ボローニャ歌劇場「清教徒」@びわ湖ホール

直前まで行く予定はなかったのですが、むしろ今日は堺シティオペラとオペラ親鸞京都コンサートホールのどちらに行こうか直前まで迷っていたくらいなのですが、ご縁があって行ってきました。最近私はオペラトークが出来る人に会えば必ず「来日公演の初日はもう懲りた」とぐちぐち愚痴っていたので、舌の根も乾かぬうちに一体何をやってるんだというツッコミが聞こえてくるような気がいたしますが、直前に、行けなくなった方のチケットを破格で譲って頂く話があって、ホイホイと行って参りました。

座席ははじめて座る2階サイドの奥のエリアです。実は2階と聞いたときに、以前に同じホールの"名目は2階なんだけど実質1階後方席"に座ったときの音の混濁具合を思い出してイマイチ乗り気じゃなかったのですが、今回は気に入りました。思いっきり被り席なんですけど、オケがブレンドされつつ歌手の声は真っ直ぐ飛んで来る場所で、大抵そういう場所は視覚が遠くなるか姿勢が不自然になるかのどっちかですが、ここは視覚・音ともに良いバランスでした。


そして肝心の公演の方はというと、これは行って良かったです。ボローニャは直前トラブルがいっぱいあったので、また準備不足系ガッカリだったらどうしようと思って、折角近くに来るのに手を出しかねていたのですが、全然無問題でした!オペラを聴いたぞーって満足感がありました。

序曲から最初の重唱のところはなにかバラバラして決まらなくてヒヤヒヤしたのですが、2場からリラックスしてぐっと良くなり、その後はずっと安心して体を預けることが出来ました。明るくて伸びやかでリラックスしてて、決してカチっとし過ぎない、でもいい加減なわけではなくてそれが音楽的に丁度いい、そういう種類の様式感に満たされていました。音色も良かったし。適度に明るくドライで、それがよく合ってた。急に行くことになったこともあって、ストーリーも曲も全くはじめての演目だったのですが、見通しの悪いところがなくて、終始安心して聴いていられました。

歌手陣は、代役アルトゥーロのセルソ・アルベロ君は可愛い声でした。すんごく正確ではないけど、嫌な方向性の力みがないので、気持ちよく聴けるのが良かった。高音も、耳にピリピリ来る張り方じゃなくて、そんなに大きい印象でもないのに真っ直ぐ届くタイプで良かった。そしてなんといってもエルヴィーラのランカトーレが良かったな。低音は「にゃー」みたいなニュアンスの入るユーモラスな発声で、なんだかプリマドンナというよりはボケ系の女芸人みたい・・・なーんて失礼なことを考えつつ聴き始めたのですが、幕が進むにつれ変化するエルヴィーラ像にかなり引き込まれました。教科書的じゃなくて、チャーミングでとっても個性のある歌手だなあと思いました。高音も超絶技巧も楽しめました。あとはエルヴィーラのおじさんが比較的頑張ってたかな。そういえば後で配役表見て気付いたけど、日本人歌手が入ってたんですね。全然気付かなかった。目立ってたわけじゃないけど、声も姿も違和感がなかったってことかな?

贅沢を言えば、普段馴染んでいるものが偏ってるので、どうしても特殊なものと比べてしまうのですが、そうするとどうしても棒読み気味でニュアンスがないように思ってしまうのですが、みんなそんな感じなので、このジャンルはこういうもんなんですかね。合唱も、いい瞬間もあったけど、総合的にはもう少し何か欲しい気がした。

演出は、セットや美術はミニマル寄りで寡黙な感じで、極力出しゃばらないって感じかなあ。男性陣の扮装が似通り過ぎていて、見分けがつかなくて困った。視覚面は、全体に色相が寂しいかな。

でも総合点としては、冒頭に書いたように、いかにもオペラ聴いたぞーって満足度が高い公演でした。ストーリーは、なんで清教徒なのかピンと来ないかも。これは、この辺の歴史に詳しいとストンと腑に落ちるものなんですかね。

ボローニャ歌劇場来日公演「清教徒
2011年9月11日(日)びわ湖ホール
セルソ・アルベロ(アルトゥーロ)/デジレ・ランカトーレ(エルヴィーラ)/ルカ・サルシ(リッカルド)/ニコラ・ウリヴィエーリ(ジョルジョ)/森雅史(ヴァルトン)/ガブルエーネ・マンジョーネ(ブルーノ)/ジュゼッピーナ・ブリデッリ(エンリケッタ)
[指揮] ミケーレ・マリオッティ(ボローニャ歌劇場首席指揮者)
[管弦楽・合唱] ボローニャ歌劇場管弦楽団・合唱団