こどもオペラ「パルジファルとふしぎな聖杯」@兵庫芸文

これ、良かった!面白いから大人も見たらいいと思う。

もともと全く行く予定は無かったんだけど、この時期に丁度神戸まで出る用事があって、せっかく片道1時間半もかけて行くのだから何かないかと思って直前にチケットを確保。お子さんを連れたお父さんお母さんに混じって場違いな大人一名が肩身を狭くしつつ着席しましたとさ。

しかし予想外に良かったので行って良かった。私はパルジファルが大事な友達の白鳥を失って嘆くところでお子さんと一緒に泣きましたよ!

新国も知ったかぶりの外人演出家*1とか外人指揮者とか外人歌手ばっか雇ってないで、日本人スタッフによるこういう作品をもっと作ったらいいのに。納税者の一人としてそう思う。あそこが民間だったら言わないけど。


ストーリーはパルジファルをお子さん向けにアレンジし、大きな変更は一幕の白鳥が以後も活躍するところ。音楽は殆どがパルジファルで一部ラインの黄金。会場参加型で、なんで私はパルジファル観に来てラインの鍛冶のパーカッションを練習しなきゃならんのだ、とか思いつつ観る*2。日本語で、台詞と歌が半々くらい。あんましオペラ歌手による日本語の台詞(歌ではなく)というのを聞いたことがなかったのだが、さすがみなさん声が立派で役柄のイメージ通りでよく通るので、感心してしまった。台詞のあまりの聞きやすさに比べて歌の聞き取りが難しく字幕もないので*3、お子さん達には歌の方がとっつき難いという印象が残ったのではないかと余計な心配をしてしまう。それでもソプラノの高音などには、素直に「すげえ」という声が出ていた。お子さんには、分かりやすい悪役のクリングゾルと、オカマキャラ*4にされたグルネマンツが大人気で、私の隣のお子さんはグルネマンツが喋ると必ず真似をしていた。とりあえずどの子も退屈していないことは良く分かった。「みんなー!オペラは楽しいかー!」「・・・はーい」「声が小さーい!そんなんじゃオペラ歌手になれないぞー!」(ここで笑ったのは大人達)


大人が自分のために見るとして、オペラ/クラシックファン的に違和感があるのは、たぶんオケパートだけで聴かせる瞬間というのがなくて、そうあるべき箇所でオケをBGMにして誰かしら喋っているところだと思う。それ以外は驚くほど普通に観れる。元々オペラって、ベタに読んだらこっぱずかしい感情と展開の塊だもんな。歌のおねえさん的白鳥キャラとか、鳥山ヒーロー風パルジファルとか*5、デパートの屋上ヒーローショーの悪役クリングソルとか、カマキャラ・グルネマンツとか、類型が面白い。オペラって類型がいっぱい出てくるけど、所詮は翻訳文化なので実際に形になったときに、日本人から見てそれほどしっくり来ていない気がする。その辺が、こういう日本人に卑近な類型になることによって、腑に落ちる感じがあった。同時にあっちの人にとっての類型って、こんな感覚なのかなーと思ったりした。

会場を出たときに、子供も大人も笑っていたので、実にハッピーな午後だった。

http://www1.gcenter-hyogo.jp/sysfile/html/01_shousai/4230811509_0000000002.html
2011年度 大阪国際フェスティバル特別公演
新国立劇場 こどものためのオペラ劇場「パルジファルとふしぎな聖杯」(全1幕・日本語上演)
日 時 2011年8月6日(土) 15:00〜
会 場 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO 大ホール
小さな紳士淑女たち、オペラ・デビューしませんか。夏休みにお届けするのは、ワーグナーの「パルジファル」「ラインの黄金」をベースにした、愛と友情の冒険物語。長時間の大作を、子ども向けに約1時間15分に構成してお楽しみいただきます。
■出演者
指揮 三澤洋史
パルジファル 秋谷直之
クリングゾール 峰 茂樹
マグダレーナ 國光ともこ
アンフォルタス 星野 淳
グルネマンツ 久保田真澄
合唱 新国立劇場こどもオペラ・ヴォーカルアンサンブル
管弦楽 新国立劇場こどもオペラ・アンサンブル
東京フィルハーモニー交響楽団メンバーによる)
■スタッフ
台本・編曲 三澤洋史
演出 三浦安
美術 鈴木俊朗
衣裳 半田悦子
照明 川口雅弘
振付 伊藤範子
舞台監督 大澤 裕

■プログラム
パルジファルとふしぎな聖杯」全1幕(約1時間15分)/日本語上演
リヒャルト・ワーグナー:舞台神聖祝典劇「パルジファル」、楽劇「ラインの黄金」より)

*1:別に一人のことではない。全体にそういう傾向があると思っている。それか手抜きか実験台。

*2:帰ってからプログラムを見たら、ちゃんとラインの黄金て書いてあった。

*3:ワーグナーの用意した旋律にオリジナルの日本語歌詞を載せたものだが、1割くらい分からんところが残った気がする。

*4:宮崎アニメのカマキャラが元ネタだと思う。外見もそのまんま。

*5:しかしワーグナーで真に鳥山ヒーローなのはジークフリートである。