ドヴォルザーク「スターバト・マーテル」@河内長野

この公演、良かった。ホールもいい感じ。行って良かった。

河内長野は「合唱のまち」を目指して、独自の合唱団を組織してて、これはその合唱団の31回目の演奏会なのだそうです。というわけで、主旨は素人合唱団の発表会なのですが、ソリストは良かったし、はじめて聴いたこの曲はとても好印象だったし(最近聴いてるブラームスの声楽曲とも似た感じ)、全体にあったかい雰囲気でとても良かったです。

さてその合唱。まず人数が多い。百名くらい?もっといたかもしれません。男女比が偏ってしまうのは素人合唱団では不可避の事態ですが、ここは男声合唱の人数が割といてしっかり存在感を出していたので、バランスの悪さを感じませんでした。ホールや曲目のせいもあって明瞭な感じはしませんでしたが、もともと明瞭であるべき曲だとも思いませんし、宗教曲の演奏であるし、中庸な感じがちょうど良く感じました。

オケは大阪交響楽団(大阪シンフォニカー)。プログラムやソリストで行く公演を決めていると、近場のオケでもやたら縁のあるところと、妙に縁の無いところというものはあるもので、噂は聞くもののずっと縁の無かったところ。初めて聴いた感触はというと、気に入りました。いつものごとく金管刈り込みたいとか不満がないわけじゃないけど、それが嫌につながらないというか、とても暖かい感触で、また聴きたいと思わせる演奏でした。

そうなのです。美しいというより暖かくて身近な感じと言った方がよい音色と雰囲気。ホールの音響の効果もあるのか、はっきりし過ぎないのが、曲によく合ってます。普段は真逆の、どちらかというと作り込まれた音響を解像度の高い状態で聴くのを好む私ですが、今日はこれでいいのだと思いました。ちょっと雑味のある・・・いきなり変なものに喩えてすみませんが、昔ながらの素っ気無い土色の紙袋みたいな感触の演奏。もはやクラシック音楽の話をしているようにも褒めているようにも聞こえないかもしれませんが、それでトータルの感想が「また聴きたい」になるのですから、なんでしょうね、相性なのでしょうか。


で、今日はソリストが4人とも良かった。キャスティング完璧だった。まず目当ての竹田さん。ソフトでボーイッシュなのに熱があるのが好きです。ソフトと熱の同居が好き。抜きのセンスが好き。この人聴けば聴くほど好きだ。今日のパートは、今まで聴いたなかで一番合ってるのでは、と感じました。元々レッジェーロっぽい声でそうでないロールを歌ってることが多いから、オペラよりこっちの方が無理がないように聴こえるのかもしれない。でもそれが好きなんだけど。まあ私の好きな人って「なんでこの声の持ち主がワーグナーを?」みたいな人ばっかなので。

お名前は度々お見かけするものの聴くのははじめてだったバスの木川田さん。何故名前は知ってるかというと、私の好きな歌手の師匠はこの人ってパターンで何度も見かけているからです。で、師匠はさすがでした。艶々・朗々としたバスで、私が一番重視するところの、声質任せではない表現の部分が、やっぱり師匠だわーと。

ソプラノの日紫喜さん。頭の天辺から出して来るような、なかなか強烈なお声とパンチ力の持ち主です。声だけじゃなくてドライブ感もあってすごく満足。

個性豊か過ぎる面子の中では地味に感じてしまうアルトの重松さん。ですが、ソロの安定感・充実感と重唱時の確実な支えは、また聴きたいなーと思いました。プロフィール見たら清教徒のエルヴィーラでボストン・リリック・オペラにデビューってあるんですが・・・エルヴィーラってソプラノのロールの中でも高音が要求されるんじゃなかったっけ・・・本来はメゾの人のようですが、うーん、興味が沸いてしまいました。

全体に、ソリストがすごく贅沢・・・有名というのではなく実際に味わってみて贅沢だったという意味で、実に贅沢な公演だったなあと思いました。



河内長野ラブリーホールは1300席規模で、視覚的にも近いし、声楽的にも近く感じるホールです。ホール内装に木が多用されてるとこやコンサート仕様時の反射板は兵庫芸文を連想させます。1階から2階にかけて階段席が設けてあって、サイド席好きには嬉しい客席構造。90年代にオープンした大阪では新しめのホールで、自治体のホールですから設備や素材などは非常に質素なんですが(トイレの節約具合など気の毒なくらい)、敷地に対して妥当な計画で余裕を持って設計されていて、ハード的にも決して贅沢はしていないものの、おさえるべきところはおさえてあって、ちゃんと考えて作られたホールだという印象を持ちました。企画も面白いしオペラにも力を入れてるし、京都からは遠いですが、気に入ったのでまた行こうと思います。

http://lovelyhall.com/event/2012/120226_stabat/120226_index.html
河内長野ラブリーホール合唱団演奏会
ドヴォルザーク スターバト・マーテル
公演日:2012年2月26日(日)
会場:河内長野ラブリーホール
指揮:寺岡 清高
管弦楽大阪交響楽団
ソプラノ:日紫喜 恵美
アルト:重松 みか
テノール:竹田 昌弘
バス:木川田 澄
合唱:河内長野ラブリーホール合唱団