毎度ピックアップするような性格の要素は希薄だったと思います。

パーペは、私はこの人を聴くときいつも近視眼的になっちゃって引いて見れないんですが、今回は比較的「引いて」聴けた貴重な機会で、自分の体を楽器のように使って劇場全体を響かせる能力を堪能させてくれました。ホロフトフスキーはさすがに立派でしたねー。熱くてオネストロドリーゴでした。ポプラスカヤは私はこの役としてはアリだと思います。ロールに個性が合ってると思いました。リーは声も含めて男らしいカルロでしたが、人によっては暑苦しいと言うかもしれません。グヴァノアは、パワフルなタイプではありませんが、そこが逆に、説得力の出にくい呪わしき美貌で説得力が出ることにつながったと思います。あと誰か忘れてましたっけ?ああ、こんなかでは宗教裁判長は、役を務めてるけどそんだけな感じでした。あとラストでもう1回出てきた修道士は、やっぱりナシだと思う。

舞台は極々サイドの座席であったことを考えると殆ど見えてましたが、ここを選んだ時点で最初から覚悟してましたが、サイドからだと舞台の奥行きを利用した美しさは堪能出来なかったのだろうと思いました。

総合的には、ソリストに関しては満足、しかし準備面や指揮はどうなんだろうという鑑賞でした。冒頭の支配人挨拶で、さらになにか発表でもあるのかと思って聞いてたら「私達は地震以後にはじめて来日した大きな団体で、この公演は実現するだけでも困難であり(大意)」という調子で、一体何が言いたいんだろうと思いましたが、終わった後で考えてみると「だから準備が中途半端でも寛容に」と言いたかったとしか思えず、割り切れないものが残りました。


あんまし面白いレポでなくて申し訳ないので、過去ログから、ドン・カルロ聴くのに役に立ちそうなリンクを張ってみます。前回のスカラ座来日公演のときに刺激されて書いた小ネタ集です。大審問官vsフィリッポ2世の対決時の二人の心理は、これ前提で聴くとめちゃ面白くなるので、今でも愛用してます。おまけで愛用ドン・カルロ音源も付けときます。

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*1:と言いつつ、この劇場の場合は3階という名前の場所が実質2階席である。

*2:もともとステージには音が届きにくい箱or演出装置で補助音響を入れてたのがうまく働いていなかったなどと想像すると、休憩で直るのもあり得るかなと。

*3:それどころかそんな事実は全然無くて自分の聴き手としての未熟さの問題を、さも演奏者に原因があったように脳内補間しているだけかもしれません。